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中学3年生の冬休みも終わり、中高一貫の晶子の学校では、高等部への進級試験が行われた。
入学試験とは違って、内部進学の適性を形式的に審査するための実力テストのような物で、よほどの問題がない限り不合格になる事はない。
晶子の成績はおおむね学年で真ん中あたりだったため、問題なく高等部への進級が認められた。まず大丈夫だろうと聞かされていた晶子だったが、それでもハラハラする気分の日を送っていた。
その年には、晶子の学年から高等部への内部進学を不可とされた生徒は一人もいなかった。
対照的に、カンナは彼女の人生で最大のピンチを迎えていた。カンナは普通の公立中学の生徒だから、高校に進学するためには当然入学試験に合格しなければならない。
カンナの日ごろの言動では、推薦入学などは望むべくもなく、家庭の経済状況では私立高校への進学は選択肢にはなり得ない。
何がなんでも都立の高校に、一般の入学試験に合格して進学するしかないのだが、最大の問題はカンナのこれまでの学力試験の結果だった。
というわけで、2月下旬の入試に備えて、晶子がカンナの勉強を手伝う事になり、カンナは晶子の家にやって来ていた。
カンナのこれまでの定期試験の点数の一覧表を見た晶子は、困惑を作り笑いで隠しながらカンナに訊いた。
「ええと、カンナ、念のために訊くんだけど、これって100点満点のテストだよね?」
カンナは晶子の部屋のテーブルの上に顔を乗せて、絶望の口調で答える。
「ああ、そうだよ」
「英語が一桁って、ちょっとまずいかも」
「それなんだよな。あたい、英語のテスト壊滅的にだめなんだ」
「まあ都立もレベルはいろいろだって聞いてるし。カンナはどこ受けるの?」
「ここ」
カンナは受験生用のパンフレットを取り出して、あるページを指差した。それを見た晶子は、アレッという顔になった。
「定時制? カンナ、定時制に行くの?」
「ああ、夜間の定時制な。昼間は何かの仕事で稼いで夕方から高校行くんだ。
あたいの家は金ないからな」
「ええと、中学の先生はなんて言ってるの? 合格できそうかどうか」
「他の教科は何とかなりそうだけど、英語がこれじゃ危ないって言われた」
「そうか。じゃあカンナ、試験の日まで毎日うちにおいでよ。あたしは英語苦手じゃないから、教えてあげる」
「ほんとか! 頼むよ晶子、もう晶子だけが最後の希望だ!」
こうしてカンナはそれから1か月ほど、毎日晶子の家に通う事になった。
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グリルタ
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コメント
1件
晶子はすんなり高等部進学、カンナは英語一桁からの定時制受験。対照的だけど、二人とも自分の道をちゃんと選んで進んでいて、いい距離感だなと思いました。カンナの「晶子だけが最後の希望」って台詞に、彼女の素の焦りと信頼が滲んでて好きです。晶子が英語を教える流れも自然で、これからの日常が楽しみになるエピソードでした。