テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#日記
QuartoMew
2,114
#日記
6
菜々子に電話をかける。
『もしもし、アキバどうした?』
ちょっと迷惑そうな声色だった。
まぁそれもそうかな、それもそうかもしれない。
江ノ島に行くんだもん。邪魔されたらムカつくよな。
「えっと……。あのさ、引き出しの日記のことなんだけど」
『それが何?いま電車だから。』
本当に迷惑そうだった。
あんまり菜々子が怒ることは無いからちょっと衝撃だった。
けどまぁ、日記が机に置かれていた方が衝撃だと思うから、許してほしいかな。
「朝起きたら置かれてたの……!菜々子は知らない?、これ、疑ってるわけじゃないけどさ、」
『いや私はやってないよ?』
疑ってるわけじゃないことはない。
疑ってる。私は菜々子を疑っている。
「…………違うの?本当に?」
『当たり前!やめてよ怖いなぁ、もう切っていい?』
「だめ」
きっと更に怒らせるけど構わない。
根拠がない。疑問がまだ残っていた。
『…………なに?』
「榎本くもりをどこで知ったの……? どうして、榎本くもりが曇天日記を載せていることに、すぐ気づけたの?」
『……』
「たまたま榎本くもりを見つけたの?そんなの偶然にも程があるし、もし菜々子が犯人なら全部筋が通る……!」
『馬鹿なこと言わないで』
……
私は黙ってそのまま、菜々子の話を聞く。
『……私は前からテラーノベルを使っていた。それは知ってるでしょ?だってアキバにこのアプリで創作するのを提案したのは、私だもんね。』
そして菜々子は続ける。
『私はテラーノベルで、この作品を読んでいた。』
ピロン
『今送った』
画像が送られてきた。
電話しながら画像送れるの今知った。
「……スクールラビット」
『ふつうにこれを読んでいたからフォローしていただけ。
榎本くもりのアカウントを乗っ取ってアキバの日記を晒したりなんかしてないよ。』
信じきれないけど、信じるしかないのかなと思った。
信じたくないけど、信じるしかないのかなと思った。
「……そっか、ごめんね、旅行中に」
『ううん、じゃあまた』
プツッ
すぐに切られた。
菜々子ならまだ良かったのにって思ってしまう。
友達が悪いことをしていたらショックだけど、別に時間をかけて許していければいいだけ。
そうじゃなかった。
犯人は菜々子じゃなかった。
夜中に私の部屋に侵入して引き出しの日記を取り出した人物がいると考えたらふつうに怖い。
私はそのままスマホを横画面にして動画を再生した。
鏡の横に立てかける。
メイク道具を並べてゆく。
怖がってそのまま堕落している暇はない。
このあとバイトだ。
嫌な店長がいるバイトだ。8月10日のように、今日は2人きりになりませんように。
気づけばもうお昼の時間だったので、母が用意してくれた簡単なおにぎりを3個くらい食べる。
お腹が満たされて良かった。
心も満たされるようなバイトをしたい。
「行ってきます」
靴を履いてマンションの階段を降りる。
バス停に行く。
間に合ってバスに乗って揺られてそのまま停車駅に停車する。
その時だった。
「え、アキバじゃ〜ん!」
……
その声は、
後ろを振り返った。
そこには新大久保流花がいた。
「流花、この前ぶりだね……!」
一緒に夏を満喫した友達だ。8月11日。
「え、制服ってことはこのあとバイト?」
「そうそう、流花は?」
「私は普通にお買い物したいなと思って来ただけだよ。」
私のバイト先は駅にあるカフェ。
流花は駅に買い物としての用があるみたい。
「そうなんだ……。」
早く着きすぎたから私も少し店を寄ろうかなとか思っていた。
「え、じゃあちょっとブラブラしていい?」
「いいのー!アキバと沢山遊べて嬉しいなぁ」
そのお気楽なふわふわした声が好き。
恋愛大好きでまっすぐに優しい天真爛漫な女の子。
特に尖った趣味はないけどまっすぐだから勉強もちゃんと欠かさずにやっている。
同じ大学。だから巷の恋バナで盛り上がる。
今日もそう……ー。
私たちは百均に行こうとしていた。歩きながら問われる。
「え、アキバは下北くんから返信きた?」
「きてない、未読無視だよ」
「辛いねえ」
「まぁ、もう、友達以上になれないし、優先順位下がってもいいんだけどね。」
「でも友達でも、、返信は早くして欲しくない!?」
「うん……それはそうかも」
下北沢絢斗。
大学の好きな人。
一学期に告白して振られた。
だけど友達として仲良くするならOKと言われたから、私はそれに従って、
8月11日に流花とかき氷を食べている時に、遊園地に行かないか?と誘った。
が、
未読無視。
「頑張って送ったのにさぁ、早く見てほしい」
「ほんとに気持ちが落ち着かないよね!」
「あははー、」
もっと落ち着かないことが今はあるけど、笑って誤魔化した。
日記とか日記とか日記とかである。
……
流花が日記を晒しているのかな
なんて有り得ない疑念が生まれてしまったが、そんなわけが無い。
こんなまっすぐな子がそういうことしてたら怖いよ。
うん。
それに蓋をしてバイト先に行った。
「お疲れ様です。」
「お疲れ、今日安西さん風邪で休みだから、2人で回そうね」
「え」
また店長と2人。……ー
最悪だ。 ついてない。
安西さん10日も風邪で休んでなかった?
許せないんだけど。そしてくだらない疑いもある。
くだらなくはないけれど、
誰に対しても疑ってしまう。
「この人が、私の日記を晒したのではないか」
……と。
夜遅く。
やっとバイトが終わった。
疲れた。
疲れた足でバスに乗って揺られて降りて停車駅についた。
地面に足がついた。
そしてしばらく歩いた先の住宅街にそびえ立つマンションに私の家がある。
道中。
心も疲れていた。
早く寝たいけど寝たら何が起こるか分からないジレンマに苛まれてさらに疲れていた。
休みたい
とにかく休みたい
寝るかどうかは別として休ませてほしい。
その強い願いを手で合掌して歩いてゆく。
歩くのを、止められる。
「千聖……!」
……
……
私の名前は秋原千聖
その声は、野太い。
幼馴染の、霧島港。
「港じゃん……」
今日は色んな人に会うな。
スクールラビット/3
コメント
7件
スクールラビット…久しぶりに聞いたなぁ…