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#『彼』の行く末
鐘寺 実昼
375
#オリキャラ
霰❄️
61
79
#短編
QuartoMew
105
圭一と優香が、春山剛蔵と会ってから数日後。麗奈と優香が済むマンション。 優香はボストンバッグに必要最低限の荷物を詰め込んでいた。
その光景を、壁にもたれて、腕組みしながら麗奈は見ていた。その目は冷ややかだった。
麗奈は優香に愚痴をこぼすように話しかける。
「パパは本当に優香に甘いわね……昔から。」
「…………。」
「あの後、私がパパに『優香と圭一さんが一緒になっていいの?』って聞いたら……。」
「…………。」
「『優香が決めたことだから、仕方ない。』だって……。」
「…………。」
「あんたはいつも可愛いがられてたわね……。無口で、愛想なしで……なのに、なぜかいつもあんたばかり。」
「…………。」
「そうやって返事しないし、聞いてるのか聞いてないのか分かんないし……。なのに、パパはいつも優香のために何かさせようとして……私はそのついで。」
「…………そう。」
「………気に入らない。」
「…………。」
「…………で、これからどうするつもり?」
「圭一のところに住む。その後、どこかに引っ越す予定。」
「…………優香。」
「…………じゃあね、麗奈。」
優香はボストンバッグを両手で持ち上げると、部屋を出ていった。
マンションの入口では、圭一が優香を迎えに来ていた。
「…………。」
窓辺から、麗奈は黙って二人を見つめていた。
花崎圭一。
麗奈を襲撃してきたホームレスから助けてくれた男。
しかし、麗奈が惚れた男は、実は仕組まれたものだった。
本当は自分と優香を殺すなり、あるいは社会的に抹殺するなりを画策していた男。
そんな虚構の男に惚れて……まんまと騙されていた自分が恥ずかしい。
そして、片割れである優香は、その虚構を見破っていた上に、花崎圭一と相思相愛になっている。
麗奈にとっては屈辱でしかなかった。
麗奈と優香の職場。
優香が圭一と共に暮らすようになってから、優香と麗奈は職場で顔を会わすだけの関係に変わっていた。
黙々と事務作業をする優香に、麗奈が話しかける。
「ねぇ、優香。あんたしばらくしたら引っ越すって言ってたけど、仕事はどうするの?」
「……月末で辞める。」
「その後は?」
「……圭一と、ここから離れた場所に引っ越す。」
「…………ふーん。」
それだけ聞くと麗奈は踵を返して仕事に戻る。
夕方。圭一と共に帰宅する優香。
二人が晩御飯等の準備をしている時だった。
インターホンが鳴る。
「…………麗奈?」
「開けて、優香。」
ドアを開けると、麗奈が立っていた。
今までと違い、麗奈はどこか楽しそうに見えた。
「…………なんの用?」
「私……決めたの!」
「何を?」
「私も、やっぱり晶……じゃなくて、圭一さんのことが好き!」
「…………!?」
麗奈からの予想外の発言に、さすがの優香も驚いた。
「だから、二人っきりにはさせない!」
二人の会話を聞きつけて、圭一も玄関にやって来る。
「あれ?なんで麗奈が?」
「圭一さん……私、あなたのこと諦めない!」
「え?」
「私もここで暮らす!引っ越すなら私もついていくから!」
「へ?……えぇっ?」
「私も……圭一さんのことが好きだから。」
「…………あ、ああ。」
麗奈の決意が揺るぎないことを、圭一も優香も悟っていた。
「…………とりあえず上がりなよ。」
圭一は麗奈をリビングに通すと、麗奈と話を始めた。
優香は圭一の側でワインを飲みながら座っている。
「…………麗奈、お前は九頭竜晶に惚れてたんだろ?花崎圭一にじゃない。」
「…………それはそれ、今は今よ!」
「…………麗奈。俺はお前を騙してたし……何なら殺すかヒドイことする可能性だってあった……なのに……。」
「…………だからよ。」
「…………え?」
「…………だから、逆に圭一さんがもっと好きになった!」
「はぁ?」
「…………。」
無表情だった優香の眉間が僅かに動く。
「圭一さんは確かにヒドイことしたし、私達を騙したわ……でも、父親の仇討ちのために一生懸命努力してきた。そして、実行しようとした。それだけ行動力あるなんて素敵!」
「…………。」
「パパは何度かお見合い進めてきたことあったけど、どいつもこいつも……圭一さんみたいに、ゼロから立ち上がれるような頼もしさなんかなかった。」
「それに、パパは優香に自分の跡を継がせるつもりだった。で、優香がダメなら弟……私のことなんかコネ作りのためにしか思ってなかったのよ。」
「…………やっぱり私、圭一さんが好き!このまま終わりたくない!」
麗奈が圭一に好意を寄せるのには、理由があった。
確かに花崎圭一という男の行動力や、極貧生活から立ち上がった逞しさに惚れたのも事実。
しかし、それだけではない。
一度は自分が惚れた男が、よりにもよって、一番負けたくない相手に取られることが許せなかった。
その対抗心が、恋心と混ざって、麗奈を突き動かしていた。
ようやく優香が口を開く。
「…………圭一。」
「優香……。」
「私はかまわない……。」
「……優香、本気か?」
「本気。ただし……。」
「ただし?」
「麗奈、私と圭一は愛し合ってる。あなたは振り向いてもらえない。それでもいいの?」
「……いいわよ!振り向かせてみせる!」
「毎日嫉妬するばかりになる……いいの?」
「わかってるわよ!いつか優香に代わってみせるから!」
「…………わかった。」
「…………おいおい、優香。」
優香は麗奈も圭一と同棲することを許した。
「そうと決まれば支度しなきゃ!じゃあ、また後でね!…………逃げないでよ?」
そう言うと、麗奈は自分のマンションに戻っていった。
「優香、お前一体何考えてんだ?」
問いただす圭一に、優香はキスをして落ち着かせる。
「…………圭一、女心わかってない。」
「……え?」
そう言うと、優香は家事を再開した。
圭一は優香の考えをまだ理解していなかった。
つづく
コメント
1件
みぃだよ🖤🥀 第11話読んだんだけど、麗奈の「諦めない」宣言、めっちゃ熱かった……! 最初は対抗心からだと思ったけど、ちゃんと圭一さんの行動力に惹かれてる部分もあるんだね。でも優香が「かまわない」って許可したのも気になる……女心分かってないってどういうこと? 次が気になる展開だよ😶🌫️