「──ぼ、───つぼ、おいさっさと起きろサボテン!!」
「あ”!?」
悪口が聞こえたので飛び起きる。すると体がビキビキと悲鳴をあげた。その痛みに悶絶しながら目の前を見ると、懐かしい顔ぶれがこちらを見下ろしていた。
「たらこ…」
「はー…どういう状況か説明してぐちつぼ。俺らはお前の失踪を知らされて、GPS辿らされただけだから」
「……つまりパシリ」
「帰るぞお前ら」
「たらこたらこ、ステイ。今度焼肉奢ってやるから話聞いて」
「よし話せ」
ありのまま、包み隠さず全てを話した。思ったよりも言葉はスラスラと俺の口から紡がれていって、たらこからの情報もあり俯瞰的に状況を把握することができた。
俺がやるべきことはらっだぁ達を捕らえること。そして──…
まぁ、何をするにしても圧倒的に戦力が足りない。相手はあのらっだぁとら民。国の総戦力を使ったって勝てるかわからないのに…どうすればいい。
突如、ガンッと重く低い音が轟いた。同時に煙幕も投げられたようで周りが煙によって覆われる。
「全員戦闘態勢を取れ!!!気配を感じなかった、相手は中々のやり手だ気を抜くなよ!!」
たらこが冷静に部下に指揮を取っている。あいつ、成長したなぁ…っ!
とか言ってる場合じゃなくて、警戒しなければ。このタイミングならばら民からの刺客に違いないだろう。俺を始末しに来たか…いや、俺たちだな。
「すみません、戦う気はありません。…少し失礼します」
後ろからボソッと声が聞こえる。いつの間に背後を取られた…!?何を思う暇もなく腰あたりを触られ、次の瞬間煙が晴れる。
「何者だ!!」
現れた男は拳銃を向けるこちらに対して構えもせず、ただ平然とそこに立っていた。白と黒、灰の混じった石のようなデザインのパーカーに、同じデザインの中心にドットのような顔のついた覆面をつけている。俺はこの特徴に覚えがあった。
「──こばこだ…さん?」
「…僕のことをご存知なんですね。ぐちつぼさん」
「らっだぁがよくあなたの事を話してたからな。…何の用ですか」
「先程も言った通り戦う気はありません。煙幕は…みどりくんがあなたに小型カメラを仕掛けていたので、写らないようにしたまでです。
あの人たちには黙って抜けてきましたから」
なるほど…?じゃあ腰を触られたのはセクハラじゃなくてカメラを取るためだったのか。ひどい勘違いをしてしまった…いや、でもあれはセクハラだと思うだろ。
「……とりあえず、あなたの言っていることを一旦信用するとします。でも、戦う気がないのだとして我々に何の用ですか?ぐちつぼをどうにかしようってんならこちらも黙ってはいられませんので」
「ぐちつぼさんに危害を加える気はありません。僕はここに話をしに来ただけです」
男─改めこばこだは初めから最後まで、平坦な声で淡々と話を進めた。この人は確か持ち前の身軽さを活かした暗器の扱いに長け、頭脳戦においても周りに引けを取らないオールラウンダーだったはずだ。そして並びにらっだぁのお気に入りとして有名でもあった。
こばこだの話によると、らっだぁは自分の意思で監獄を出たのではなく、ら民の恐喝にも近い要望を呑んだためあそこにいたらしい。そして現在はこの帝国への反旗を翻す準備を運営中心に行っていると。確かにあの様子じゃこの国の人間皆殺しにしてもおかしくはなかった。
彼が出てきた時の彼らの居場所を教えて貰ったはいいが、これまでも様々な場所を転々としていたためもう移動している可能性が高いという。それに関しては最終目標がわかっている故そんなに心配はいらないだろう。……まぁ、それは全てこの話が事実なら、の話だ。
「…何でこばさんは俺らにこんなこと話すんすか?あんたはらっだぁ側の人間だろ?」
「僕はいつでもらっだぁの味方です。ら民の味方でも、運営の味方でもない。…彼らが行っている作戦は全てらっだぁのための作戦ではありますが、らっだぁが望んだことではないんです」
「…まぁ、確かに運営やら民が暴走してるって感じは強いよなぁ」
「事実、らっだぁは監獄から出て1度も笑ってないんですよ。ずっと無表情で…時々、ひどく苦しそうな顔をする。僕たちはそんな顔をさせたいわけじゃない。でも他の皆はらっだぁにあんな扱いをした帝国への怒りでらっだぁのことを見れていない。
…そんなの、意味ないと思いません?僕が止めないと、僕が皆の目を覚ましてあげないといけない。
でも僕1人では戦力不足。そしてそちらも戦力、及び情報不足のはずです。まぁ僕1人でどれだけの戦力になるかっていうのはあれなんですけど…僕が持ってきた情報はあなた方に有益でしょう?」
この場にいる人間はもう誰1人として彼を疑う気持ちを抱いていなかった。さっきまでの様子が嘘のように、らっだぁの話をするこばこだは表情をコロコロと変え、声には抑揚がついていた。それだけらっだぁを敬い、愛しているのがわかる。ならばこちらも彼には真摯に向き合うべきだろう。
「こばさん、実は俺に策があるんですけど────」
コメント
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更新ありがとうございます🙇♀️ 最近読み始めました。 雰囲気が好みすぎて毎回無事死亡しています☆ ありがとうございました(ᐡᴗ ̫ ᴗᐡ) これからも更新できる範囲でいいので更新して欲しいです!! 長文失礼しましたm(*_ _)m