テラーノベル
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放送「下校時間を過ぎています。残っている生徒は速やかに退室してください」
図書委員の無機質なアナウンスが響き、俺と一颯は弾かれたように肩を離した。
なんだか悪いことをしていたような気分になって、二人で顔を見合わせて小さく吹き出す。
鞄を肩にかけ、薄暗くなった校舎を出ると、外はすっかり色の夕日に包まれていた。
校門までの坂道を、一颯と並んで歩く。
一颯「…たむ、手、繋いでもいい?」
ふいに一颯が、歩幅を合わせながら優しく聞いてきた。
いつものクラスの連中がいたら
たむ「おいおい、なんだよそれ!」
っておちゃらけられるのに、今は一颯のまっすぐな瞳が眩しくて、妙に緊張してしまう。
たむ「え、あー…誰かに見られたら、俺恥ずかしくて死んじゃうか も」
わざと大袈裟に身振り手振りを交えてお調子者っぽく言うと、一颯は
「もう、すぐそうやって誤魔化すんだから」
と苦笑いした。
でも、一颯は諦めずに、俺のブレザーの袖口をきゅっと指先で摘んでくる。
一颯「じゃあ、これで我慢する。これなら誰も見とらんよ」
たむ「一颯、そういうところほんとずるい」
袖を引かれる微かな感触が、なんだか図書室のイヤホンよりも心臓に響く。
一颯のこういう、押し付けがましくないけれど、絶対に引かない優しい強さに、俺はいつも負けてしまう。
一颯「たむはさ、明日も教室でみんなと面白そうに話すん?」
たむ「え?まあ、そりゃあな。俺、クラスのムードメーカーだし?」
ふんぞり返ってみせると、一頭は少しだけ寂しそうに目を細めて、俺の袖を握る手にきゅっと力を込めた。
一颯「…ちょっとだけ、妬けるわ」
たむ「ぶっ…!」
予想外の直球に、俺は盛大にむせた。
一颯「みんなと楽しそうにしとるたむを見るのも好きだけど、俺だけのたむもおってほしいって、さっきの図書室で欲が出ちゃった」
一颯は恥ずかしそうにそっぽを向きながら、でも、俺の袖を絶対に離さない。
夕日のせいで赤いのか、照れているから赤いのか分からない一颯の横顔を見ていたら、俺の胸の奥がぎゅうっと甘酸っぱく締め付けられた。
お調子者の俺の仮面を、一颯は簡単に剥ぎ取ってしまう。
たむ「…じゃあさ」
俺は立ち止まり、一颯の手を袖口から優しく外した。
一颯が驚いたようにこちらを見た瞬間、その大きな手のひらに、俺の指を滑り込ませてぎゅっと握りしめる。
たむ「手、繋ぐくらいなら誰も見てないし、いいよ」
今度は俺のほうが顔を真っ赤にして、一颯を引っ張るようにして歩き出した。
後ろから、一颯が
「ふふ、ありがとう」
と、世界で一番優しそうな声で笑うのが聞こえた。
コメント
1件
読み終えたよ〜!第2話、めちゃくちゃ甘酸っぱかったわ…! 図書室でイヤホン片方貸してたシーンから続いて、夕日の校門坂道での袖掴み→手繋ぎ直撃は反則級だよ。一颯の「欲が出ちゃった」がストレートすぎてこっちまで照れる。たむくんのお調子者仮面が剥がれる瞬間の描写がすごく丁寧で、2人の距離がちょっとずつ縮まる感じがたまらんかった。続き読みたい!
腐った柘榴
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