テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#『彼』の行く末
鐘寺 実昼
375
#オリキャラ
霰❄️
61
79
#短編
QuartoMew
105
結局、麗奈も優香と共に退職し、圭一と優香と三人で暮らすことになった。 圭一はしばらくしてから、新しい転職先を見つけた。意外だったのは、優香も同じ会社に採用され、二人揃って転職したことだった。
麗奈は気に入った就職先が見つからず、専業主婦状態になっていた。
麗奈は色々と家事をこなし、圭一のために料理の練習を重ねていた。
そして、転職に合わせて三人は今まで住んでいた街を離れた。
新しい生活が始まって1ヶ月ほど経とうとしていた。
圭一と優香は入籍こそまだだったが、若い二人は毎晩のように情事を重ねていた。
一方の麗奈は、圭一を何かにつけて誘惑していた。
優香が生理の日や、何かしらの理由で圭一と二人っきりになった時に、肉体関係を迫る麗奈だったが、圭一は頑なに断っていた。
そんなある日、仕事から帰宅した圭一と優香の前に、一人の男が現れた。
三人が住むマンションの入り口の前で、見慣れない高級車が一台停まっていた。
そして、その高級車の前に黒いスーツに身を包んだ初老の男が立っていた。
その男を見た圭一は、何か思い出した顔をしたと思うと、すぐに怪訝な表情になった。
「……あんたは……確か……。」
「…………。」
「お久しぶりでございます、圭一様。」
「圭一、この人は?」
「……昔、花崎本家への集まりで何度か見かけたことがある。」
「……はい、私は花崎家当主・花崎厳の執事を務めさせていただいております、権田源一郎と申します。初めてお目にかかります、春山優香様。」
「…………圭一。」
「とりあえず、上がってもらおう……。」
権田を部屋に上げる圭一。
「…………おかえりなさい…あれ?そちらの方は?」
「春山麗奈様ですね?私は花崎家当主・花崎厳様の執事を務めさせていただいております、権田源一郎と申します。お忙しいところ失礼いたします。」
優香と麗奈を見間違えないあたり、どうやら花崎家は圭一達をずっと前からどこかで見張っていたようだ。
とりあえず、権田にお茶を出す麗奈。
重苦しい雰囲気が三人に漂う。
「……で、本家の執事が今さら俺に何の用だ?」
「はい、当主より言伝を仰せつかりました。」
「親父が破産してから、花崎家は本家も……他の分家のやつらも、俺と母さんのことを見捨てていたのにか?」
「はい、そのことについては当主より情けをかけぬように厳命されておりました故に……。圭一様のお父上・郁夫様がお亡くなりになったことは、痛ましゅうございます。」
「で?今さら十数年遅れのお見舞いか?」
「いえ、当主より仰せつかりましたのは、当主より直々に、今後のことについて話したいとのことで。私は圭一様をお迎えに上がった次第でございます。」
「はぁ……今後のこと?」
「はい、当主は圭一様のこの度の活躍を大変高く評価されておられます。大変御苦労されたところから、さらには春山家のご令嬢お二人を娶られたことは、素晴らしいとのことです。」
「…………くだらない。」
「当主は成長された圭一様と、春山のご令嬢お二方にも会いたいと申しております。過去のことでお怒りもごもっともですが、何とぞ当主とお会いください。」
「…………。」
「圭一さん、別にいいじゃないの。何ならチャンスかもしれないし……。」
「…………。」
「…………圭一、行ってみよう。」
「優香………わかった。会うだけだがな。」
「ありがとうございます、圭一様。すぐに手配しますので、明日の朝、出発出来ますよう、ご支度願います。」
「は?明日?」
「ええっ?急すぎよ!」
「…………。」
「へっ、花崎本家のご当主様だけに、わがまま言いたい放題だな。特に分家の人間なんか奴隷のように見下してやがる……。」
一方的で急な話に、圭一は悪態をついた。
翌日早朝、圭一達は権田の運転する車に乗り、山梨県の花崎本家へと向かうことになった。
2時間ほど車に乗った後、山梨県内某所の花崎本家邸宅に着く。
「え!?何これ……映画みたい!」
社長令嬢として、一般人より裕福な家庭に育った麗奈が、思わず声を漏らす。
何坪……というか、一般人の家何軒分あるのかわからない広さの邸宅。
何人もの女中や使用人達が並んで出迎えてきた。
見事な日本庭園に敷かれた石畳の上を歩き、三人は控えの間に通される。
控えの間ですら、ホテルのスイートルームぐらいはあるだろうか。
しばらくすると、朝食が運ばれてきた。
朝食というには豪華すぎる品々。
極貧の生活を経験してきた圭一には、嫌悪感すら抱くほどのものであった。
用意された朝食を美味しそうに食べる麗奈。
「ハンバーガーでよかった。」と、つぶやく優香。
朝食を食べ終わり、しばらくしてから権田が現れる。
「圭一様、お時間でございます。どうぞこちらへ。」
堅牢な木で造られた廊下をしばらく歩くと、これまた旅館の大宴会場のような広間に通される。
奥の上座に老人が一人、豪華な椅子に鎮座していた。
用意された座布団三つ。真ん中に座る圭一と、圭一を挟むように優香、麗奈が座る。
「…………。」
上座の椅子に鎮座している男こそ、花崎当主・花崎厳であった。
花崎厳はシワだらけの顔から、眼光鋭い眼を覗かせた。
「わ、怖……。」
その迫力に、麗奈か思わず言葉をもらす。
「…………。」
優香ですら、心なしか緊張しているようだった。
「…………よう来たの、圭一よ。あの郁夫の息子がよう生きておったわ。」
「…………ケッ。」
圭一は誰が見ても明らかな表情をしていた。
「傍らに侍らせておるのが、春山剛蔵の娘二人か……なるほど、上玉じゃな……。」
花崎厳は麗奈と優香をしばし観察する。
「…………。」
無表情でいる優香を見て、花崎厳は一瞬眉をひそめた。
「……圭一よ、よくぞ地べたから這い上がり、そこの娘二人を自分のものにした。わしは少なからず評価しておるぞ。」
「……お褒めいただき光栄です。父が春山剛蔵に敗れて破産した時、あんたらから見捨ていただいたおかげで、こんなにいい女を、二人も手に入れましたよ。」
「…………生意気な口を聞くようになったの……郁夫の小倅。」
「まぁ、聞け。わしと、分家の家長達とで話し合いをした。ある条件を満たせば、お前を分家の者として再び迎え入れることにした。」
「そうですか……。」
「その条件じゃが……まず跡継ぎじゃ。ワシが用意したご令嬢達、いずれかと正式に結婚せい!」
「はぁ……?」
「権田…。」
「はっ!」
厳が権田の名を口にすると、三人の女が入ってきた。
いずれも、優香と麗奈に勝るとも劣らずの美女。
服の質、着こなし、佇まいからして、いわゆる名家出身の娘達であろう。
「どうじゃ、圭一よ?いずれも花崎家に相応しい、ご令嬢ばかりじゃ……。お前の花嫁候補となる。この中から妻にしたい者を選ぶのじゃ。そこの春日山の娘二人は愛人とすればよい。」
「…………断る。」
「何?」
「俺には優香がいる。」
圭一の言葉を聞いて、麗奈は不満そうに圭一を見る。優香は相変わらずの無表情ではあったが、それは圭一を信頼しているに他ならないからだろう。
「圭一よ……お前は花崎の一族に、春日山の血を入れると言うのか?」
「それがなにか?」
「春日山は花崎と何百年と対立してきた一家よ。それを承知で言っておるのか?」
「無論。」
「貴様……。」
すると、優香が突如口を開く。
「ご当主様……圭一が私を妻にすることは、花崎家の恥とでも言わんばかりのことをおっしゃいますが……春日山家を花崎家に取り込む口実にはなりませんか?」
「……何だと?この小娘が……。」
優香の発言に、厳の皺だらけの顔、眉間にさらに皺が寄る。
「目先の伝統やプライドにとらわれて、春日山家を取り込む口実……後の利益を得る機会を、みすみす逃しますか?……花崎家はずいぶんと保守的でございますね。」
「優香!」
「黙れっ!春日山の小娘ごときがっ!」
一瞬、激昂する花崎家厳。
しかし、左手に持った扇子でしばし顔を扇いだと思うと……。
「がははははっ!」
花崎厳は豪快に笑いはじめた。
「春日山家の端くれとはいえ、なかなか聡明な女じゃのぅ……。」
「圭一よ、よい女を手に入れたのぅ…。」
「……?」
「よかろう。合格じゃ!……圭一よ、先ほどの条件は訂正じゃ。」
「…はぁ?」
厳の言い出したことに困惑する圭一。
「そこの二人、どちらかと正式に結婚せい!……そして、二人と子供を作れ!二人とも圭一の子を産ませよ!さすれば、お前を分家の者として再び迎え入れよう。」
「…………。」
優香は変わらず無表情だが、花崎厳が企んでいることが何かを理解した。
優香が発言したとおり、優香と麗奈、この二人が圭一の子を産めば、その子供達は花崎家と春日山家、両家の橋渡し的な役割を担うことになる。
場合によっては、春日山家の勢力の一部を、花崎家に取り込むことができる。
花崎厳の目的はそこだろう……。
「期限は今から3年以内。それまでに、そこの娘二人に子供が出来ぬ場合は、この話はなかったと思え。話は以上じゃ。」
厳が話終えると、権田に促され、三人は広間を後にした。
「…………。」
帰りの車の中、圭一は考えていた。この後をどうしていくべきか……。
コメント
1件
わあ〜!!第12話、一気に読み終わったよ😭💕 花崎本家の登場で物語が大きく動き出した感じがするね!圭一が優香を選んで「断る」って言ったところ、マジで胸熱だった…🔥💞 優香の冷静な切り返しもカッコよすぎて痺れたよ〜! 麗奈の不満顔も気になるし、3年以内に子供って条件もすごいプレッシャー… 続きどうなるんだろう!?次回も楽しみにしてるよ🌸✨