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こはる
97
朝食をとったあと、エミリアさんと一緒に人魚の島へと向かった。
前回訪れたときは人魚は一人しかいなかったけど、今日は全員がいるようだった。
「マイヤさーんっ!」
「あら、アイナさん。いらっしゃい。
えっと、エミリアさんもいらっしゃい」
「お邪魔しまーす」
突然の訪問ではあったが、マイヤさんは快く私たちを出迎えてくれた。
他にも3人の人魚たちが、私たちに気付いて近くに遊びにきてくれていた。
「グリゼルダ様が昨日からお出掛けになられてね。
代わりにグレーゴルさんって人間が来たんだけど、どこにも姿が見えないのよ」
少し困ったように、マイヤさんが言葉を続けた。
話を聞いてみると、昨日挨拶をしてからすぐに姿を消してしまったらしい。
「島の警護はしてくれているみたいだけどね。
あっちの空に、ポチが飛んでいるし」
「あー、あの魔獣はグレーゴルさんのなんだ?
もう一匹、綺麗な青い鳥もいたんだけど、それも?」
「それはルーチェですね。アイナさんが名付け親なんですよ」
「へぇー」
「急に名付けを頼まれてしまって……。
……うーん。グレーゴルさん、サボっているわけじゃなくて、マイヤさんたちに照れてるだけだと思うよ」
「照れてる……? 何で?」
それは……人魚たちの姿が肌蹴ているから!
……だなんて、さすがに素直には言い難いなぁ……。ここは適当に誤魔化しておくか。
「ほら、人魚さんって美男美女揃いじゃない?
グレーゴルさんはピュアな人だから、馴染むのに時間が掛かっちゃうかも」
「んー? 美女だなんて、そんなぁ♪」
マイヤさんは控えめに、しかし否定もせずに喜んでいた。
多少の自覚はあるのだろう。実際、喋らなければ綺麗な人魚さんだしね。
……おっと、これは失言か。
「でも、ずっと姿を見せないのも困りものですよね。
わたし、ちょっと探してきます!」
「エミリアさん、この島は結構広いですけど大丈夫ですか?」
「ポチとルーチェが見張っているから、危険なことは無いと思いますよ!
それじゃ、行ってきますね」
「はーい。見つからなかったら戻って来てくださいね。
午後には自警団の詰め所の方に行かなければいけないので」
「分かりました!!」
エミリアさんは元気に返事をすると、小走りで島の中へと駆けていった。
「――ところで、今日は何か用? 遊びに来ただけ?」
「ちょっと聞きたいことがあって。
先週グリゼルダから聞いたんだけど、海底に洞窟があったんだって?」
「あ、そうそう!
アイナさんにはもう少し詳しく調べてから伝えようと思っていたんだけど」
「別に、しっかりした報告じゃなくてもい大丈夫だよ?
話半分でも、気楽に話してくれて構わないから」
「おっけー。でも、あやふやなことがあると、話し難いっていうのもあるんだよね」
「それも分かる……!
じゃ、もうしばらく待っていようかな」
「でも、用事ってそのことなんだよね?
分かってる範囲で良いなら、話しちゃうね」
マイヤさんは内容をまとめながら、一週間前のことを話してくれた。
そもそもその場所は、以前の人魚の世界では、昔から受け継がれてきた石碑が沈んでいるという場所だったらしい。
石碑には人魚たちの記録が刻まれており、何か調べ物があれば、そこに出向いていたそうだ。
人間の世界で例えると、図書館みたいな感じかな?
そして最近、その一角が崩れて、海底の奥へと続く道が現れたらしい。
少し進んでみると、完全に洞窟になっていて――
「……それって、『螺旋の迷宮』とは関係が無いんだよね?」
「ええ。中の雰囲気もまるで違うし……。
多分、昔からある洞窟だとは思うんだけど」
「洞窟の中には入ったの?」
「ちょっと怖かったんだけど、ちゃんと入ってみたわ。
そしたら中は、神殿みたいになっていて……」
「神殿!」
内部がそんな感じなら、海底洞窟というよりも海底神殿だ。
そんなファンタジー感が溢れる代物、ますますもって興味が出てきてしまう。
「あんまり広くは無いんだけどね?
部屋数にしたら3部屋で、一番奥にはすぐに着いちゃうの」
「へー。何だかお宝でもありそうな感じだね」
「宝箱とか、金塊とかね~♪
……でも、残念ながらそういうのは無かったよ」
「むぅ、残念。……他には何かはあったの?」
「うん……。
多分あの洞窟、水竜の巫女様のお住まいだったと思うんだ……」
「……『水竜の巫女』?」
「伝承によれば、水竜様の眷属にあたる存在なの。
人魚族としてはかなり高位の存在になるんだけど、今はすでに絶えてしまっていて……」
「ふむふむ……」
「それで、一番奥の祭壇みたいな場所に、炎……みたいなものがあったの」
「へぇ……? 海の中に、炎……」
「実際には炎ってわけじゃないのよ?
見た目はその通りなんだけど、別に熱くないし……、そもそも触れなかったし」
「ふぅん……?
その神殿って、私も行けないかな? 行けるなら鑑定で調べられるんだけど」
「ちょっと無理じゃないかな……。
人間は、あまり水の中には潜っていられないでしょう?」
「確かに……。でも、気になるなぁ」
スキューバダイビングみたいな感じの装備品を作れば行けるかもしれないけど、それがあったとしても、私は未経験者。
さすがに海はそんなに甘くないだろうし、そもそもそんな状態で海の底に行くだなんて、かなり怖いものがある。
「お伽噺とかには、大きな泡の中に入って水中を移動する……みたいな話もあるし、グリゼルダ様に相談してみたら?
あの方、魔法に関しては深い知識を持っていらっしゃるでしょう?」
「それが良いかなぁ……。
グリゼルダはどこかに行っちゃってるけど、一週間で戻ってくるもんね」
「私たちも相談しようと思っていたし、大人しく待つことにしましょ。
――ところで、今日はこのあとゆっくりしていけるの?」
「午後は行くところがあるんだけど、それまでなら大丈夫!」
「そっか。それじゃ、他のみんなとも話してあげてよ。
あと、ちょっと錬金術のアイテムを譲ってくれると助かるなぁ」
「大丈夫だよー。
お金は要らないけど、海で獲れる素材なんかと交換できれば嬉しいかな」
「ふふ、ちゃんとしてるわね!
海の底には結構いろいろあるからね。これからはたくさん拾っておくことにするわ」
「人間じゃ、あんまり深くは潜れないからね。
素材の方が余ったら、買い取りとかでも大丈夫だよ」
「おー、私たちにも収入源が!
今まで『お金』って使ったことがなかったから、ちょっと使ってみたいんだよね!」
「買い物も楽しいよー。
……でも、街の方に行くときは私たちの誰かを呼んでね?
人魚さんは珍しいから……悪い人間がいたら、ね」
「ありがと。それじゃそのときは、遠慮しないで付き合ってもらうわ♪」
――いつの日か、人魚のみんなも気兼ねなく街を楽しんでもらいたいものだ。しかし今は、まだまだ無理な話だろう。
やっぱり人間の欲望……っていうのかな? 人魚たちを攫うような人間がいなければ問題ないんだけど、やっぱりどうしても……ね。
みんながそれぞれ、思いやりを持ってくれる世界になってくれれば――
……でもそんなの、現実的にはなかなか難しい……よね。
コメント
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**美月ゆめか🌸の感想** エミリアちゃんが人魚ちゃんたちとやりとりしてるの尊すぎん?🥺💕 海底に神殿とか洞窟とか…もう冒険心くすぐられすぎて無理! マイヤさんが「美女だなんて〜」って照れてるとこ、推せるわ〜✨ アイナちゃんの鑑定スキル使えないもどかしさも伝わってきたし、人魚たちがいつか街を楽しめる世界になってほしいなぁ…って思った⋆ あとグレーゴルさん照れてるだけなの可愛すぎwww 続きが気になる〜!🌸💫