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──続き──
コンビニの駐車場に車を停めてすぐ、ネグとマモンは車から降りるなり、フラフラとトイレへ駆け込んでいった。
乗り物酔いだ。しかも、けっこう重め。
だぁは助手席から降りて、すかーも後部座席から無言で立ち上がる。
夢魔も後を追うようにドアを閉め、トイレ前へ向かった。
「……ネグ、マモン。大丈夫か?」
だぁがトイレのドア越しに声をかけたが、中からは返事がない。
夢魔も心配そうに眉をひそめる。
「おい、マジで吐きすぎて倒れてたり……?」
すかーが腕を組みながら静かに唸った。
「……いや、まさか。あいつら、また──」
その時。
「っ、ネグ!? マモン!? 返事しろ!」
だぁが声を張り上げ、すかーと夢魔も顔を見合わせた瞬間、トイレの小窓が半開きになっていることに気づいた。
3人「──またかよ!!」
夢魔が額を押さえ、すかーはその場で蹴りを入れる勢いでドアをバンッと叩いた。
だぁは無言で、ただ一言だけ、深く、低く。
「……逃げたな。」
その声には完全に怒りがこもっていた。
すかーも夢魔も黙って頷き、すぐさま車に戻り、探し回るためにエンジンをかけた。
──数時間後。
とうとう見つけたのは、レイの友人宅だった。
家の前に車を停めて、3人は無言でドアを閉める。
インターホンを押すと、中から友人の声が聞こえた。
「──はーい、今開ける!」
玄関が開くと、友人が顔を出し、気まずそうに眉を下げた。
「あー……やっぱ来たか。」
だぁは目を細めたまま、低い声で言う。
「ネグとマモン、ここだろ。」
友人はため息をつきながら後ろを振り返った。
「おーい、2人とも、迎えが来たぞ。」
その声で、ネグとマモンが姿を現す。
だが、2人とも、レイから叱られていたのか、すっかり顔を俯けていた。
「だから!!なんで!逃げた先が俺がいるとこなんだよ!!わざとか!? マジで!!」
レイは本気で怒鳴っていた。
ネグとマモンは申し訳なさそうに顔を伏せながら、声を揃えて言った。
「ごめんってば……」
レイは額を押さえ、ぼやく。
「はあ!? マジでさぁ!!! 俺を巻き込むな!!」
レイの友人も、苦笑いしながら2人を押し出す形で3人の前へと戻した。
すかーは冷たい目線で言った。
「……帰るぞ。」
夢魔は無言で2人の腕を掴み、半ば強引に車へ戻す。
そして──
──車で家へ到着。
玄関を開けた瞬間、ネグが先頭を歩こうとしたその時だった。
ツルッ──!
「あっ……!」
ネグの足が滑り、その勢いでだぁが支えようとしたのだが──
ズルッ!
「──!?」
だぁの手がネグの短パンに引っかかり、ズラしてしまった。
夢魔の服もギリギリ足りず、ネグは顔を真っ赤にして固まった。
そのまま勢いで、だぁの足がネグの体に食い込む形になってしまい──
3人、完全停止。
「………………。」
ネグは俯いたまま、かすれた声で。
「……変態。」
だぁは気まずそうに目線を逸らし、静かに。
「……ごめん。」
ネグはすぐにマモンの手を借りて、3人から少し距離を取った。
その時、なぜか夢魔とすかーも、ネグの足を引っかけて転びかけ、2人して同時に悶えた。
「ぐっ……! ネグッ! それは……ッ!」
すかーが低く呻き、夢魔も口を歪めながら。
ネグはその様子を見て、口元を押さえながら小さく呟いた。
「ぐにぐにしてる……使って無さそ……」
マモンもふっと笑って、少し視線を伏せた。
その瞬間──
すかーと夢魔が、声を揃えてブチ切れた。
「ふざけんなぁあああああ!!」
「マジで限界だわ!! ネグ!! マモン!!」
だぁも、拳を強く握りしめながら。
「本当に……ッ! お前らは……!」
3人の怒鳴り声が家中に響き渡った。
ネグとマモンは顔を引きつらせながら、顔を見合わせる。
「……やばい。」
「……逃げよ。」
そして2人は、またしてもその場から全速力で離れていった。
すかーは深くため息を吐き、心の中で。
(……なんでこうなるんだよ、本当……。可愛いから許すとか、そういう次元じゃねぇ……!!)
夢魔も、目を細めたまま頭を押さえながら。
(いやもう、ほんと、こいつら何回逃げるんだ……マジで学習しろ……)
だぁは最後に静かに一言。
「……絶対、今度こそ、逃がさない。」
そう呟きながら、再び追いかける準備を整えるのだった──。
──屋根裏部屋で隠れていたネグとマモンが捕まった後──
だぁの静かで低い声が屋根裏に響いた。
「……ネグ、マモン。もう逃げるな。」
ネグとマモンはぎゅっと肩をすくめて、だぁたちの冷たい視線に目線を合わせられないまま、ポツリと小さく「ごめんなさい……」と呟いた。
だぁは深くため息をつきながらも、優しさをかすかに混ぜた声で言った。
「まず風呂に入れ。汗もかいてるだろ。」
2人はうなずき、静かに風呂場へ向かった。
──風呂上がり。
ネグとマモンはすかーの貸してくれた服を着てリビングに戻ってきた。少しオーバーサイズなその服を着た2人の姿は、どこか頼りなく、どこか申し訳なさそうで。
そして夜になり──
だぁと夢魔は別室へ。
すかーはネグとマモンと同じ部屋で見張りがわりに一緒に寝ていた。
すかーの心の中は、怒りと困惑が混ざっていた。
(また逃げるんじゃねぇだろうな……)
そんなことを思いながらも、ウトウトと眠りかけたその時だった。
「……すかー。」
小さな声。
すかーの服がクイ、クイッと引っ張られる感触。
薄目を開けると、ネグがこちらを見上げていた。
「……なんだよ。」
眠そうな声で応えつつ、身を起こすと──
ネグはすかーの腕を引き、静かに部屋の外へ誘った。
「おい、何だよ。今度は何する気だ?」
不審に思いつつ、部屋を出たその瞬間──
ガチャン。
「……は?」
すかーの目の前で、ネグが素早く鍵を閉めた。
「……おい。」
すかーは一瞬、呆然とした顔でドアを見つめたが──
その表情が一気に険しくなった。
「ふざけんな、ネグ……ッ!!」
ドンッ!!
すかーは怒りに任せて、ドアを強く蹴りつけた。
だが、ネグは中で無言。
「……開けろ、ネグ。マジで開けろッ!!」
さらに一撃。
鍵が甘かったのか、荷物ごとドアがバタンと開いた。
部屋の中ではネグがベッドの上で小さく丸くなっていた。
その姿を見た瞬間、すかーの怒りは一気に爆発した。
「お前さあ……いい加減にしろよッ!!!!」
すかーは迷わずネグの腕を掴み、思い切り殴った。
──バンッ!!
ネグ「っ……痛い!」
それでもすかーは止まらなかった。
「逃げて、鍵までかけて……お前、ふざけんのも大概にしろよッ!! 何回目だよ……!」
さらに拳を振り上げ、何度も。
ネグは声を出さずに涙を流しながら、ただ耐えていた。
その時──
「すかー!!やめろッ!!」
部屋の外からマモンの叫び声。
すかーは振り返りもせず、さらにネグに手を振り下ろそうとしたその瞬間──
「やめろって言ってんだろ!!」
だぁと夢魔が駆け込んできた。
夢魔がすかーの肩を強く掴んで引き離す。
「すかー!もういい!」
だぁの低く鋭い声。
すかーは、肩を押さえられたままネグを睨みつけ、まだ呼吸が荒かった。
「……ふざけんなよ。何回同じこと繰り返すんだよ……!」
それでも、夢魔は淡々とすかーに言った。
「すかー、ネグはもう怯えてる。お前がそんなに怒鳴ったって、何も解決しない。」
すかーは何も言えず、ただ唇を噛みしめた。
その間、だぁは静かにネグの元にしゃがみ込んで、震えるネグをそっと抱き寄せた。
「ネグ、大丈夫だ……もう大丈夫。」
マモンもすぐに救急箱を持ってきて、だぁの隣に座りながら、ネグの顔を拭き、手当てを始めた。
ネグはかすかに震えながらも、声を出すことなく、ただ目を閉じていた。
マモンは優しく背中を撫でながら、低い声でささやいた。
「大丈夫、大丈夫だから……俺たちがいる。」
すかーはその光景を見て、唇を強く噛みしめたまま、拳を震わせていた。
──夢魔はすかーの背中を軽く叩きながら、静かに言った。
「怒るのも無理はない。でも、今はそれ以上はやめとけ。」
すかーは何も返さず、ただ深く息を吐き、拳を静かに下ろした。
だぁもまた、静かにネグの髪を撫でながら小さくつぶやいた。
「……本当にもう、逃げるなよ。」
ネグはその声に、ほんの少しだけ、目を細めて怯えて何も言わなかった