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そしてまた、僕は夕日照らす農道沿いに佇んでいる。
正面には山があり、それを支えるように畑がある。
後ろを向くと、僕の神社がある、本殿までの階段は13段と短いが、その段数でさえ最近は息が詰まるようになってきていた。
時の流れは速いな、と呆気に取られていると、今日もまた来鳳者が僕に話しかける。
「おじさん、こんなとこで何やってるの?」
声のした方に視線を向けると、そこには黄色の帽子とランドセルを背負った女の子が立っていた。
僕は立ち上がると、帽子をそっと離し、女の子の頭を触る。
「痛むよ」
と一言言う。
なるべく苦しまないように、一瞬で終わらせる。
発動すると、女の子の顔が少し険しくなる。
もうすぐだからね、と声を掛けたいが、生憎発動中は声が出せないもので、毎度困る。
終わったよ、と声を掛けると、彼女は満天の笑みで私に感謝を伝えた。
発動中は時間の感覚が分からなくなるが、スボンのポケットに入っている懐中時計を見ると、丁度片割れ時ということが分かった。
「飯でも食うか?」
「いいの?」
勿論、最後におもてなしをしなくちゃね。
僕は倒れているオレンジ色の傘を拾い上げ、ボロボロになった取手を持ち、杖代わりにする。
後ろを向くと女の子はまだにこにこしている、その笑顔を見てると、泣けてくるものだ。
女の子は体こそ小さいものの、僕よりも身体的な体力はあり、12段目まですらすらと向かっている。
早く早く、と急かされ、精一杯の速度で階段を駆ける。
僕も12段目に着いた、傘の先端を、2回、12段目の階段に突くと、女の子は目を輝かせながら13段目を迎えた。