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「大丈夫か」俺は、城壁の頂上から大声をあげた。
プナールは、壁の前で倒れた。前のめりに、うつ伏せている。
そそり立つ壁の前に立つと、高さに圧倒されてめまいがする。そのままじっとして動かないでいればいるほど、頭で考えれば考えるほど、乗り越えることなど到底不可能なことに思えてくる。俺にも経験がある。
しばらくして彼女は上体を起こし、脱げかけた靴を履きなおした。そして口元に両手をやった。
「ちょっと驚いただけ」
「いいかい。一気に登れる壁なんてない。レンガひとつ、岩ひとつが壁を作っていることを忘れないように」下まで届くよう、腹から声を出す。
レンガの厚みは二センチほどだ。
「ひとつひとつ掴めばいいのね」
彼女はにっこり笑って立ちあがり、膝小僧についた土を払った。