今回はリクエストの教授。エデン組良いですよね〜初期からたまに見てました。が、詳しいよ!任せて!と言えるほどではないのでそこはご理解下さい。あと、お話長めです。
剣持side
「剣持さん、危なぁいっっ!!」
振り返ると同時、ばしゃあああああと勢いよく頭から浴びせられた謎の液体。
そうそうお目にかかれないような、どピンクのそれは反射的に顔をしかめる程甘い香りを漂わせていた
な、なに?
ただ会社の廊下を歩いていただけなのに一瞬にして濡れ鼠となってしまった僕は、ポタポタと滴る水滴をそのままに呆然と立ち尽くす
シャツが肌に張り付いて不快だ。気持ちが悪いったらない
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”やってしまった!ごめんなさい剣持さん、そして重ねてごめんなさぁぁい!!」
「へぁ!?」
誰かの焦った謝罪が聞こえたかと思えば今度は、勢いよく視界を遮られる。そのまま布か何かで目元をきつく縛られた
え、まっくら
なに!?なんなの!?目隠し!?誘拐!?ろふまお!?
『目隠し=ろふまおなんて私達もだいぶキてますよね…』なんて脳内の社長が落ち込んでいるが今は傷を舐めあっている場合ではない
「やってしまったものは仕方ない。責任とりますんで一緒に来て下さい!」
突然、ガシリと腕をつかまれ体がはねる
こいつ、謝罪の1秒後には切り替えているあたり本気で反省しているのか甚だ疑問だ。不意打ちで振り払ってやろうと試みるが掴む手は、予想以上に力強く冷や汗が頬を伝った
「何が!?いや、その前にあなた誰ですかっ」
「大丈夫、私は怪しい者ではありませんよ!」
その発言は、さすがに無理があるだろ
「怪しい奴は、みんなそう言うんだよ!」
お決まりの台詞過ぎてツッコミを入れずにはいられなかった
まぁ、正直このクソデカボイスにはとても聞き覚えがある気がするけれど
「レオス・ヴィンセントです!急ですみませんが事情は説明しますんで、とりあえず私についてきて下さい!!」
やっぱりお前かーい
納得と殺意が同時に押し寄せた。
オリバーside
「オリバーくん!」
バンッとノックも無しに扉を開け入ってきたのは見慣れたマッドサイエンティスト
「はぁ…レオス…きみねぇ」
気心知れた同期とはいえ親しき仲にも礼儀ありだろうがと何度目かの説教をしようとしたところで普段の様子とは違う事に気が付いた。胸元のまめねこもさっきからビックリ目で青い顔をしている
「…?」
ポケットに意識を向けていたらスッとレオスの後ろで動く影を見つけた
ゆっくりと足元に気をつけながら前に出てきた人物に目を見開く
「え、…どういう状況ですか?」
「…僕が知りたいんですけど」
いつも奇天烈なものを手にやってくる同期が今度は目隠しされた大先輩を連れてきた。
「惚れ薬?」
とりあえず濡れたままの先輩を立たせておくのは良くないと研究室備え付けのシャワールームに案内して謎の液体を流してもらう事にした
その間、詳細をレオス君に説明させる
もちろん床に正座で
「…興味本位で作ってみたら成功してしまいまして。オリバーくんで実験してみようと浮かれて廊下を走っていたら剣持さんにぶつかり、その…」
「頭からぶっかけてしまった…?」
そもそも何故、会社で実験してやがるとか。人を実験台にするなとか。そんな危険物を持ったまま廊下を走るなとか。説教ポイントはいくらでも思いつくが、この際長くなりそうなので溜め息とともに渋々飲み込む。
チラと視線を向ければ彼の尋常じゃない汗と蒼白な顔が目を引いた
なるほど。冷静なフリして誰よりパニックに陥っていたレオスはエデンまで先輩を連れまわした挙句、何故か僕の研究室までやって来たと
馬鹿だ。
稀に見る馬鹿だ。
「オリバーくんも一緒に謝ってくれたら剣持さんもきっと許してくれると思って」
「いや僕、関係ないでしょーが」
取り付く島もなくピシャリと言い返す。
涙目の同期が『そんな事言わずに一緒に土下座しましょうよぉぉぉ』と、まめねこと2人で抱き着いてきた
なんでナチュラルに土下座してくれると思ってるんだコイツ
若干イラッとしながら涙で服が濡れないよう男を引き剥がしているとシャワールームから小さな頭が顔を覗かせた
「あの…シャワーありがとうございました。えっと目隠しの布は取らない方がいいんですよね?」
「そうです!下手に誰かを見てしまうと剣持さんがそいつにメロメロになってしまいますぅっ」
「うすうす気付いてたけど、とんでもねーもんぶっかけてくれたな。うちのセコム(ろふまお)起動させてもいいんですよ?」
「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!せめて辞世の句を詠ませて下さいぃぃ」
「「うるさ」」
笑っちゃう程の爆音。剣持さんとほぼ同時に耳を塞ぐ
マイクなんて持ってないのにハウリングしているようだ
あ、ほら。まめねこも耳塞いでる
ぎゅっと目を瞑るまめねこが段々、可哀想になってきた
「あ、あの…服貸して下さったのは、ありがたいんですけど。他に服ってありませんよね?」
なかなかシャワールームから出てこない剣持さんが、おずおずとそんな事を言う。渡した服が合わないのは誰がどう見ても一目瞭然だったが今は仕方がない。
「すみません。ここには僕の服しかないんですよ。剣持さんの服が乾くまでは我慢して頂くしか…」
「そうですよね、わかりました。ただ…」
「「ただ…?」」
目隠し越しに小さな先輩の頬が赤く熟れていくのを認めながら大人二人で首を傾げる
「わ、笑わないでくださいね。ぜったいに!!」
念入りに前置きして、やっとドアを離れた剣持さんがゆっくりと転ばないよう出てきた
「「………!」」
もじもじと自分達の前に立った彼を見る
ボタンをキッチリと上まで留めているはずなのに大きすぎて肩がだいぶ露わになっている。ダボダボの袖は何重にも折られ、かろうじて指先が出ているだろうか。裾なんて腰をゆうに通り過ぎ膝下まで伸びていて、もはやワンピースだ
190cmの体躯を持つ自分のシャツを剣道を嗜んでいるとはいえ線の細い16歳の高校生が着ている姿は
なんというか
「すごく、えっちですね」
隣の眼鏡を張り倒した。
「え、なんて…?」
改めてソファーに腰掛け今後の事を話し合っていると、この場において一番の有識者が気軽にまた爆弾を投下させる
「ですから!剣持さんには目隠しを取って頂き、誰かと一度ラブラブな関係になって甘い一日を過ごして頂かない限り薬の効果が持続して一生目隠し生活になってしまうと」
「コイツ◯していいかな?」
「気持ちは、わかりますが。やめときましょう剣持さんが犯罪者になってしまいます」
再び携帯を取り出そうとする先輩の手をやんわり降ろさせて同期を恨めしげに見遣る
会話を聞いていないのか、あえてのスルーなのか眼鏡をキランと輝かせスッと立ち上がったレオス君は慇懃な動作で剣持さんの前にひざまずいた
「全ての責任は私にあります。今後の為にも、ここは一つ割り切って私と熱いひとときを」
「断る」
「なぁぁんでですかああああ!」
うずくまって涙を流す情けない同期に何度目かわからない溜め息が漏れる
まめねこは、ポケットから出て主人の頭を撫でて慰めていた。主がこんなんだと苦労するな。
「……」
ふと、隣から視線を感じる
「どうしました?剣持さん」
「あ、えと」
隠された瞳が所在なく逸らされたかと思えば代わりに消え入りそうな程小さな呟きが投げかけられた
「オリバーさんが、いいです」
「え…」
「っ…!いや、薬の効果を切らす為にどうしたって惚れないといけないのは理解しました。けど身近過ぎる人には死んだ方がマシってくらい恥ずかしすぎて頼めませんし。かといって今から誰かにこの状況を一から説明するのも嫌ですし、レオスは絶対嫌ですし!」
「ぜったい…」
切なすぎる呟きが下方から聞こえてきた気がするが、いきなりのご指名にこちらもそれどころではない
衝撃の展開に思わず聞き返していた
「あ、あの僕で大丈夫なんですか?」
「お…おねがい、します」
マジかー。
とりあえず、うるさいレオス君を帰らせ剣持さんと二人きりになる。
後から確実にダメージを負うとわかっていて自分の醜態を知る人物が二人もいるだなんて耐えられないとの切実な先輩の言葉ゆえだ。
「本当にうちの同期が、ご迷惑かけてすみません」
「オリバーさんは悪くないでしょう。レオスに関しては恥を忍んで加賀美社長に泣きついてやろうかと」
あ、アイツ死んだわ
仕方ない骨くらいは拾ってやるとしよう
情に厚いのか薄情なのか微妙な感情を抱いていると剣持さんが目元の布に手を掛けているところだった
「じゃ、じゃあ目隠し外しますね。しつこいようですが僕がどうなったとしても一日経ったら今日の出来事は忘れて下さいね!」
「えーと、がんばります」
緊張からかプルプルと手を震わせながらゆっくりと目隠しを外し、閉ざされた瞼が意を決して持ち上げられる
スローモーションがかったそれをドキドキしながら待ち彼の視界の真ん中になるよう居住まいを正す
若葉色の綺麗な瞳が数回瞬き、目の前のたった一人の男性を鮮やかに映し出した
「っ…」
途端にあどけなさの残る頬が薔薇色に染まり、自分を見る瞳に信頼とは別の感情が乗る
「えへへ」
「ん”っ!?」
ふわりと照れたように、はにかまれ周囲に花が舞う錯覚が見えた
ごきゅりと己の喉から聞いた事のない音が鳴る
あの剣持刀也に萌えを感じる日が来ようとは…
僕、一日生きてられるかな…。
軽率に大役を受けてしまった過去をすでに後悔し始めた。
レオスside
大先輩から『帰れ』と拒絶されたもののやらかした自分が後は知りませんなんて無責任極まりない行動は出来ずに研究室前の廊下をウロウロと歩く
「やっぱり私も中に入って…いやいや剣持さんに『絶対見るな』と言われているし…いやでも悪いのは私で…」
ええい、どうせこの件でセコムをお見舞いされるのは確定しているんだ。今更、罪状が増えようとあまり変わらない!なるようになれ!
半ばヤケクソで扉を押し開けた
「ごめんなさい剣持さんっ!やっぱり私にも責任を取らせてくだ……さ…い」
「あの…剣持さん。お顔が近いです」
「だって…かっこいいからよく見たいんです」
ダメですか?と可愛らしく頭を傾けながらオリバーくんを覗き込む剣持刀也
様々な感情の波を絶えるように刻まれた眉間のシワが同期の限界を訴えていた
「くっ…ダメじゃない…です」
「ふふ良かった」
あっっっまい!!
ゲロ甘い!
何がどうなってそうなったのか
ソファーに座るオリバーくんの膝に剣持さんが座り寄りかかるような体勢でイチャついている
いわゆるバックハグ状態
「オリバーさんの手おっきいですよね。ほら僕の手、子供の手みたい」
きゃっきゃと一人楽しそうに手を合わせてはしゃぐ高校生は無邪気さと色気を交互に仕掛けてくる。まるでジェットコースターだ。
おじさん達ついていけないよ…とオリバーくんと一緒に遠い目をした
なんやかんやありながら理性で本能をねじ伏せ、清い体のまま送り届けた先輩はあれから何故かオリバーくんのもとへ度々通っているらしい
『勉強教えてもらってるだけです』
『人生相談ですよ。大人の意見を聞きたい日もあります』
『べ、別に惚れ薬の件とは関係ありませんよ』
真っ赤な顔で目を泳がせる彼の瞳は、あの日によく似た色を孕んでいた
んー?効果は一日だったよね?
おわり
長い…。読んでくださった方ありがとうございました!
オリバー先生と剣持のファーストコンタクトを配信で見てましたが衝撃すぎて未だに覚えてますw剣持の凸待ち配信で前の人がくれた質問を次きてくれた人に答えてもらうってやつやってて『パンツの色教えて』ってとんでもない質問のタイミングで来てしまった先生に爆笑しましたw
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