テラーノベル
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あの日から一週間。
緑谷は、前と少しだけ違っていた。
いや、違う。
明らかにおかしかった。
授業中もノートを書き続ける。
ヒーロー分析のページは増え続けているのに、目の焦点が合っていない。
訓練でも、限界を無視して動こうとする。
「緑谷、ストップだ」
低い声が訓練場に響いた。
担任の
相澤消太だった。
「もういい」
「……まだ動けます」
震える声で答えるデク。
「無理する理由は?」
その質問に、デクは少しだけ笑った。
「僕は…みんなと違うので」
その言葉に、相澤の目が細くなる。
周りには
雄英高校1年A組の生徒たち。
*お茶子は心配そうに見ている。
飯田は何か言いたそうにしている。
そして――
爆豪は苛立っていた。
「おいデク」
「……」
「最近おかしいぞてめぇ」
でもデクは何も答えなかった。
⸻
その日の夕方。
雄英高校の屋上。
風が強く吹いていた。
扉がゆっくり開く。
そこに立っていたのは――
デクだった。
「……」
握りしめた手が震えている。
(僕は無個性だった)
(ヒーローになれるわけない)
(なのにここにいる)
頭の中で声がぐるぐる回る。
「違う…」
「違う違う違う違う」
デクは頭を押さえた。
次の瞬間――
ドンッ
コンクリートに拳を叩きつけた。
「なんで僕なんだよ!!」
屋上に叫び声が響く。
拳から力が暴発する。
ワン・フォー・オール。
床にひびが走る。
「僕よりすごい人なんて…!」
「いくらでもいるのに!!」
もう止まらない。
再び力を溜める。
その時――
「やめろ、緑谷」
低い声。
振り返ると、そこに立っていたのは
相澤消太。
「……先生」
「屋上壊す気か」
しかしデクは首を振る。
「僕は…」
「僕はここにいちゃいけないんです」
「僕は無個性で…」
言葉が崩れていく。
「なのに…」
「なのにみんなと同じ場所にいるなんて…!」
再び力が暴れ始める。
相澤がゴーグルを上げた。
捕縛布が伸びる。
「落ち着け」
だが――
「無理です!!」
衝撃が走る。
その瞬間。
ドンッ!!
空から何かが降りてきた。
「もう十分だ、少年」
力強い声。
そこに立っていたのは
オールマイトだった。
デクの目が揺れる。
「オールマイト…」
オールマイトは静かに言う。
「君が無個性だったことは知っている」
「それでも私は君を選んだ」
「理由は一つだ」
ゆっくり歩み寄る。
「君は誰よりもヒーローだったからだ」
デクの拳が震える。
「でも僕は…!」
オールマイトは強く言った。
「それでもだ!」
屋上に声が響いた。
「力ではなく、心がヒーローを作る」
デクの目から涙がこぼれる。
相澤は静かに見ていた。
風の中で――
デクはその場に崩れ落ちた。
「……っ」
ようやく、力が消えた。
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