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『綺麗事。』
途中までコピペしてるから内容一緒でごめんね。
僕は、可愛いものが好き。
それを、僕はこの15年間隠してきた。
隠すことに慣れすぎて、どこからが隠してる自分で、どこからが本当の自分なのか、もうわからないくらいに。
リュックの内ポケットには、お気に入りのかわいくて小さなぬいぐるみのキーホルダーがはいっている。
誰にも見えないように、ファスナーの奥の奥。
「男のくせに」って言われたくない。
笑われたくない。
変だって言われたくない。
面倒な空気になりたくない。
だから僕は、上手に笑う。
上手に言い訳する。
上手に、普通の男の子みたいなふりをする。
――それだけで、結構疲れる。
なのに、僕の周りの人たちは、そんな僕にいつも「綺麗事」を投げてくる。
まるでそれが正しい答えで、それ以外は間違いみたいに。
「気にしすぎだよ。」
「誰だって悩むことぐらいあるって。」
「寝れば変わるよ。」
「ポジティブに行こう!」
「人生なんとかなるよ。」
「辛いのはみんな同じ。」
「頑張ってみれば報われるよ。」
綺麗で、輝いてて、正しそうで、教科書みたいで、、、。
真っ白で、無音で、嘘みたいに軽い言葉。
……聞くだけで、吐き気がする。めまいがする。気持ち悪くなる。
なんで言葉って、綺麗事って、こんなに薄くて、こんなに簡単で、こんなに残酷なんだなって、、、、。
朝が来る。僕は起きる。
起きたくないのに、起きる。起きなきゃいけない。
目を開けた瞬間、胸が苦しくなるのがわかる。
息を吸うと痛い。吐くともっと痛い。
それでも体は勝手に動く。制服を着る。ネクタイを結ぶ。
鏡の前で、無表情の自分を見て、無理やり口角を上げる。
「⋯大丈夫。僕ならできる。」
僕は自分に言う。いつも言う。
「大丈夫」って。
大丈夫じゃないのに。
むしろ大丈夫な瞬間なんて、もうずっとないのに。
玄関を出る。空が青い。雲が白い。
いつも通りすぎるくらい、いつも通りの朝。
その景色が、怖い。
世界が普通に回ってることが。
僕がこんなに壊れそうなのに、空が綺麗なことが。
歩いてる人が笑ってることが。
犬が尻尾を振ってることが。
僕だけがここから取り残されて、透明になっていく感じがする。
駅まで歩く道。
自転車のベルの音。
コンビニの自動ドアの音。
通学路でふざける高校生の声。
全部が、遠い。
ガラス越しに聞いてるみたいで。
自分の足音だけがやけに大きくて、僕だけが異物みたいに思える。
学校に着くと、そこには「普通」がある。
普通の教室。普通の笑い声。普通のグループ。普通の会話。
普通ばっかり。馬鹿馬鹿しい。
僕はその中に、普通の顔で混ざる。
「おはよ」
水「おはよー」
「昨日の宿題やった?」
水「いちおー、、?w」
「おい、それ嘘だろってww」
水「やばーい!見してー!!ww」
言葉を返して、笑って、頷いて。
僕は今日も“僕”を演じる。
誰にもバレないように。
誰にも心配されないように。
誰にも面倒がられないように。
そのくせ、本当は。
――誰かに、気づいてほしいくせに。
でも、気づかれたら、怖い。
優しくされたら、壊れそうだから。
助けてって言えたら、どんなに楽だろうって思う。
でも「助けて」って言って、誰かが本当に助けてくれる保証なんてない。
そして何より、、、
助けを求めた瞬間、僕の中にある全部の「可愛い」が、全部の「弱さ」が、全部の「情けなさ」が、全部表に出てしまう気がして、、。
それが怖くて耐えられない。
僕の席は窓際で、外が見える。
僕は、空を見るのが好き。
雲が流れるのを見てると、少しだけ心が落ち着く。でも最近は、落ち着くより先に、虚しくなる。
雲は流れる。時間は進む。季節は変わる。
僕はそれに置いていかれる。
みんなは大人になっていく。
夢を見つけたり、恋をしたり、友達と笑ったりして。
未来の話をしてる。
「高校どうする?」
「将来どうする?」
「来年さー」
未来。
僕には未来って言葉が、ただの暴力に聞こえる。
だって僕は、今日を生きるだけで精一杯なのに。
今日をこなすだけで、体の内側が削れていくのに。
明日の話なんて、未来の話なんて、できるわけがない。
それでも周りは、平気そうに未来を語る。
「大丈夫だよ」
「なんとかなるって」
「考えすぎ」
綺麗事。
綺麗事。
綺麗事。
綺麗事だけが並ぶ毎日。
僕の胸の中は、黒く濁って沈んでいくのに。誰にも知られず、黒くなって、染まっていく。
___昼休み。
みんながパンを食べたり、スマホを見たり、笑ったりしている時間。
僕は一人で席に座ってる。
別に嫌われてるわけじゃない。
話しかければ返事は来る。
誘われることだってある。
でも僕は、もう、疲れた。
笑うのに疲れた。
会話をするのに疲れた。
人の目を気にするのに疲れた。
“普通”を保つのに疲れた。
なのに。
「一緒に食べようぜ」って、クラスメイトが言う。
「ほら、いつも一人じゃん」って、軽いノリで。
僕は「うん」って言いそうになる。反射で。条件反射で。
でもその瞬間、胸の奥がズキッとした。
誰かと一緒にいることが、怖い。
誰かと同じ空気を吸うことが、怖い。
だって僕は、もう壊れてるのがバレそうだから。
笑い方がぎこちなくなる。
目が泳ぐ。
返事が遅れる。
だから僕は、いつもの通り。
水「ごめん、今日ちょっと」
水「あとで行く」
嘘をつく。
そしてまた、綺麗事が飛んでくる。
「そんな暗くなるなよ」
「前向いてこうぜ」
「人生一回なんだからさ」
「楽しまなきゃ損だって」
――損?
楽しまなきゃ損。
人生一回。
前を向け。
暗くなるな。
言葉って、すごい。
それで救えるつもりなんだ。
でも僕は思う。
綺麗な言葉って、
それを言う側が気持ちよくなるために存在してるんじゃないかって。
言った本人は「励ました」気になれる。
言われた側は「救われたことにしろ」って押し付けられる。
僕は救われてない。
でも救われたふりをしないといけない。
「ありがとう」って言わないと、空気が悪くなる。
だから僕は言う。
水「⋯⋯ありがとう、」
その瞬間、僕の中の何かが少しだけ死ぬ。
____放課後。
帰り道、僕は一人で雑貨屋に寄る。
可愛いものが並んでいる棚。
小さなぬいぐるみ。
パステルカラーのペンケース。
キラキラしたチャーム。
丸い形のマグカップ。
どれも、僕の心を少しだけ柔らかくしてくれる。
こういう世界にいるときだけ、僕は僕でいられる気がする。
誰の目も気にしなくていい。
誰にも否定されない。
……本当は、否定されるのが怖いから、一人で来てるだけなんだけどね。
本当僕って弱いや。
店員さんが、レジで笑う。
「袋いりますか?」
水「はい」
そのやり取りすら、優しく感じる。
何も求められない優しさが、僕には一番沁みる。
「頑張れ」
とか言われない。
「前向け」
とか言われない。
「元気出せ」
とか言われない。
ただ、商品を渡されるだけ。
それが、救いだった。
買ったのは、小さなウサギのマスコット。
ふわふわで、目がきゅるんとしてて、頬がほんのりピンク。
……可愛い。
胸の中が少しだけあったかくなる。
でも、そのあったかさはすぐに薄れる。
家に帰ったら、また「綺麗事」が待っているから。
家に着く。
水「ただいま」
「おかえり。今日どうだった?」
母の声。僕は「普通」って答える。
いつも通り。
普通。普通。普通。
母はそれ以上聞かない。
僕もそれ以上言わない。
食卓に並ぶ料理。
テレビの音。
父のスマホのスクロール音。
家族の形は整っている。
欠けていない。壊れていない。
なのに僕は、ここでもずっと息苦しい。
「最近元気ない?」って聞かれたこともある。
そのとき僕は「大丈夫」って言った。
母は笑って「そうだよね、疲れてるだけだよね」って言った。
その瞬間、僕は少しだけ安心した。
わかってくれたんじゃなくて、
“わかったことにしてくれた”から。
親って、子どもが壊れてるって認めたくない生き物なのかもしれない。
だから、綺麗事を言う。僕も、父も、母も。
「学校は楽しい?」
「友達は大事にしなさい」
「今は頑張りどき」
「大人になったらもっと大変よ」
「みんな通る道なんだから」
みんな。
みんな。
みんな。
その「みんな」の中に、僕は入ってない。
僕は今、息をするだけで苦しいのに。
「大丈夫よ、あなたならできる」
母の笑顔は優しい。
でもその優しさが、僕を追い詰める。
“できる”って言われるのが怖い。
“できない自分”を許されない気がするから。
「⋯うん、。」
僕は頷く。
頷きながら、自分がどんどん薄くなっていくのがわかる。壊れていくのがわかる。輪郭がなくなるのがわかる。
____夜。
布団に入っても眠れない。
暗い天井を見つめながら、僕は息を数える。
吸って、吐いて。
吸って、吐いて。
心臓がうるさい。
脳がうるさい。
思考が止まらない。
水「なんでこんなに疲れてるんだろう」
水「僕は怠けてるのかな」
水「甘えてるのかな」
水「もっと頑張らなきゃいけないのかな」
すぐにまた、綺麗事が浮かぶ。
“頑張れば報われる”
“努力は裏切らない”
“自分を信じて”
“明日はきっといい日になる”
全部、嘘に見える。
努力しても報われない人を、僕は知ってる。
信じても裏切られることを、僕は知ってる。
いい日なんて、ずっと来てない。
そう思う自分が、ひねくれてるみたいで、
それでもう嫌になる。
僕は布団の中で、ウサギの人形を抱きしめる。
ふわふわ。柔らかい。あったかい。
可愛いものは、裏切らない。
少なくとも、僕を否定しない。
僕に「頑張れ」って言わない。
僕に「普通になれ」って言わない。
ただそこにいてくれる。
涙が出そうになって、僕は目を強く閉じる。
泣いたら負けだと思ってるわけじゃない。
泣いたら終わりだと思ってる。
一回泣いたら、止まらなくなりそうで怖い。
心の奥に詰め込んだものが全部溢れて、もう戻せなくなりそうで。
だから僕は、泣かない。
いや、、、泣けないんだ。
翌日も、その翌日も、同じだった。
朝が来る。
学校に行く。
笑う。
頷く。
綺麗事を浴びる。
帰る。
眠れない。
「最近どう?」
「大丈夫?」
誰かが聞くたびに、僕は「大丈夫」って答える。
正直に言えない。
正直に言ったら、相手を困らせる。
面倒なことになる。
相談に乗られる。
励まされる。
綺麗事を言われる。
もっと苦しくなる。
だから僕は、言わない。
僕の苦しさは、言葉にした瞬間に「軽く」されるから。
「そんなことで?」
「それくらいで?」
「気にしすぎ」
「考えすぎ」
僕がどれだけ必死に生きてるか、誰も知らない。
“普通”の皮をかぶっているから、誰も気づかない。
気づかないまま、綺麗事だけを投げてくる。
そして僕は、綺麗事を受け止めるふりをして、そのたびに、少しずつ心を削られていく。
ある日の授業中に先生が言った。
「人生は思い通りにならないけど、努力で変えられることは多い」
「君たちはまだ若い。いくらでもやり直せる」
「自分の可能性を信じなさい」
教室の空気が明るくなった気がした。
みんなが頷いて、メモを取っている。
僕も頷いた。
でも、その瞬間、僕の中で何かがぷつんと切れた。
可能性。
やり直せる。
信じなさい。
――じゃあ僕の今の苦しさは、何?
今この瞬間、息ができないくらい苦しいのに。
未来の綺麗な言葉で、今を踏み潰される。
「まだ若いから大丈夫」って言われるたび、
僕は「今しんどいのに、若いからって無視されるんだ」って思ってしまう。
僕は、授業のノートを取るふりをして、
ペン先を強く押し付けた。
紙が少し破れた。
破れた紙みたいに、僕の心も破れてるのに。
誰も気づかない。いや、気づいてくれない。気づこうともしない。
放課後、廊下で友達が肩を叩いてきた。
「お前さ、最近暗いぞ」
「もっと笑えよ」
「人生損してるって」
損。また損だ。
僕は、笑った。
水「そうだね」
それで友達は安心した顔をした。
「あー良かった。やっぱり元気じゃん」って。
元気じゃない。
でも元気じゃないって言ったら、
きっとまた綺麗事が飛んでくる。
「大丈夫だよ」
「頑張れ」
「気にすんな」
「前向け」
だから僕は、元気なふりをする。
生きてるふりをする。
その帰り道、僕はふと、駅のホームで電車を見た。
ゴォォ……って音。
風。
鉄の匂い。
一歩踏み出したら、全部終わるんだなと思った。
怖いと思った。
でも、その怖さより先に、“楽になれる”って気持ちが出てきた。
その自分に、また吐き気がした。
僕は、そんなことを考える人間だったんだ。
綺麗じゃない。
汚い。
弱い。
情けない。
僕はホームの端から少し離れた。
「危ないですよ」って駅員が言った。
その一言だけは、綺麗事じゃなかった。
それが、妙に胸に刺さった。
僕は帰って、部屋に閉じこもった。
机の引き出しを開ける。
そこには、僕が集めた可愛いものがたくさんある。
小さなメモ帳。
キャラクターのシール。
ふわふわの可愛いハンカチ。
パステルのペン。
誰にも見せない宝物。
それが、僕の救いだった。
でも最近は、その救いすら、苦しい。
可愛いものは好きなのに、好きなことすら、守れない自分が嫌になる。
“好き”って気持ちすら、「男のくせに」って言われたら壊れそうで。
好きなのに、怖い。
可愛いのに、痛い。
矛盾してる。
僕は手のひらでウサギを包み込んで、息を吸った。
泣きそう。でも泣かない。
泣いても、誰も助けてくれないから。
泣いたら、みんなが困るから。
泣いたら、また綺麗事を言われるから。
「大丈夫だよ」
「泣かないで」
「元気出して」
「前向こう」
その言葉が、もう耐えられない。
僕は静かに、机に顔を伏せた。
涙は落ちなかった。
代わりに、体の中の何かが冷えていった。
数日後、保健室に行った。
体調が悪いふりをした。
本当に悪いのは心の方なのに。
保健の先生は優しかった。
「どうしたの?」
「無理してない?」
「休んでいいよ」
その優しさで、僕は少しだけ呼吸ができた。
でも次に言われた言葉で、僕はまた沈んだ。
「きっと疲れてるだけだよ」
「今だけだから」
「もっと自分を大事にしなさい」
……綺麗事。まただ。また綺麗事。
どこへ行っても、綺麗事。
優しい声で言われる綺麗事は、鋭いナイフみたいに刺さる。
今だけ。疲れてるだけ。
自分を大事に。
僕だって、自分を大事にしたい。
でも自分を大事にする方法が、わからない。
わからないまま、毎日が過ぎる。
過ぎていく。過ぎていくだけ。
ある夜、母が僕の部屋に来た。
「最近ほんとに元気ないわね」
「何かあったの?」
僕は黙った。母は言った。
「大丈夫。何があっても味方だから」
「あなたはひとりじゃないよ」
その言葉は綺麗だった。本当に綺麗だった。
だからこそ、僕は苦しくなった。
味方。ひとりじゃない。
じゃあ僕は、なんでこんなに孤独なんだろう。
僕は小さく、言った。
水「⋯うん。」
母は安心した顔をして、部屋を出ていった。
僕はその背中を見ながら思った。
今の会話で、母は救われたんだろうな。
“息子は大丈夫”って思えるから。
“ちゃんと話した”って思えるから。
でも僕は救われてない。
救われてないのに、救われたふりをしてしまった。
その瞬間、僕は自分が嫌いになった。もともと嫌いだったのに更に嫌いになった。
それから僕は、少しずつ静かに壊れていった。
笑う回数が減った。返事が遅くなった。
目を合わせられなくなった。
でも周りは言う。
「元気出せよ」
「頑張れって」
「気にしすぎだって」
綺麗事。
綺麗事。
綺麗事。
僕の中の最後の小さな火が、
そのたびに、踏みつけられていく。
ある日、学校の帰り道。
空が夕焼けだった。
オレンジ色で、綺麗で。
――綺麗すぎて、気持ち悪いと思った。
綺麗なものを見ると、
自分の汚さが浮き彫りになる。
僕は、もう疲れた。
生きるのに疲れた。
笑うのに疲れた。
綺麗事を聞くのに疲れた。
綺麗事に合わせるのに疲れた。
僕は帰って、机の上にノートを開いた。
何かを書きたかった。
誰にも言えないことを、文字にしたかった。
でも、最初に書けたのは、たった一言だった。
「疲れた。」
それだけで、指が震えた。
次に書いた。
「助けて。」
その文字を見た瞬間、吐き気がした。
こんな言葉を書いても、誰も助けてくれない。
助けてと言ったら、綺麗事を言われるだけ。
「大丈夫だよ」
「頑張って」
「前向きに」
だから僕は、そのページを破った。
破いて、丸めて、ゴミ箱に捨てた。
助けてって言葉を捨てるみたいに。
夜。
僕は部屋の電気を消して、布団に入った。
ウサギの人形を抱いた。ふわふわで、あったかい。
「ごめんね」って、僕は小さく言った。
ウサギは何も言わない。
ただそこにいる。
その沈黙が、優しかった。
僕は、やっと涙を流した。声を殺して。
誰にもバレないように。
息が詰まるくらい、静かに泣いた。
涙が枕に染みる。
ぬいぐるみの頬を濡らす。
可愛いものを汚してるみたいで、また罪悪感が湧いた。
それでも止まらなかった。
僕はずっと、泣けなかった。
泣くことさえ許されない気がしてた。
でも今は、もういいと思った。
泣いたって、誰も助けてくれないんだから。
泣いたって、何も変わらないんだから。
泣いたって。
――僕は、もう疲れた。
次の日の朝、僕は起きた。
いつも通りの朝。
空は青い。
鳥が鳴く。家族の声がする。
全部、いつも通り。
僕だけが、いつも通りじゃない。
制服に袖を通して、鏡を見た。
そこにいたのは、
笑っていない僕だった。
笑おうとした。口角を上げようとした。
でも動かなかった。
もう、演じられない。
僕は、リュックの内ポケットのウサギをそっと撫でた。
水「一緒にいてくれてありがとう。」
僕は小さく言った。
それだけで、胸が苦しくなった。
学校に行くふりをして、僕は家を出た。
駅へ向かった。足は勝手に動いた。
頭はぼんやりしていた。
心だけが、静かだった。
ホームに立つ。
電車の音。
風。
鉄の匂い。
全部、あの日と同じ。
違うのは――
僕の手の中に、ウサギがいること。昔、一緒に公園で遊んでてくれた子にもらったもの。
否定もせずに、僕の話を聞いてくれた。その時、、僕は小学4年生だったかなぁ、、。
たしか、年上赤髪の優しいお兄さんだったな、、。
それを、ぎゅっと握ったら、少しだけ、現実に引き戻された。
柔らかい。あったかい。
ちゃんと、ここにある。
水「……」
言葉にならない息が、喉の奥で引っかかった。
そのとき、、、、
「⋯⋯大丈夫?」
後ろから、声がした。
振り向くと、駅員さんだった。
前にも一度、注意してきた、あの人。
「さっきから、ずっと同じところに立ってるから」
責める声じゃなかった。
急かす声でもなかった。
ただ、確認するみたいな声。
僕は、この声を何処かで聞いたことがある気がする。
水「……」
何も言えない。
でも、逃げもしなかった。
駅員さんは、少し距離を保ったまま、言った。
「ここ、風強いから、よかったら、ベンチの方行こっか。」
“危ない”とも
“ダメ”とも
“頑張れ”とも言わない。
選択肢だけを、そっと置かれた。
僕は――
自分でも驚くくらい、素直に、頷いた。
ベンチに座る。
電車が通り過ぎる。
風が、少し弱くなった。
駅員さんは、横に座らない。
少し離れた場所で、立っている。
僕はそれを直視できない。怖いから。
「……学校?」
水「……はい」
それだけ言うのに、喉が痛かった。
「今日は、休んでもいい日かもね」
その一言で、
胸の奥の何かが、ひび割れた。
休んでも、いい。
逃げても、いい。
今日じゃなくても、いい。
そんな発想、なかった。
水「……疲れました」
声が、震えた。
でも、駅員さんは慌てなかった。
「そっか、、、。疲れるよね」
それだけ。
評価しない。
比べない。
未来を語らない。
今の僕だけを、拾ってくれた。
目が、熱くなった。
泣いてもいいって、
初めて思えた。
水「僕、、可愛いものが好きなんです。」
一番、言えなかったこと。
「男のくせに」って言われると思った。
笑われると思った。
でも、駅員さんは、少しだけ目を丸くして、
それから、ふっと笑った。
「いいじゃん」
それだけ。
いいじゃん。
否定も、修正も、アドバイスもない。
いいじゃん。
その二文字で、
胸の奥で固まってた氷が、少し溶けた。
昔、おんなじことを言われた。
そういえば、、、この人も赤髪、、。まぁ、違うか。
水「……」
涙が落ちた。
止まらなかった。止められなかった。
駅員さんは、何も言わない。
ただ、そこにいる。
泣き終わるまで。
しばらくして、駅員さんが言った。
「今日はさ」
「学校じゃなくて、保健室とか、相談できるところ、行けそう?」
「一人で行くの、しんどかったら、一緒に行く?」
“助けて”って言葉を、
代わりに差し出された気がした。
水「……はい」
小さく、でも確かに、答えた。
電車は、また通り過ぎていく。
世界は、相変わらず回っている。
でも、僕は、ちゃんとここにいる。
ポケットの中で、ウサギを撫でる。
水「……一緒に、帰ろ」
誰に言ったのかわからない言葉。
でも、ウサギは、黙って受け止めてくれた。
駅員さんも黙って聞いてくれた。
その沈黙は、相変わらず優しかった。
僕は立ち上がる。
ホームの端じゃない方向へ。
一歩。
それは、終わりの一歩じゃない。
“今日を生き延びる”ための一歩
だった。
空は、青いまま。
雲は、流れるまま。
でもそれを、少しだけ、怖くないと思えた。
――可愛いものが好きな僕は、
まだここにいていい。
弱いままでも、
人を信じれなくても、
生きていていい。
綺麗事じゃない、静かな答えが、そこにあった。
〈赤髪の駅員さん視点〉
あぁ、やっと会えた。
あの日から死にかけの君に。
目に光が宿ってない君に。
可哀想なぐらい自分の好きを言えなかった君に。
そんな君を、、、俺は、、、いや、
りうら
は、ずっと見守るよ。
駅員さんなんて嘘ついてごめんね。
ホントはずっと前にりうら、死んだんだ。
ほとけっち以外には見えてないよ。
ほとけっち。りうらともうすぐ同い年になるね。
あぁ、、これでやっと成仏できる。
ほとけっち、早くこっちにこないでね。
赤「大好き、、だよ。」ポロッ
はい、ハピエン謎すぎる。((
まぁ、こういうことです(((
コメント
11件
…なんかめっちゃ心に刺さる笑 似たような人生送ってんなー笑 駅員さん、いや、赤ちゃん優しいね。 私も、リア友で何を言わずに聞いてくれるだけの人が欲しいよ…笑笑 りんりん天才。( ⸝⸝`⎚⩊⎚´⸝⸝)
ありがとぉ"ぉォ"ォぉ"ぉぉ"ォォ"ォ!!😿 もう神すぎるっ…😿 駅員さん優しいね……♪ ハピエン書いてほちぃって言ってすぐに 書いてくれるりんちゃんらぶ🫶🏻