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私の家は商店街にあるラーメン屋〝麺と面〟一階が母さんの働くラーメン屋で、二階に寝室と風呂場がある。私は汗の匂いと食欲そそるラーメンの脂っこさが混じるあの空間が嫌いだ。一階にトイレがあるから毎回下りて手洗いするけど、毎回鼻をつまむようにしている。その姿を見るたび母さんは「この匂い好きなんだけどなぁ…」と悲しげに言い残しラーメンをお客さんのもとに運ぶ。母さんの好きな匂いを同じように好きになれない私はおかしいのかもしれない…毎度考えてモヤモヤするが、やっぱり嫌いなのは嫌いだ。
だから私は二階で汗びっしょりの顔にうちわで風を送っていた。一昨日にやっと夏止みが始まって、よっしゃあ学校に行かなくていい!とガッツポーズした私はクーラーが故障という危機のせいで汗だくの熱い灼熱地獄に落ちいった。今日は三五度を超えるものすごい暑さ、そんな私はクーラのない二階に取り残されている。母さんはクーラーのある一階で営業中…
あ!一階にはクーラがあるんだった。重たい体を起こし、うちわを置きっぱなしにして寝室を出た。廊下をフラフラ歩きなどを曲がった私は鼻をつまみ覚悟を決めて一階への階段を下りた。フワッと冷たいクーラーの風を感じ、私は鼻をつまんだまま壁を覗いた。
私は驚いた。母さんは楽しそうに、フードを被った怪しい男と何かを話していた。背を向けて話す母さんを呆然と見つめていたら、カウンター先で横にズラッと並ぶパイプ椅子その中の一つに座るフード男は私に気づき、私の顔をジッと見つめた。なんだこの人…私は目を合わさないよう顔を背け、母さんに「この人…誰?」と聞いた。
「あぁ、〝夜色〟」母さんが私の苗字を呟いたらフード男が、ピクリとかすかに反応した。ますます怪しい… 母さんは機嫌よく私に説明してくれた。
「私ねぇ、夜色がいやがると思って隠してたけど、アルバイト募集中ポスターを昨日徹夜でつくったんだ〜」私は「えっ、母さん友達いっぱいいるじゃん。今まで友達呼んで手伝ってもらってたじゃん、急になんで募集?」と震えて言った。母さんは焦って「ずぅーっとお世話になるのは悪いしさぁ、迷惑かけるでしょ?だから募集した方がいいかなって」「また勝手に…」「大丈夫大丈夫!夜色が男の人と話すの苦手なの知ってるから、なんとかするよ!」
苦手じゃなくて…私は!けれど、母さんに〝黒歴史〟を打ち明けてない私も私だ。今さら言っても無駄。私は唇を噛んで母さんの明るい笑顔を見つめた。
母さんは勇気があり好奇心旺盛。悪くとらえるとやりたい事を見つけると周りが見えなくなり立ち止まれない。そして騙されやすい(怪しい宗教団体の誘いがきっかけで参加しようとしたり、九千円もするただの消しゴムが魔法のように消しても消しても無くならない!と紹介され買おうとしたり)
子供のよう幼い中身を知っている十四才の私は三十歳の頼りない母さんにホッと安心する事ができないのだ。母さんは目を純粋な子供のようキラキラ輝かせ鼻穴を広げて言った。
「それで今日!完成したポスターを店の前に貼ってみたらさ、この人が働きたいって来てくれたのよ!だから店閉めてお話してた」
母さんはカウンターに肘をついて力強く男の手を握った。母さんの若々しい白い指と絡まった青白くてガリガリな男の指。 母さんは「名前教えて?」とか「好物は?嫌いなものは?」とグイグイ聞き、男は低い声で「…根崎」と言って、 「好物はやっぱラーメン。嫌いなものは」と間を溜めて私をギロリと睨む、私と目が合った。血走った目が赤ワイン色に染まる長髪の隙間から覗いていた。「子供かなぁ…」と根崎はボソッと呟いた。
「…っ」私の心臓がドクンドクン音を立てて血の気が引いていく。根崎、根崎は…私の〝黒歴史〟の重要人物。根崎は私が中学1年生の時、国語担当の教師として学校にいた。健康体で地毛のアフロ頭。いつも陽気で優しかった。けれど…彼は生徒や同じ教師からも気持ち悪がられている嫌われ者。理由は一つ、皆から見て根崎の顔は不細工だったから。皆からそっけない態度を取られ、元気を少しづつなくす根崎に私は「相談のりましょうか?」と言ってしまった。話すたび仲良くなり、根崎がドMなのを知って私は渋々遊びに付き合ったり、それから私達は〝禁断〟なのか見当がつかないおかしな関係になった。私とドMの根崎の間に、不思議と恋愛感情はなかった。だからこそ私は試してみたくなり、二人きりの時、私は根崎の分厚い唇にキスをしてしまった。それから根崎は自ら教師をやめた。罪悪感でいっぱいだったのに、二年経過してすっかり忘れかけた私に… 住所を突き止め、やっとここまでやってきたのだろう。怖い…
母さんが青ざめた私の顔と根崎の顔を交互にチラチラ見て気まずそうにしていたら根崎がニヤッと笑みを浮かべ「冗談ですよ、じょ・う・だ・ん!クックック…」と肩を震わして笑った。母さんは「なぁんだ!冗談ですか!よかった〜」と言い一緒に笑った。不気味で二人の笑いから逃れたくて「お手洗いに…」と言いトイレに駆け込んだ。
お客さんも使うため、男子トイレと女子トイレに別れていた。私は胸が苦しいけど男子トイレに入った。洗面台の蛇口をひねりバシャバシャ顔を水で洗い、ポケットからハンカチを取り出し顔を拭いた。鏡には赤いニキビがポツポツ顔中にあって、黒髪の長髪が肩まで垂れている、おかしな男の子がいた。心は女の子なのに…
〝トランスジェンダー〟の 私は誰にも言ってない心の性別を根崎に打ち明けた。根崎は受け入れてくれ、しかも私の名前をちゃん付けして呼んで女の子扱いしてくれた。だから私はとても嬉しくて、トランスジェンダーの私とドMで嫌われ者の根崎との関係性を周りにバラしたら私は二度と女の子扱いされることはない…私は根崎との関係を今も、誰にも話していない。
はぁ…と疲れてため息をつくと後ろから「夜色ちゃん」と声がした。
逃げる隙もなく、私の手首を力強く掴み、床に倒れこみ、私は床に押し付けられた。「痛っ…」
根崎は「お願いだ…ずっっと我慢してきたんだ!」と絞り出した声を出し、私の両足の隙間から顔を出して涙をポロポロこぼして息をハァハァ出して興奮していた。根崎は言う。
「あの時みたいに、冷たい目で、ビンタしてく…」「やめてください!」
足で思いっきり根崎の顔を踏んづけ、私はトイレを抜け出した。
「なんか騒いでなかった?」
母さんがなぜかアイスを食べながら呑気に言うので思わず腹が立ち「なんでもない」と言った。
「うわっ根崎さん!どうしました!?
」母さんが驚くので後ろを見ると、鼻血を垂らした根崎が白目で立っていた。 心臓が……止まりそうだった。
ーーつづき書くかは気分次第
誤字あったらごめんなさいーー