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【米将軍side】
最近、雨栗の様子がおかしい。
体調が悪そうとか、辛いことを隠してるとか、そういうんじゃなく。
言葉の通り【様子がおかしい】のだ。
妙にそわそわしては、はぁとため息をついてみたり。
携帯を見てニヤニヤとしたかと思えば、俺とばっちり目が合って慌ててスマホを隠したりとか。
……もしかして。
『もし、ルザクくん』
「ん?なぁにこめしょー」
『もしかして、雨栗好きなやつできた?』
「……フフッ」
思わず笑ってしまったとばかりにごめんごめんと謝るルザクくんに、別に謝る必要あったか?
なんて思いながらも俺の推測が間違ってなかったことを悟る。
「……雨栗さんってさ、分かりやすいよね」
なおも笑いがこらえきれていないのか、ルザクくんの瞳にはうっすら涙の膜が張っていた。
『そんな笑う……?……まぁでも、確かにあれは誰でも気づくわな』
数日前から始まった百面相は、見ている分には面白いが、如何せん仕事にも影響し始めていて。
俺が近づくたび、ビクリと肩を震わせてササッと携帯を隠すだけならまだいいのだが、動画上でのいつもの軽口にだんだんキレがなくなってきたのだ。
『この前なんかさ、そんなんだからモテねぇんだよって軽く言っただけなのに「そうか……私には魅力がないのか……」っつってガチ凹みしたりとかよ〜……まじで調子狂うわ……』
その後宥めるのに苦労したな〜などと考えていれば、隣から復活したルザクくんが俺に笑いかける。
「こめしょーは雨栗さんのこと、よく見てるんだね」
そういえば、僕呼ばれてたんだった。先いくね。
そう言い残してご機嫌に去っていく後ろ姿をぽかんと眺める。
ふと雨栗の声が聞こえてそちらを向けば、コラボ相手の方と楽しそうに話している姿が見えて、チクリと何かが痛んだ。
『……?』
ただ何となく、その姿を見ていたくなくて携帯に目を向ける。
特に面白いニュースもなく、目は画面の上を滑るばかり。
(んだよ、これ……)
訳の分からない苛立ちに頭を掻き毟る。
少し落ち着こうと一度深呼吸して外に出ようとした時、後ろから聞き慣れた声で呼ばれ足を止める。
「こめしょー、大丈夫?」
さっきの行動を不審に思ったのか、雨栗が心配そうにこちらを見る。
その表情に、さっきの苛立ちは嘘のように消え、代わりに先程の痛みが何だったのかを知ることになってしまった。
『ん、だいじょぶ、今解決したとこ』
解決どころか更なる難事件へ突入してしまった訳だが、悩んだところでどうにかなる問題ではないと言い聞かせ、とりあえず気づいてしまった気持ちには一旦蓋をすることにした。