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僕達はショッピングモール内に入った。
ショッピングモール内には仲睦まじそうな夫婦、楽しそうな親子、手を繋ぐカップルがいた。
僕は、その人たちを見て羨ましく思う。
唯月さんは、僕の意図を読み取ったかのように僕の手を握った。
そして、満面の笑みで言う。
「どこに行こうか?」
僕の心はフッと軽くなる。
唯月さんの笑顔を見ると、嫉妬や疲れが全て吹き飛ばせそうだ。
そして、僕も唯月さんに負けない笑顔で言う。
「着いてきてください!」
僕は唯月さんの手をしっかり握りながら、目的地に向かった。
「着きましたよ」
「ネクタイピンを買うのか?」
「はい」
そう、ここはネクタイピンの専門店だ。
幅広いデザインの物がある。
「陽向はスーツを着ないのになんでなんだ?」
「僕のじゃないです」
「ん?誰のなんだ?」
唯月さんの声は低くなる。
その声には圧が感じられる。
でも、僕はその圧に押されることはない、なぜなら、
「唯月さんのですよ」
「俺の?」
「はい」
僕は唯月さんに返事しながら、半ば無理やり店内に連れて行った。
「唯月さん、好きなの選んでください」
「まさか、払うのか?」
「いつものお礼です」
「いやいや、」
唯月さんはなかなか譲ってくれない、
僕はあとひと押ししようとした時、
「いらっしゃいませ」
綺麗なネクタイピンを付けた接客従業員さんが来た。
「どのようなものをお探しですか?」
「唯月さん、どんなのがいいんですか?」
唯月さんはこれ以上どうしようもないと思ったのだろう、
塞がっていた口が開く。
「控えめの物がいいですね」
「そうですね、そうしますと、」
接客従業員さんは歩き出した。
僕達はその後ろを着いて行く。
「こちらのような物になりますね」
そこには控えめで、でも存在感のある綺麗なネクタイピンが並んでいた。
「では、ごゆっくりお過ごし下さい」
「はい、ありがとうございます」
僕は、並んでいるピンを見る。
でも、これだと思うものはない。
唯月さんもきっと同じことを考えているのだろう。
「唯月さん、別の場所も見ましょうか」
「ああ、本当に大丈夫なのか?」
唯月さんは案外心配性みたいだ、
こういう唯月さんを見れて少し嬉しい、
「僕からのプレゼントです、受け取ってください」
僕は唯月さんの目をしっかり見て言う。
「ハハッ、分かった、ありがとう」
唯月さんはいつもの余裕の笑みで僕に返事をした。
そして、僕達は店全体を回った。
でも、どれもピンと来るものはなく、諦めようとしていた時、
唯月さんは奥に置いてあるピンの前で止まった。
僕も気になり、そのピンを見る。
そのには、翡翠色の宝石が埋め込まれたネクタイピンが置いてあった。
もしかしたら、
僕はそう思い、唯月さんに質問する。
「唯月さんの誕生日っていつですか?」
「5月23日だよ」
僕は唯月さんの答えを聞いた瞬間、このピンは唯月さんのためのものだと言わんばかりに、光って見えた。
「唯月さん、これにしましょう」
「いや、」
僕は唯月さんの話に耳を澄ますことなく、このネクタイピンを買おうとした。
「本当にいいのか?」
「何回、聞くんですか」
僕はネクタイピンを買い、唯月さんにその場でプレゼントをした。
それから唯月さんはこの調子だ。
「ほら、夕飯の買い物をしに行きますよ」
「分かったよ」
そして、僕達は1階にあるスーパーマーケットに向かって歩き出した。
もちろん、しっかり手を繋いで、
前から女性が歩いてきた。
僕達のことなんて見えないように隣にいる人と歩いている。
その女性は僕達の方を見た。
その途端、リップが綺麗に塗られた口が開かれる。
「唯月、さん?」
「華恋さん、なんでここに?」