コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
サイド キノ
「何か質問有る人、いる?」
ルネがそう言ってあたりを見る。
『…………』
誰も何も言わない。いや、言えない。
だって、そうだろ?今まで当たり前だったことがいきなり全部間違いでしたなんて、そんな理不尽なこと、どう認めればいいか分かんねえよ。
「……なんで、直ぐに話してくれなかったんだ?」
ルネが兄ちゃんのことを思って、話さなかったってルネは言った。だけど、それは本当にルネの本心か?
俺らが絶望して、ダイチ兄の後を追うなんて最悪な想定を立てたんじゃないのか?
「俺にとって、兄ちゃんは兄ちゃんなんだよ!たとえ、兄ちゃんが俺のせいで自殺したって分かっても、生きていけるくらいの力はある!馬鹿にすんじゃねぇ!!」
そんなにも、俺らのことを信じていなかったのかよ?!
そんな想いが胸から突き上がって、俺はルネに掴みかかった。
誰も、タエも、マオも、それを止めなかった。止めてはくれなかった。
心の底から分からなかったんだ。話さないことがルネなりの不器用な優しさだってことに。
ルネはただ、歪で、歪んだ顔で笑うだけ。
「ルネは、俺ら自身じゃなくて、俺の中の、兄ちゃんの面影としてしか、見ていなかったんだな」
「…………ッ、」
息を呑んだのはユメだった。“自分自身を見てくれない”。それがどれだけ辛いか知っているから。
「……少し、外に出ていますわ」
「……ユズも」
「お、オレも、頭冷やしてきます!」
小学生の三人が、外に出る。この空気に耐えられなくなったのか、それとも気を利かせたのか分からなかった。
「ちょ、三人とも……」
「僕が見てますから、タエさんはここにいてください。……きっちり話、つけてください」
トキが後を追おうとしたタエを止めて出て行った。それを見計らってルネが口を開く。
「ダイチに執着してるのはキノ……ううん、“ダイキ”の方でしょ?ねぇ、“団長”?」
その言葉は鋭利な刃(やいば)となって俺の心を貫いた。
『兄ちゃんの意志を継ぐ』
『俺が団長として、兄ちゃんの代わりになる』
『名字で読んで欲しい』
ルネに言った言葉は、俺自身のことだった。
怒り、もどかしさ、悔しさ……いろいろな感情が制御出来ずにごちゃ混ぜになる。
そして、それは一粒の言葉として、口からこぼれ落ちた。
「……ょ」
「出てけよ!ルネなんてもう仲間じゃねぇ!!」