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【短編︰放課後の教室】
それではドゾッ👉🏻🚪
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\放課後の教室、カーテンの隙間から柔らかい日差し/
「…あ、待って、忘れ物」
机の上に置きっぱなしのノートを取りに戻った瞬間、後ろから肩をそっと叩かれる。振り向くと、クラスでも人気のあの子が立っていた。
「え、なに…?」
「忘れ物、届けに来たよ」
いつも冷静で、少しクールな雰囲気の彼が、ほんの少し笑った。心臓がドキッと跳ねる。こんなに近くで見るの、初めてかもしれない。
「ありがとう…」
声が思わず小さくなる。
「ん…じゃ、ちょっと一緒に帰ろうか」
その言葉に、胸の奥がぽかぽかして、いつの間にか隣を歩いていた。
夕焼けに染まる街路樹の下、二人だけの時間がゆっくり流れる。
「…ねぇ、これからも、こうして一緒に帰れるかな?」
「うん、もちろん」
しばらく歩いた後、彼がふと立ち止まった。
「なに?」
「…あの、ちょっと手、つないでみない?」
頬が熱くなったけど、自然と手を差し出してしまう自分。彼の手は暖かくて、ぎゅっと握り返してくれた。
「…あったかいね」
「うん、僕も」
そのまましばらく黙って、夕焼けに染まる街を歩いた。言葉はいらない。隣にいるだけで、心が満たされる。
家の前に着くと、彼が少しだけ離れて、でも見つめてきた。
「…じゃあ、また明日ね」
「うん、明日」
小さく手を振って別れる瞬間、胸の奥がじんわり温かくなる。まるで、今日一日がずっと夢みたいに優しかったみたいで。
――きっと、これから毎日が少しだけ、特別になるんだ。
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【ちいさな秘密】
放課後のチャイムが鳴って、
教室の窓からオレンジ色の光が差し込む。
「今日…一緒に帰る?」
昨日と同じように、彼がそっと声をかけてきた。
その一言だけで胸がきゅっと温かくなる。
「うん、行こ…」
教室を出ると、廊下はざわざわしているのに、
まるでふたりの世界だけが静かに切り取られていた。
階段を下りる途中、
すれ違う友達が彼に声をかける。
「おー、お前ら一緒に帰ってんの?」
「まぁね」
軽く返すその声が、なんだか誇らしげに聞こえて
胸の奥がくすぐったくなる。
校門を出ると、昨日より少し涼しい風が吹いていた。
手をつないだわけじゃない。
でも、歩くたびに指が触れそうで触れない距離。
(…やばい、意識しすぎる…!)
沈黙が続きそうで、少しだけ不安になりかけた瞬間。
「今日、さ…」
彼がぽつりと話し始めた。
「一緒に帰るの、なんか楽しみだった」
「え……」
心臓が跳ねる。
自分の頬が熱くなるのが分かる。
「だってさ、昨日手つないだじゃん」
「それは…その……っ」
恥ずかしくて俯くと、
横からくすっと笑い声が落ちてくる。
「かわい。そういう顔、もっと見せてよ」
「か、かわ…っ!?」
「言われ慣れてないの?」
慣れてないに決まってる。
でも、否定するより早く歩幅が乱れてしまった。
彼はそれに気づいて、
わざと歩くスピードを合わせてくれる。
「無理に話さなくていいよ。
こうやって歩くだけで十分楽しいし」
その優しさに胸がぎゅっとなる。
家まであと少しの曲がり角。
夕焼け色が少しずつ薄くなっていく中、
ふたりの影が並んで長く伸びていく。
「…ねぇ」
彼が小さく呼んだ。
「明日も、一緒に帰れる?」
昨日と同じ言葉。
でも、今日はそれがちょっとだけ近く感じた。
「もちろん」
迷わず言えた。
彼が嬉しそうに目を細めた。
「じゃあ、また明日。絶対ね」
その約束が、胸の奥でふわっと灯ったまま、
今日が静かに終わっていく。
――触れない手が、もうすぐ触れそうな距離で。
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【はじめて】
「今日も一緒に帰ろ?」
放課後、教室のドアにもたれながら彼が言う。
その表情はいつもより柔らかくて、
まるで“待ってたよ”って言ってるみたいだった。
「うん…行こ」
並んで歩き出すと、
校舎の影がふたりを包むように長く伸びていた。
昨日よりも距離が近い。
歩くたび腕が軽くぶつかるくらい。
(……やっぱり意識しちゃう)
彼はそんな春樹の気持ちに気づいているのかいないのか、
いつもの静かな声で話しかけてくる。
「さ、今日ちょっと寄り道しない?」
「寄り道?」
「うん。すぐそこ。いいとこあるんだよ」
そう言って連れて行かれたのは、
学校の裏手にある小さな丘。
木々に囲まれた、夕焼けがよく見える場所。
「ここ、放課後きれいなんだ」
そう言って彼は草の上に腰を下ろした。
春樹も隣に座る。
ふたりの距離はすぐに縮まって、
肩が軽く触れる。
「……なんか、落ち着くね」
「でしょ? 気に入ってくれた?」
夕日が彼の横顔を照らして、
すこしだけ髪が光って見える。
視線が吸い込まれそうになる。
(…近い。ほんとに近い。)
彼が春樹の方を見る。
目が合った瞬間、胸の奥がぎゅっとつまる。
「ねぇ、春樹」
「…なに」
少しだけ風が吹いて、
周りの音がふっと遠くなる。
「昨日さ。手、つないだじゃん」
「う、うん…」
「ほんとはさ…あれで終わりって感じじゃなかったんだよね」
「え?」
彼は困ったように笑って、
でも、目だけは真剣だった。
「…もうちょっと、触れてみたいって思ってた」
その言葉だけで頭が熱くなる。
頬まで一気に熱がのぼって、
うまく返事できない。
でも、視線だけは逸らせない。
彼はゆっくり、ほんとうにゆっくりと
春樹との距離を詰めてくる。
「ね、嫌だったら言って?」
「……嫌じゃない」
声は小さく震えていたのに、
彼はちゃんと聞き取ったみたいで、
ほっとしたように微笑んだ。
そして――
触れた。
ほんの一瞬。
本当に羽の先で触れたみたいな、
軽い、軽いキス。
唇が離れたあと、
彼は照れたように視線を落とした。
「……こんくらいなら、いい?」
春樹は返事ができず、
ただ頷くことしかできなかった。
胸の鼓動が早すぎて、
誰かに聞かれそうだった。
彼はゆっくり立ち上がって、
春樹に手を差し出す。
「帰ろ。今日はこれ以上したら、たぶん俺が困る」
冗談めかしてそう言うのに、
その手の温かさだけは嘘じゃなかった。
ふたり並んで帰る帰り道――
指先は触れそうで、触れなくて。
でも、さっきのキスだけで十分すぎるくらい、胸がいっぱい。
「春樹」
「なに」
「明日も、ここ来よ?」
「……うん。来たい」
夕焼け色の影が重なって、伸びていく。
まるでふたりの距離が、
もう戻らないくらい近づいたみたいに。
[END]
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