テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
桃×赤
ゴール地点を過ぎた途端、景色がぐにゃりと歪んだ。喉の奥にはドロリとした鉄の味がこびりつき、肺が酸素を拒絶してヒューヒューと悲鳴を上げている。
🐤「……っ、はぁ、……っ、げほっ……!!」
一歩踏み出すたびに視界が白く明滅し、胃の底から強烈な「せり上がり」が突き上げる。りうらはフラフラと救護テントの影までたどり着くと、力なくその場に膝をついた。
🍣「……りうら! ……おっと、大丈夫か。顔色真っ白じゃん……」
ないこ先生が駆け寄ってくる足音が聞こえるが、返事をする余裕なんて一ミリもない。りうらは地面に手をついたまま、胃を雑巾のように絞られる感覚に耐えかねて、大きくのけ反った。
🐤「……っ、あ、……おぇっ、……ごほっ、ごほっ!!」
🍣「あー、きちゃったね……。ごめん、ちょっと体起こすよ。……はい、これ使って」
ないこ先生は手際よくりうらの脇に腕を差し入れ、少しだけ上体を持ち上げた。それと同時に、顎の下に袋をセットする。
🐤「……げほっ、……おぇぇぇっ!!……はぁ、……っ、おぇっ……!!」
激しい嘔吐。何も食べていない胃から、胃液と苦い胆汁だけが勢いよく溢れ出す。喉が焼けるように熱く、鼻の奥までツンとした酸っぱい刺激が突き抜けた。
🐤「……う、うぅ……っ。……はぁ、はぁっ、……げほっ、おぇぇ……っ!!」
🍣「……、……よしよし。しんどいな。全部出しちゃえ。……今、背中さするからな」
ないこ先生は、自分の膝をりうらの背もたれにするように後ろに回り込み、震える肩をしっかり支えた。
大きな掌が、汗と冷気で冷え切った背中に触れる。円を描くように、ゆっくりと、でも力強く。
🐤「……っ、はぁ……、……せん、せ……っ、とまらな……っ」
🍣「止まんなくていいよ。……無理して走ったもんな。……ほら、一回息吐いて。そう、全部出し切って。……大丈夫、俺がついてるから」
ないこ先生の声は、いつもの明るさを保ちつつも、どこか包み込むような静かさがあった。
りうらが胃液を吐き出すたびに、ないこ先生は自分の服が汚れるのも構わず、りうらの体をさらに深く抱き寄せた。
🐤「……っ、はぁ、……はぁ、……ごほっ……。……きもち、わるい……、あたま……割れそう……」
🍣「……ね。血管ドクドクしてるでしょ。……今、冷たいタオル持ってくるからね。……少しだけ、俺の肩に頭預けてな」
ないこ先生は、ぐったりと力尽きたりうらの額を自分の肩に乗せ、乱れた髪を優しく撫でつけた。
冬の冷たい空気の中で、ないこ先生の体温と、背中をさする一定のリズムだけが、嵐のような苦しさの中にいるりうらを、辛うじて現実へと繋ぎ止めていた。