TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

シェアするシェアする
報告する

※今回は色々とごちゃまぜ(?)感じなので原作通りがいい人は見ないのをおすすめします

私の名前は神崎弓。今現在、突如としていなくなったアシリパさんを探すべく杉元と月島、鯉登さんに谷垣とともに行動している。月島、鯉登、谷垣は先遣隊…?とやらのものらしく先にここに下見をしに来たらしい。よくわからないんだけどな。

「月島ァッ!あそこに小さいトナカイがいるぞ!!」

「行かないでくださいよ。鯉登少尉殿。」

いつものように鯉登さんがはしゃぐのに対し月島は冷静に対応する。いつもいつもご苦労さん…。

「子供か……って可愛いッ!」

杉元も鯉登さんに呆れてその方向を見るが、一瞬にしてふわふわした小さい赤ちゃんのトナカイに目を奪われ女の子のような反応を見せる。まともなのは月島と谷垣だけか…。この先が思いやられるな…。

「弓ッ!可愛いトナカイがあそこにいるぞ!」

「ん?あぁ、そうですね。まだまだ赤ちゃんのトナカイですね。」

月島に冷たく対応されてつまらなかったのか今度は私に聞いてきた。やめてくれ…巻き込まないでくれよ…。

「触ってもいいだろうか…!」

「クズリのように襲われてもいいのなら、触ってもいいと思いますよ」

「キェッ…」

鯉登さんが触りたそうにしていたので一応の忠告をしたら縮こまってしまった。全く…ちゃんと状況を理解した上で発言してほしいものだ。野生のトナカイの子供がいるのならば近くに親がいる。親は子を守るためなら人でも襲う、そこを理解してほしいなぁ…。

「…早く、アシリパさんを見つけないとな。」

杉元がぼそっと低い声でつぶやく。

「そうだな。」

杉元の呟きに頷くように谷垣も同情する。

「アシリパさん…ちゃんと脳みそ食えてるかなぁ…」

「心配するところそこぉッ!?」

私がぼそっとつぶやいた言葉に杉元はツッコミを入れる。

「アシリパさん、一定の時間脳みそを食べれてないと発作起こすからなぁ…」

「えぇ…?初耳ぃ…」

「冗談だよ、アシリパさんがそんなわけあるかよ」

私は少し笑いながら杉元に冗談を言っていたことを伝える。そうしたらポカポカと肩を叩いてきた。…本当にお前…男か…?そう思いたくなるほど杉元の少女っぷりがやばいのである。

雑談を交わしながら楽しく(?)歩いていると私の背中に悪寒が走る。目だけであたりを見渡すと遠くの森の中に何やら光るものを発見した。…スコープだ。しかもその方向には鯉登さんがいる。

「月島、次はどこに行くのだ?」

「次はあそこの店に訪ねてみましょう。手がかりが見つかる可能性もありますからね。」

「ロシア語って難しいんだよなぁ…」

鯉登さんたちはスコープのことを気にせず呑気に喋っている。このまま何も教えずに歩いていれば鯉登が撃たれて第七師団の近距離戦が得意な二人のうちの一人を消すことができる。それならば私が黙ってそのまま知らないふりをしておけば杉元にも私にも有利な状況になる。

……でも、私の体は、私の思考は言うことを聞かない。放っとけば良いものを、放っとけれない。この人に…恋心を抱いたのは間違いだったな。

「鯉登少尉ッッ!危ないッ!!!」

「ッ!!?」

私が勢い良く鯉登さんを突き飛ばした瞬間、銃弾は私の横腹に撃たれた。

「い”ッッ!」

「神崎!!」

「弓さん!!」

私が横腹から血を流しながら倒れ込むと慌てて杉元達が駆け寄ってくる。

「神崎!どこから撃たれた!!」

月島が冷静に銃を構えながら私にどこから撃たれたのかと聞いてくる。

「あそこの…光ってるところッ…だ…」

震える指でスコープが光った場所を指差す。

「そこか…!!」

そう言って月島は構えていた銃を発砲し、見事に敵に当たったのかスコープの光が消える。

「弓さん!大丈夫か!」

「あぁ…ッ…なんと…か…」

寒いはずなのに温かい。私の手は自分の血で赤く染まっていた。

「弓!弓!!」

鯉登さんのあのでかい声も今はこもって聞こえる。このまま…死ぬのか?…まぁ…死ねるのならばこのままで十分だ…。そう思いながら私は杉元たちに声をかけられる中私は意識を手放した。


あれからどれぐらいの時間が立ったのだろう、私はゆっくりと目を覚ますと知らない病室に寝かされていた。よく見れば…鯉登さんも横で寝ている……?いや…それよりも傷が塞がっているのに驚きだ。…まさか私も不死身の血でも飲んじまったのか?そんなことはどうでもいいが…。

「あら、お目覚めになされたのですね」

「その声…インカラマッさん…?」

なんとあの日から会えなかったインカラマッさんと会えた。不思議な出会いだ…。やっぱりこれもカムイが導く運命なのだろうか…。そんなことを思っているとふと、インカラマッさんのお腹が大きいことに気がついた。

「インカラマッさん…そのお腹って…」

「えぇ…赤ちゃんがいるんです。」

予想通り赤ちゃんを抱えているみたいだ。インカラマッさんは優しくお腹を撫でる。本当に母親のような顔になってきたと私でも感じられるほどに大人っぽくなっている。

「おめでとうございます、インカラマッさんも立派な母親ですね。」

「ふふ、ありがとうございます」

そうやって話していると突然病室のドアが開き、月島が入ってくる。あのとき見た表情とは少し緩んでいるような表情をしている。まぁ…いつもの通り真顔だけどな。

「体調は大丈夫そうか?」

「えぇ、腹の傷も治りましたので、後は動けるようになるまでの辛抱ですね。」

私は何もなかったかのように答える。でもその一方で早くここの病室から抜け出さなければと考えている。杉元がどこにいるかも分からないし…早く探さなければいけない。そう思っているとまたドアが開く音がする。その瞬間私は嫌悪感を抱いた。その入ってきた人物に。吐きそうなほどの嫌悪感を。

「久しぶりだな、弓。体の方はなんともないかね?」

その人物とは鶴見中尉だった。私があれほど避けて嫌というほど嫌ったあの中尉だった。鶴見は私にいつものように優しく声をかけてくる。その声ですらも吐き気がする…。

「えぇ…まぁ。」

私は早く帰ってくれと願いながら鶴見の言葉に答える。

「それなら何よりだ、…しかし、君には残念なお知らせがある。」

「…なんだ?」

ここで死んでもらおうってか?そんなのはお断りだ。死にかけになったとしてもお前の手では殺されたくねぇ。そう思っていたが私の予想は大きく外れていた。

「杉元佐一は……死んだ。」

「………は?」

いきなり告げられた杉元の死。どういう事だ?いったいどれほど私を怒らせればこいつは気が済むんだ?あの杉元が死ぬ?そんなのあるわけねぇだろ。私はそう思い拳を握りしめる。

「…見え見えな嘘はつくもんじゃねぇぞ?さすがの私も我慢ができんからな。」

「嘘ではない。本当の事を言っただけだ。」

「だからッ…!そんなことあるわけねぇ…!!」

私が鶴見に怒鳴ろうとしたその瞬間、今まで寝ていた鯉登が口を開く。

「杉元は本当に死んだ。鶴見中尉が言うことには間違いはない。それに…私も見た。」

「私も目の前で見ました。杉元が頭を撃ち抜かれる瞬間を。」

今まで黙っていた月島さえも杉元が死んだと言い始める。何なんだよ。お前らは。私をどれだけ怒らせて、苛立たせれば気が済むんだよ。歯を噛み締めながら鶴見を睨む。

「先程から杉元さんが死んだとおっしゃられていますが…本当なのでしょうか?私のシラッキカムイ(狐の神)の占いによればそれは嘘だと言っていますが?」

インカラマッさんは男三人に対し勇敢にも講義する。しかしそんな言葉は当然響くはずもなく月島に睨まれる。鶴見はそんな様子を見兼ねたのか私の近くに来て何かを取り出した。

「……」

私はそれを見て絶句した。それは…いつも杉元がかぶっていた杉元の返り血がついたあの軍帽だった…そして脳に近い額辺りに撃ち抜かれた跡があった。言葉も出なかった。先程まで握っていた拳が震え握っていた力が弱くなるのがわかる。それと同時に焦りなのかもよくわからない汗が気持ち悪ほど出てくる。

「ッ…!今すぐ訂正してください…!そんなもの嘘に違いありません…!」

インカラマッさんは何やら焦りながら鶴見達に杉元が死んだと言う情報を訂正しろと言い始める。しかし私には周囲の声は聞こえない。雑音さえも。ただ聞こえるのは耳鳴りと、うるさいほどに響く自分の心臓の鼓動、そして荒く乱れた呼吸音のみ。そんな中、鶴見はとどめを刺すように私に囁く。

「杉元は…最後に、お前の名前を呼んで息絶えた。」

私はその言葉を聞いた途端、正気を保てなくなった。

「う”…う”ぁ…う”ぁ”ぁ”ぁ”ぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「…!」

人間とは思えないほどの叫び声を上げながら暴れ始める。月島は私を止めようと近づくものの…

「あ”ぁ”ぁ”ぁぁぁ!!!」

「ガッ!!?」

「月島ッ!!」

私は月島を殴り飛ばし、月島は壁に頭の後頭部を強く打ち付ける。鯉登は急いで月島に駆け寄る。

「う”ぅッ…あ”ッ…がぁ”ぁ”!!」

「弓……さん…ッ…」

インカラマッさんは私が今はウェンカムイ(悪い神)にとりつかれたような姿になっており、息をのむ。鶴見は計画通りと言わんばかりに口角を上げていた。

「いったい何事ですか…!?」

騷ぎを聞きつけたのがか一人の看護師が入ってくる。

「…!こっちへ来るな!!今すぐにここから離れろ!!」

「どういうことですか…!?」

鯉登はいち早く察したのかすぐに部屋から離れるようにと看護師に怒鳴る。だが、看護師には理解できず逃げることもできず暴走している私に床に押さえつけられる。

「う”ぅ…!!う”ぁぁぁ!!!」

「なっ…何をするんですか…!?」

「お前だなッ…!!お前がッッ!!杉元をッ!!!」

「そんな人私知らなッ…」

「そうだ。お前がやったんだッ…そうだそうに違いねぇ!!」

今の私には正常に物事を判断することなんぞできやしなかった。そのまま怒りに身を任せることしかできない。私は看護師たちに内緒で袖の中に隠し持っていた銃剣を取り出し、そして。

グサッ。グチャッ。バキッ。

私は一心不乱にその看護師を銃剣で刺し続けた。何度も何度も、骨に当たろうと返り血が飛び散っても、インカラマッさんや鯉登さんに怯えられたとしても私は止まらずに刺し続ける。泣いているのか笑っているのか怒っているのかわからない状態で。

「お前のせいでッッ!お前のッ…!せいでッッ!!杉元がッッ!!杉元がぁッッ!!」

看護師がすでに息絶えていると言うのに私はそれでも刺し続ける。しかし、その時…

「弓さん!!!目を覚ましてください!!!」

インカラマッさんが珍しく声を荒げて私に向かって大声で叫ぶ。その瞬間、私は一瞬にして正気を取り戻した。

「ッ…え……あ……」

目を覚ました瞬間飛び込んでくるあり得ないほどの情報量。それにつれよく嗅ぎなれた鉄のような匂いと私の手から滴り落ちる看護師の血。そして…目の前にあるぐちゃぐちゃになった看護師だったもの

「そんなッ…俺ッ……こんなッ……つもりじゃッ…」

息が途切れながら必死に酸素を求めて呼吸をする。訳もわからず涙も出続け、気持ち悪い汗が尋常じゃないほどに出る。私は返り血がグッシャリとついた手で顔を覆い目の前のものを見ないように必死に目をそらす。

「ハァッ…!!ハァッ…!ハァッ…!」

「弓…さん…」

しかし先程の光景が目に焼き付いて離れてくれない。それに…なんだか幻聴も聞こえてくる。私はこのまま呪われておかしくなってしまうのか?そんな事ばかり想像していると、私の背中に温かい感触が触れる。

「辛かっただろう…こんな事になるまで我慢をし続けていたのだな…可哀想に…」

「ッ…!!!!」

その暖かな感触の正体は鶴見が私を後ろから抱きしめていたのだ。自分が仕向けた事なのに、それを利用して私を陥れようとしているのだ。弱みにつけこむ作戦なんぞ本当に気味が悪くて気持ち悪い。

「君の手は汚れていない、私の手が汚れているだけだ。君がやったのではない…だから安心したまえ。」

「あ……あ……」

振り払わなきゃ。今すぐにでも投げ技でもやってこの死神を剥がさなくては…。しかし私の体は動かない。死神の言葉が的確に私の心に刺さる。まるでどのような言葉がほしいのか分かっているかのように。そして死神は私が最も欲しかった言葉を優しい声で囁く。

「よく頑張ったな。」

「…ぁ……」

私が、人生でずっと欲しかった言葉。父親と母親から聞きたかった言葉。その言葉を…死神に言われた。その瞬間、私は心が抜き取られたかのように言葉を失い、自我さえも失う。

「ッ…」

インカラマッさんは私の様子を見て、信じられないとでも言いたいような表情をする。そりゃそうだ。インカラマッさんは少しの間だったが私のことをよく理解している。誰にも惑わされることなく人の命令にさえも逆らういつもの私が、死神のたった一つの言葉で何もかもを奪われてしまったのだから。

「さぁ…今は大人しくしていなさい。君の安全は私が保証しよう。何か欲しいものがあるなら何でも言いなさい。」

まるで子供に話しかけるように微笑みながら私に話しかける。しかし今の私には返事をする気力さえもない。私は…抜け殻になってしまった。


あの事から数日立った頃。弓は何も食べなくなった。あの日では鶴見中尉殿には刃向かえるほどの気力があったと言うのに…。

「弓…水だけでも飲まんか…?」

「…………………」

毎日話しかけてはいるが何も返事をしない。例え体を揺らしたり、突いたとしても何も反応をしない。目にはあの時のように反抗の意思に燃えた光は灯っておらず、ただ曇ったような目をしている。まるで人形のようにピクリともしない。

「弓さん…せめて…お水だけでも…。」

インカラマッも話しかけるが何も反応をしない。どうしてしまったのだ…?どうしてこんなことになってしまった…?いくら考えても何も答えは出ない。月島が作った料理も何も食べない。汁物すらも飲まない。日が経ってくうちにどんどんやせ細っていく。

「弓………」

もう、あの時のような生き生きとした姿は見れないのか…。そう思っていた時、

「…………さい…」

「…!も、もう一回言ってみろ…!」

話しかけ続けて一週間が経つ頃、弓が微かだが何かを喋ったのだ。私は耳を近づけてなんと言ったのか耳を澄ます。

「水を…飲ま…せ…て…くだ…さい…」

「水か…!?わかった!今すぐ用意するッ…!」

掠れた声で「水を飲ませてくれ」と頼んでくれたのだ。私にとってはとても嬉しいことである。ようやく水分を取ってくれるのだからな。急いでコップに水を注ぎ、弓の頭を軽く起こしてゆっくりと飲ませていく。しかし…。

「ゲホッゲホッ!!」

「す、すまん…!器官に入ってしまったか…!?」

「い…いえ………久々…すぎて…」

「そ…そう…か…」

あまりにも長い間飲んでいないことで乾燥しているのか、水を飲むと痛みが走るらしくゆっくり飲ませたとしても咳き込んでしまう。例えお湯にしたとしても結果は変わりない。

「すみ…ま…ゲホッゲホッ…」

「いい、ゆっくり慣れろ、そう強制的にはしない」

やつれた姿を見ているとどうしても心配になってしまう。しかし少し気になることがあった、それは…何故か毎回「とても怯えたような表情」をするようになった。何が原因なのかすらも分からない。昔の事が関係しているのか…?そう考えたとしても真実は弓にしかわからない。

「あの……どうか…しました…か…?」

「いや、なんでもない。考え事をしていただけだ」

「そう…です…か…」

やはり怯えている。いったい何にだ…?鶴見中尉殿か?もしくは…私か…?いったい何がこんなにも弓を怯えさせるのだ…?そう考えていると不意に弓が私に抱きついてきた。

「ッ…!?なっ、何をッ…!?」

「…少しだけ……こうさせて…ください」

「…!」

私は弓の涙ぐんだ声に情けながらも少し驚いてしまった。動揺したのもあるがそれ以前に初めて弓の泣いている所を見た。私が最初に出会った時から何事にも負けず、泣かずに立ち向かう姿勢を持ち負けず嫌いなあの神崎弓が…こんなにも泣いている所を…。

「私は…私は…ッ…いったい…何なんでしょうか…?逆らえもしない、反抗もできない…こんな私は一体何なんでしょうか…?」

元のような元気のない、やつれたような表情で無理にでも笑いながら私に目線を合わせて聞いてくる。その瞳には光は灯っていなかった。私はその瞳に度肝を抜かれた。こんな子供がこんなことに巻き込まれていたのか?そう自分を疑いたくなってしまった。

「…お前は変わらない。お前は神崎弓だ、例え抵抗できなくたとしても反抗ができなくたとしても、お前は神崎弓に変わりない、それだけだ」

光を失い、自分さえも失った弓に少々苛立ちを感じたのか私は年甲斐もなく怒鳴るように言ってしまった。弓は豆鉄砲をくらったハトの様な表情をしていたがすぐに笑い始めた。

「な…なんだ…!」

「いや…貴方はやはり、昔にあったときからずっと…ずぅっと変わっていらっしゃらないんだなぁと…!」

その顔はとても嬉しそうに笑っていた。まるで夏に咲く「向日葵」のように明るかった。そうだ、やはり…お前はその笑顔が似合う。その笑顔に私は…あの時からずっと救われていたのだ。

「…ようやく取り戻したか、」

「まぁ…そうですね、………それと…ひとつ、お願いごとが…」

「なんだ?」

「…すみません…まだ筋肉がまともに動かないので…食べさせてもらえませんか…?」

弓は気恥ずかしそうに頬を赤らめながら言ってきた。私は思わず少しうれしくなってしまった。今の弓ならば…また、あのときのように仲良くなれるのではないかと…私は期待してしまった。

「もちろんだ、まともに動かせれるようになるまで私は手伝うぞ。」

「ふふ…ありがとうございます、あ…でも、食べ物は箸一口分でお腹いっぱいなので…あまり持ってこなくても大丈夫ですよ、」

「……は…?」

私は一瞬、弓が行った言葉に驚きを隠せなかった。箸で一口分でお腹いっぱいだと…?そんなにも胃が縮んでしまったのか…?そう驚いていると近くにいた月島もインカラマッも驚いた表情をしていた。

「どうか…しましたか…?」

「い、いや…その…本当に腹一杯になるのか…?」

「えぇ、それ以上食べると吐いてしまうんですよ、別に飴玉一つでもお腹いっぱいなんですけどね、」

『はぁ!?』

私と月島は声を揃えて言ってしまった。飴玉一つで腹いっぱいだと…!?ふざけたことを…と、思ったが弓が言うのならばそうだろう。よくよく思い出してみれば何か食べるときは杉元から少ない量を一口もらってその後は話すばかりだった…、いったいどうしてそうなってしまったのか…。

「嘘ではないのだな?」

月島は疑いを隠せなかったのか少し、戸惑いながらも弓に真実を聞く。すると弓は笑顔で「本当ですよ」と答えた。まさかの真実を知ってしまった…。

「待て…それなら…た、体重は…ど、どうなんだ…?」

私は絶対に聞いてはいけないと思いながら弓に現在の体重のことを聞いた。すると弓は…

「現在の体重ですか…?えっと…確か…23…でしたね」

『………』

自分の耳を疑った。体重が23kgだと…?死ぬ気なのか…?そう思っていると弓が訳を話し始めた。

「父にこの体重を維持しろと言われたんです、そうじゃないといつものあの壁登りとかも体重のせいでできませんからね…」

「なんだと…!?……まぁ……お前が大丈夫ならば…聞かないでおこう…。」



そう会話を交わしながら数日を過ごし続けた。弓もリハビリのおかげか普通のように歩けるようになりいつものような状態に戻った。しかし……とある日、急に別れは来た。それは夜のことだった。

「………ん…?」

「あ…起きちゃいました?」

何か物音がしたと思い目を覚ますと、病気の窓に身を乗り出していた弓の姿を見つけた。一瞬私は目を疑った。いくら元気になったとはいえそこまでなのかと…。

「何を…するつもりだ?」

近くにあった自分のサーベルに手をかける。弓はそれでもお構いなしに窓の縁に足をかける。

「…脱走です。…やっぱり…貴方達とは…一緒になれないんです。第七師団とは仲良くなれないんです。」

弓は少し悲しげな表情でどこか遠くを見つめながらそう話す。薄々は気づいていた。弓をこちら側に引き込もうとしても必ず逃げ出すということを。でも信じきれない、やはり側にいて欲しいと願ってしまう自分がいた。しかし…私は…

「…今なら…見逃してやる。逃げるならば…さっさと逃げろ。」

その場で弓を殺す…いや、捉える事はできなかった。鶴見中尉殿に酷く叱られるのも、月島に冷めたような目で見られるのも承知の上だ。その上で彼女を逃したい。この狭い鳥籠の中から逃してやりたいと…思ってしまった。

「…この御恩は…忘れません。」

弓はそう言って少し微笑んだあと、窓から降りて行った。その窓から外を見てみれば珍しく空は雲などが晴れて少し青みがかった月が出ていた。その月は…まるで弓の性格を表すかのような綺麗な色だった。そう見惚れていると月島が部屋に入ってきた。

「…鯉登少尉、何故逃したのですか。」

月島の顔には青筋が浮かんでいた。いつもは聞かない低い声に睨むような目つき。相当怒っている。

「…気絶させられ…気づけばこうなっていた。急いで追うぞ。」

そう言い訳して服装を整え廊下を走る。しかし…その時の月島の表情は…まるで…言葉にしにくいほどの表情をしていた。怒りにも悲しみにも例えられない…まるで失望したと言わんばかりの表情。その後「はい」といつもの声で答え私よりも早く弓のもとへと向かっていった。


鯉登のおかげでなんとか病院から脱走はできた…。だが、やはり倒れて寝込んでいた分、体力などが落ちている…。辛いが走るしかない。

「ハァッ…ハァッ…!」

「いたぞ!!あそこだ!!」

「嘘だろ…!?もう来たってのかよ…!」

病院を出てから数分後…バレたのか軍人らが追いかけてきた。先頭には月島と鯉登がいた。月島は…本当に感が鋭いな…多分、真っ先に部屋に向かったんだろう。まったく…嫌になる…。そう思いながらしばらく走ったが月島達は引く気はない、それどころか走る速さを上げてきて私との距離をどんどん詰めてくる。

それと同時に私の中に恐怖と絶望が迫ってくる。このまま走っていてもいずれは追いつかれそのまま第七師団の管理下に置かれる…。下手をすれば殺される。そんな生活が待っているならば私はもっと走らないといけない。しかし足がどんどんもつれていく、走るスピードも落ちていく…もう…駄目なのか…?私は…もう終わりなのか…?嫌だ…。そんなのは嫌だ…。そう心で思いながら走っても早くもならない、体力も戻るわけもない。足音がすぐ近くに迫る。…もう………駄目か。

そう思ったその瞬間。私の横を1本の矢が通り月島たちの方へと向かって行き一時的に月島達の足を止めた。そして…その矢の形にはとても見覚えがあった。アシリパさんがよく使っていたトリカブトの毒が塗られた先端のでかいあの矢の形に…そっくりだった。その方向に目を取られていると聞き覚えのある声が私の耳の中に響く。

「弓!!」

その声は幼い声ながらもどこか透き通ったような…力強く芯の通った声…。そして、私にアイヌの事や生きる気力を与えてくれた…。そう…「アシリパさん」の声だった。そしてその声のする方へ目を向けてみると…そこには…

「弓さん!!」

アシリパさんともう一人、あの鶴見から亡くなったと…言われた…あの…「杉元佐一」が…いた。その瞬間私の目からは涙が溢れた。多分…こんな事はこの一生で今だけかもしれない。こんなにも安心できて心強いと思えたのは…この人達だけかもしれない。

「白石!少しだけスピードを下げてくれ!」

「了〜解!」

アシリパさん達は軍人達が負傷者を乗せるためのソリに乗っており操縦は白石がしているみたいだ。そしてアシリパさんは白石にスピードを下げろと言って私にある程度ソリを近づけ、そして杉元と一緒に私に手を伸ばした。

「手を取れ!!」

初めて…嬉しいと思った。そしてとても感動してしまった。こんな私にも…手を伸ばしてくれる人がこんなにも…近くにいたのか…?…今はそんなのはどうでもいい。そんな事は後回しだ、今は…。

「アシリパさん!!杉元!!」

私は二人の手をつかむために手を伸ばして二人のところへジャンプした。杉元達は私の手を取ってソリへと引っ張ってくれた。そのときに一緒に倒れてしまったが痛くはなかった。むしろ…なぜか…暖かった。

「杉元…生きてたんだな…!本当にッ…本当に…良かったッ…」

「それはこっちのセリフだ、そうだろう?アシリパさん、」

「本当だぞ!!本当に…心配したんだからな…」

私は二人に抱きつきながら少し泣いてしまった。でも…本当にアシリパさんたちには迷惑をかけてしまった。私一人のせいでこんな事に…。しかしそんな和やかな時間を邪魔するようにあいつらは銃を撃ってくる。

「アシリパさん!伏せて!!」

杉元は慌ててアシリパさんに伏せるように叫ぶ。しかし私はその中でただ一人、立っていた。

「…!?ゆ、弓…!?何をしているんだ!?」

「弓さん!?」

私は…別れを告げなければならない。小さい頃から引きずってきた…「恋心」に。私は…鯉登さんに見せてもらったあの笑顔やあの温かい手に助けられて今までずっと…鯉登さんの事が好きだった。いつかこの思いを伝えられたのならばと何度夢見たことだろうか。旅をしているときにもずっとそう思ってきた。

だが…今更もう遅い。元々このような運命になる事は確定していた。だから…私は運命に従い、あなたの事を…諦めます。多分、軍に最初に入ってきたときに友好的に接したのは鶴見からの命令だったのでしょう?そして私を堕とし込んで離れられなくする作戦だったんでしょうけど…もう既に貴方に堕ちていたんですよ。頭の中で独り言を言いながらキロランケから学んだ技術で作った手投げ爆弾を懐から取り出し火を付ける。もうこれで…離れ離れ。そう思うと自然と心が痛み始める、でも…これはしょうがない事なんだ。また…次の人生で恋に落ちればいい話しだ。

「…さようならッ…!鯉登音之進さん!!」

涙を流しながら私は火のついた手投げ爆弾を月島たちの方へと投げる。月島はすぐに気づいたのか後ろに止まるように命令したあと、鯉登を守るように覆いかぶさる。そして後ろを向いた瞬間、鯉登さんの私の名前を叫ぶ声が聞こえてきた…が、すぐに爆音に消され私達は…第七師団から逃げ切った。


弓が…杉元達の方に戻ってしまった。そして…最後に見えたあの弓の顔が今も頭の中に回る。爆音のせいか耳鳴りがひどい…が…すぐに耳鳴りは収まる。

「月島!!大丈夫か!」

「えぇ…威力は低かったので多分、目くらまし用でしょう。」

私を庇った月島の安否も確認できた。それにしても…あの手投げ爆弾をどこで手に入れたのか…弓は謎が多すぎるものだ。そう思いながらも立ち上がり服についた雪を落としていると、ふと…爆発した所に紙のようなものが置かれていることに気づき、恐る恐る近づいてその手紙を取る。

「どうかされましたか?鯉登少尉殿、」

「月島……おいは…一人のおごじょんきもっを…無下にした上に…泣かせてしもた。」

「……」

その手紙を見て私は絶句した。元々…鶴見中尉殿から弓との親睦を深めこちら側に引き込むように言われ最善を尽くしてきた。…だが、そんなことは必要なかった。むしろ邪魔をしていた。弓は……もう、あの時から…私の事を…好きだったと…言ってくれていた。しかし、いくら後悔したとてもう後戻りすらもできない。私は…その手紙を握りしめながら涙を静かに流した。


「いやぁ…あっぶなかったぜ…!あの爆弾がなけりゃこのソリのスピードでも追いつかれてたぜ…!」

「よくそんな物持っていたな、弓、ちょっと驚いたぞ…」

「まぁ…弓さんのおかげで乗り越えれたんだし、一件落着だな、そうだろ?弓…さ…」

杉元達はそう話しながらワイワイと逃げ切った事に喜んでいた。そして杉元が私に話しかけようとした途端、言葉を詰まらせた。アシリパさん達も不思議そうに私の方を見たが直ぐに理解したのか言葉を発さなかった。なぜなら…

「う”ぁぁぁあ”ぁぁ!」

私が叫ぶように大粒の涙を流しながら子供のように泣いていたからだ。杉元達にとっては私の泣く姿は初めて見るものだから驚いたのだろう。でも…私にはそんな事は気にすることはできなかった。

「弓…さん…」

「弓…」

「あ”ッ…たし…ッ…恋してた人…ッ…自分で…ッ…別れちゃった…ッ…」

「え…?」

直ぐに分かったのだろう。杉元達は驚きの表情をしていた。多分…一度も思わなかったのだろう、そしてまだ私を男だと思っていたのだろう。まさか私が鯉登に恋をしていたなんて思いもしなかったんだろう。でも、アシリパさんは優しく私を抱きしめてくれた。

「そうか……辛かったな…。苦しかったな…。」

「う”ぅぁ…グスッ…う”っ…アシリッ…パ…さん…」

「もう気にしなくていい、思い出すのならば私達が忘れさせてやる、そうだろ?杉元、白石、」

私に優しく声を掛けながら杉元と白石に声をかける。

「それはもちろんだよ、弓さんが元気になれるように俺もサポートするよ、」

「おうよ!俺が死ぬほど弓ちゃんを笑わせてやるぜッ!」

二人はいつものように返事を返す。次第に私はその雰囲気に乗せられ安心したのか涙が落ち着いてきた。そしてゆっくりとアシリパさんから離れてまだ溜まっていた涙を拭く。

「……みんな、…私、決心したよ。」

「…?何をだ…?」

「どうしたんだい…?」

私は立ち上がって杉元たちの方に視線を合わせる。

「私が隠してきたこと…全てをあなた達に教える。性別も過去も、…そして……背中にある「刺青」の事も。」

私がそう言うと更に驚いた表情を見せる。驚くのも仕方がない。なぜなら…私も白石と同じく囚人なのだから。しかも刺青はまだ土方たちにも写させていない。だから…私の刺青は杉元達のものなのだ。本来ならば自殺して消してしまおうと考えたが、アシリパさんが私に生きる意味や意志を与えてくれた。だからこそアシリパさんの願いを叶えたい。協力を惜しみたくない。だからこそ全てを明かそうと考えた。

「さぁ…これからが忙しくなるよ、なんせ…私の刺青は杉元達だけが知ってるんだからね。」

私はニッと笑って夜明けの朝日を見つめる。私の行く先は真っ暗かもしれない。でも、それでも構わない。アシリパさんや杉元達の為になれるのならば死んだって構わないほどだ。さぁ…行こうじゃないか。


「血みどろとなる金塊争奪戦に!!」

何でも妄想ストーリー

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

11

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚