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サイド キノ


「何か質問有る人、いる?」

ルネがそう言ってあたりを見る。

『…………』

誰も何も言わない。いや、言えない。

だって、そうだろ?今まで当たり前だったことがいきなり全部間違いでしたなんて、そんな理不尽なこと、どう認めればいいか分かんねえよ。

「……なんで、直ぐに話してくれなかったんだ?」

ルネが兄ちゃんのことを思って、話さなかったってルネは言った。だけど、それは本当にルネの本心か?

俺らが絶望して、ダイチ兄の後を追うなんて最悪な想定を立てたんじゃないのか?

「俺にとって、兄ちゃんは兄ちゃんなんだよ!たとえ、兄ちゃんが俺のせいで自殺したって分かっても、生きていけるくらいの力はある!馬鹿にすんじゃねぇ!!」

そんなにも、俺らのことを信じていなかったのかよ?!

そんな想いが胸から突き上がって、俺はルネに掴みかかった。

誰も、タエも、マオも、それを止めなかった。止めてはくれなかった。

心の底から分からなかったんだ。話さないことがルネなりの不器用な優しさだってことに。

ルネはただ、歪で、歪んだ顔で笑うだけ。

「ルネは、俺ら自身じゃなくて、俺の中の、兄ちゃんの面影としてしか、見ていなかったんだな」

「…………ッ、」

息を呑んだのはユメだった。“自分自身を見てくれない”。それがどれだけ辛いか知っているから。

「……少し、外に出ていますわ」

「……ユズも」

「お、オレも、頭冷やしてきます!」

小学生の三人が、外に出る。この空気に耐えられなくなったのか、それとも気を利かせたのか分からなかった。

「ちょ、三人とも……」

「僕が見てますから、タエさんはここにいてください。……きっちり話、つけてください」

トキが後を追おうとしたタエを止めて出て行った。それを見計らってルネが口を開く。

「ダイチに執着してるのはキノ……ううん、“ダイキ”の方でしょ?ねぇ、“団長”?」

その言葉は鋭利な刃(やいば)となって俺の心を貫いた。

『兄ちゃんの意志を継ぐ』

『俺が団長として、兄ちゃんの代わりになる』

『名字で読んで欲しい』

ルネに言った言葉は、俺自身のことだった。

怒り、もどかしさ、悔しさ……いろいろな感情が制御出来ずにごちゃ混ぜになる。

そして、それは一粒の言葉として、口からこぼれ落ちた。

「……ょ」


「出てけよ!ルネなんてもう仲間じゃねぇ!!」

モンダイジ団 死別編

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