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第5話『神を断つ刃』
神代より継承されし、一振りの刃
神代より封じられし、恐るべき神性
その刃が神の権能を断つ時、決着の戦いが訪れる
今回は苑良くん個人の決着戦です
主はセッション中ガチ泣きしました。はい。
めちゃくちゃ楽しかったです。
クソ長いです。3部に分けました
主は記憶力がカスなので情報が抜け落ちていたりします自己解釈も多大に含まれるため真に受けて読まないでください…
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ふわふわと揺蕩う思考。
ぼんやりと浮かび上がるのは懐かしい思い出だった
いつだったか、兄から結界について教えられたことがあった
「苑良、今日は結界の張り方を教えよう。よく見てろ」
兄は、優しく笑って俺の頭を撫で付けると前に手を掲げ結界を張る
広がるのは涼しくも優しく暖かい草原の景色。
俺と伊沙奈を優しく愛してくれる兄そのもののようで幼いながらに瞳を輝かせていた
「!!!…っ!〜〜〜!!」
かっこいい
すごい
さすが兄ちゃん
そんな風に兄と結界内を見比べると共に
俺にできるかな
やっぱり兄ちゃんには勝てない
なんでもできてずるい
なんて子供じみた嫉妬と不安で手を強く握りしめた
「…なに、苑良ならすぐできるさ。そう不安がるな。」
それを察してか優しく頭を撫でつけ微笑む兄は
少し恥ずかしそうに自身が作り上げた青空を見上げ笑う
「結界内の景色は、その人物の内情を表す。
もし怒りや恨みなどの感情に支配されていれば景色は禍々しく淀む。逆に静かに心を保てれば、それに見合った空間になる。
……これは俺の内面でもあるから、見せられるものでよかったよ」
これが、兄の内面
優しく広がる青空
暖かく包む光
涼しげに揺れる草原
いつも冷静で優しく、気高く力強い兄
自分の隣で優しく恥ずかしそうにはにかむ兄の姿は、苑良に確かな安心を与えたのだった
そんな懐かしくも幸せだった記憶に、第三者の声が挟まる
「…ら、えんら、苑良。」
ぼんやりと目を開き、見慣れぬ天井を見て
「あぁ、伊沙奈を連れてきたあと、本家の客室で待機させられたんだったか」と逡巡し声の主を探し視線をさ迷わせる
「休んでいる所にすまないな、苑良」
声の主は御剣家総代で、思わず飛び起き深く頭を下げる
「お、おはようございますっ、すぐ起きられずすみません、!!」
「いや、いいさ。お前も疲れていて当たり前だ」
総代はそう言って苑良の肩を軽く叩き頭をあげさせた
「……苑良、話がある。」
「…はい、なんでしょうか。」
優しく苑良を見ていた総代はスっ、と真剣な顔になりそれに習って苑良も姿勢を正した。
「伊沙奈の事だが、一応容態は安定した。…だが、それも長くは持たない。」
「…はい、」
腕から炎が立ち上った伊沙奈は本家の術者とともにようやく収めたもので、それすらも長くは持たない
どうすれば伊沙奈が助かるのか、苑良には分からず拳を強く握った
「…私はこれから協会の緊急会議に行かなければならない。十中八九、槐のことだろう。それを詰めるのと同時に霊脈の管理を奪う算段だろうな。」
「……っ、」
ギリ…と歯を噛み締め顔を伏せる
権力だとか霊脈の管理だとか、心底どうでもよかった。
苑良はただ、愛する妹を救いあの日何も言わずに去ってしまった兄の真実を知りたいだけだった
「そこで苑良、もうひとつ大事な話がある」
#自探索者
ゆむ。
98
#腐向け注意!
テリー・オスト
130
207
「…、?」
「苑良……君を、御剣分家の新当主と認定する。こんなに時間がかかってしまって…今まで苦労をかけたな」
肩に優しく手を置き、任せたというように軽く叩く
「っ、はい!!」
新当主、つまりは父親がずっと隠していた分家の秘密を知るということ
そして、霊脈の主である野槌神へ面会できるということだった
だが、喜ばしい話ばかりではなかった
当主になって知ったのは、伊沙奈が大炎邪を封印する役目を担っていたこと
5年前のあの日、その封印が誰かによって狂い、それを槐が短期的に再封印、隠匿したこと
そして今日、再びその封印が誰かの手によって干渉を受け伊沙奈を苦しめたこと
自分だけが何も知らず、ただあの日の事は兄のしでかした事だと思っていた
けれど、実際には兄は伊沙奈を救っていた
わけがわからなかった
ならなぜあの時何も言わなかった
なんで俺に隠した
なんで俺たちを置いて出ていった
総代は会議のために話を終えると去っていく
苑良は少しの間放心し、直ぐに野槌神の元へと急いだ
┈┈┈┈┈┈┈┈
バイクを走らせ霊脈のある山へ向かう
山道に入ろうとしたところで見覚えのある背中を見つけた
「(あれは、泉見…?)」
そしてその隣には、強い霊位を感じる女の子
苑良は直感的にそれが野槌神だと判断し、速度を上げて2人の後ろで急停止した
ヘルメットを外しほとんど投げる形でバイクへ置く
「あ、先ぱ、いいいい?!?!」
泉見の肩を思い切り掴んでゆすった
「変なことしてないよな?なぁ?馴れ馴れしく接したり変な行動してないよな?!?!」
霊脈の主の前で挨拶もせず同行者に掴みかかるのは無礼でしかないが当主になったばかりで色々な情報の波が押し寄せ半パニック状態の苑良はそれに気付けなかった
「なっ、ん、大丈夫っ、です!たぶん!!!そ、それより!カヤさんがすごい驚いてますよ!!!」
「はっ、!…すみません!!!」
ハッと我に返り後ろを見ればぽかんとした顔の野槌神
すぐに姿勢をただし頭を下げる
「あぁ…貴方は、とらきちを助けてくれた方ね。会いに来たということは貴方が新当主なのね」
ふわりと優しく微笑まれ、「はい!」と顔を上げて改めて挨拶をする
そこで脊古とトールも合流した
「苑良、アンタのお兄さんのことなんだけど、封印石を粉々に切ってたよ」
平坦な声で言われ、身体が強ばるのを感じる
「そ、れは…」
「協会から追放されて5年間、海外で魔術について研究をしていたみたいだけど?」
詰めるようにゆっくりとこちらへ近づくトールに、その言葉に動揺を隠せず後ずさる
「あの、だから…」
「神の力を断つ剣を持ってた」
逃がさない、そう言われている気がして、あぁ、もう隠せないな、とその場に膝をつき頭を下げた
「…っ黙っていて、すみませんでした、!……兄は、槐は、5年前の伊沙奈の誕生日に、御剣分家の俺と伊沙奈以外を殺し、行方を眩ませていたんです。
あの日は俺は初任務で帰りが遅くなりました。
家へ着くと煙が上がっていて、慌てて確認に急ぎました。
…そこには、剣を持った兄と、倒れる父たち、そして酷い火傷によって虫の息になっている伊沙奈がいました。
兄だけは無事で、あぁ、兄がやったのだ、と、思いました。なんでこんなことをしたのか、聞いても何も答えてくれなくて、出ていくのを止めることもできなくて…今までの5年間ずっと探してたんです、それでも全く情報が掴めなくて、でも、ここ最近になって日本に帰ってきたこと、それまで海外にいたことを知りました。
今朝当主になり、伊沙奈が大炎邪の封印体であること、5年前に封印が歪み炎が上がったこと、それを兄が再封印し隠蔽したことを知りました。……俺は、兄ちゃんが何をしたいのか、知りたいんです。あの日何があったのか、兄ちゃんがやったことなのか、全部……。お願いします、協力してください、!」
あぁ、情けない
人に頼らねば実の兄のことすら分からない
最愛の妹すら守れない
だけど、それでも、情けなくてもみっともなくても、俺は全てを知りたいし伊沙奈を救いたい
俺一人ではできないのだから、頭でもなんでも差し出そう
肝心なことを何も話してなかった俺を認めてくれるとは思えないし、身内に敵勢力がいるのなら尚更だろうけど
伊沙奈の為なら俺のプライドなんかいくらでも捨ててやる
あぁでも、この人達に嫌われ軽蔑されるのは、すこし苦しいな
額を地面に強く押し付け、涙で歪む視界を無視して震える声で頼み込む
「俺一人では、出来ないんです…、!!」
今までにないくらいの大声で、喉が痛い
こんなに長く話すことも、兄について吐露することも今までなかった
そして俺は、兄を、兄ちゃんをまだ愛していることに気がついた
あの日のことは何かの間違いじゃないか
もっと別の理由があったんじゃないか
そう漠然と願っていたことが、今はっきりとわかり、まだ兄を愛して諦めきれていないことがわかった
ぼたぼたと目からこぼれ落ち地面を濡らす涙を見ながら、3人から言葉が出るのを待っていると
「…先輩、僕も、お話があるんです」
泉見が真剣な声で語りかけてきた
思わず顔を見上げ、泉見をじっと見つめる
「…僕は、大炎邪を封印した一族の末裔です。かつて僕の祖先は御剣家と協力して大炎邪を霊魂と肉体に分け封印しました。その霊魂を封印されているのが、僕で、肉体は御剣家の方で封印されています。……そして今回、カヤさんの魔境が崩壊寸前でその影響で封印が壊れかけています。だから、肉体の封印者である御剣さんが今とても危ない状態にあります。カミガカリである僕はともかく、一般人の御剣さんはきっと霊力に耐えきれない。……先輩、僕に協力させてください。」
いつものほわんとした人好きのする顔は珍しく凛とした雰囲気を漂わせ苑良の肩へ優しく手を置く
苑良は自分が今までずっと言えなかった一族のことをサラリと言ってのける泉見に末裔としての自覚など色々と言いたいことがでかかったが寸で飲み込み立ち上がった
「肉体と霊魂のふたつにわかれたことは知っていたが…そうか、伊沙奈は肉体の封印者だったんだな……、」
「魔境の崩壊を防ぐには僕の霊力が必要らしく、そのためにここまでカヤさんと来ていたんです」
「じゃあ、そっちに急いだ方がいいということだね」
話を黙って聞いていた脊古は情報を整理し先を急ぐように行動を示唆した
野槌神の魔境へ着き目に入ったのはいつだったか、少し前に助けた虎と戦う兄の姿だった
「!行けませんカヤ様!!お逃げ下さい!!!」
「とらた!!とらきち!!」
兄と戦う2匹の虎に向かって野槌神が叫ぶ
「あぁ、土地神よ。ようやく来たのか」
剣を振りながらこちらへ視線を投げる兄に、足が竦んだ
「兄貴…」
「苑良、決着をつけに来たぞ。……まぁその前にやることがあるからな、お前たちはこいつらの相手でもしておけ」
苑良を一瞬見やるがすぐに視線を外した槐はラルヴァ達を呼び出し苑良たち4人を囲んだ
否応なしに戦闘が始まり、動揺したままの心は置いてけぼりだった
戦っている横で、兄の剣を振るう姿が見える
あの頃よりも早く強くなっていて、長い年月が経っていることがわかってしまった
もう、俺の知っている兄では無いのかもしれない
そんな不安によってか霊紋の消費が激しく息がすぐに上がってしまう
あぁ、本当に情けない
戦闘が終わり兄へ視線を向けると、ちょうど虎達を蹴散らし野槌神の目の前へ降り立ったところであった
「っ、?!!」
慌てて駆け寄ろうにも追いつけない
「くっ…、カヤ様!!!」
剣が振り下ろされる時、何とか間に合った虎が槐の足へ噛み付いた
槐の振り下ろした剣は直撃は免れたものの野槌神の肩を切り裂く
「これで、土地神の力は断たれた!俺の力となったのだ。」
「あんた、伊沙奈が危ないってこと分かってんのかよ……、!!」
兄の行動が妹を死へ追い詰めている事に怒鳴り声をあげる
「はっ……浅いな…」
今まで向けられたことのないほど冷たい瞳が苑良を突き放す
「カヤ様!!お逃げ下さい!!!」
足が動かなかった
あの日あの頃、優しく笑いかけてくれた兄があの頃と全く違う表情で笑っている
魔境はどんどん変わっていき、俺はそれを見るしかできなかった
「苑良くん!一旦ここから離れよう!!」
呆然と立ち竦む俺の腕を誰かが強く引いて逃れることができた
それが脊古だと気づいたのは魔境から出て少ししてからだった
「はぁっ…はぁっ……、ズッ…ぅ、」
両目から溢れる涙を拭いながら息が上がるのを何とか落ち着かせるが、頭の中は依然として混乱したままで
「苑良くん、彼が持っていた剣に見覚えは?」
脊古に肩を掴まれ顔をあげる
脊古の顔を見て、他の3人を見た
戦闘の直後だったためトールと泉見は少し汚れていて、野槌神は肩を切り裂かれ顔色が悪くなっていた
「ぁ、…」
はくり、と喉が震え、また視線を落とし記憶を必死に辿る
「あ、れは… 天之尾羽張という神剣で…特殊な能力があって、神霊封印という、神の力を断つことができる法則障害を宿すことができて……」
そこまでを口にして、ひとつのことを思い出す
「っ、その力を一時的に封じる秘術が、分家の跡地に、隠し蔵にまだ残ってるはずです…!!」
そしてそこには、きっと伊沙奈にかけられた封印に関する何かもある、と直観的に感じた
コメント
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「苑良くん、今回のエピソードでいちばん心が揺れたのは、総代に『新当主』と認められたあと、地面に額を擦りつけて「俺一人ではできないんです」と懇願した場面だったな。そこまで兄を想い、妹を救いたい一心でプライドを捨てる姿が不器用で、とても人間らしくて…。それでいて、兄の冷たい瞳に「まだ愛している」と気づくところ、泣けた。あの矛盾みたいな感情の揺れが、苑良くんのリアルさを引き立ててたよ。続き、本当に待ってる。」