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ー起ー
サッと砂浜を駆ける足音が複数ある。それらを覆う 黒い影が、アレはなんなのだろうか。そして、何かが落ち何かが連れて行かれてしまった
1人の少年が砂浜に体育座りをし、遠くを眺めている。“ 無”彼からはそれしか感じられない。
女性用のネグリジェを身にまといそれに似合わない坊主頭のような髪型、そして黄緑色の髪色である。
「….。」
やはりなにも…いや遠くからこちらに向かって一艘の木の小舟が見えた。
少年は何かを感じ取ったのか否や、木の茂みに向かってなにかを取りに走り、その舟へ乗ったのである。一瞬の事であった。
”liar vessel”(嘘つき船)それがこの船の名前である。貿易船でもあるが、国の船が少ないこともあり、国同士の国交をになう役割も持たされている。この船は他の船とは異なった部分が多く、造りがまるで違う。城をそのまま海に投入れたような造りになっているが海を難なく進んでいけるのだ。
そして一番この船の特徴として挙げられるのが、“異名で過ごすこと”である。
この船で働き始める際に必ず本名とは異なった簡単な異名を名付けられるのだ。
その理由としては、船長曰く身分を明かしたくない人でも働けるように…とのことだ。
船長の名を“whale”(クジラ)-ホエールという
男性には珍しいような女性並の銀色に光るウェーブかかった長髪を持っている。歳は50に近いように見え顔に綺麗に皺が刻まれている。目は細く見透かされているようだ。
そんな男が今早朝の船を巡回している。細い左手で煙草をもち、右にはロープ。
何かいやな気配が朝からして巡回を早めに始めたのである。
今船は航海士である男による助言から、海の真上で停泊しているのである。なにも先々で嵐の風が浮いているとか。
その風のせいなのか、はたまた違うものなのかそんなことを思い出しながら巡回を進めていく。
いつもと変わったところはなし、見張り台に立つ者も変わったところもなく…ロープも緩んでいない。
「やはり、気のせいか」そう独り言を垂らしながら吸っていた煙草が燃え尽きていたことに気がつき、海へ投げ捨てる。
「キャッ」
聞こえた。下を覗いてみると避難用の舟に人がいるではないか、よく目を凝らすと形が浮き彫りになっていく。
「おはよう、朝からなにをしてるんだ?」
そう下にいる者に聞く
「おはようございますぅホエール様、」
とかえってきた。
彼女は“squid”(イカ)-スクイドである。
白い長髪でミステリアスな奴だ。
「昨日の夜からずっとここにおりましたの。
嵐が近いのにとっても星が綺麗でしたので、」
そんなことを言いながら毛布やらなにやらを持って上へ上がってくる。
ホエールはそれを受け取りながら聞く。
「何かおかしなことはなかったかい、」
床に置いたスリッパを拾いながら答えた。
「いいえございませんでした、不気味な夜でしたけどね、ふふ」と言って自室へ荷物を運ぶように誘導される。
(変な奴なんだよな…昔から)
と言いながらついていく。
二人は元々知り合いなのである。別に特別仲がいい訳ではないけれど、知り合い。
溜め息をつきながら自室の前を通り過ぎようとしたとき、
黄緑色と白い少年が柱の奥で覗き込んでいるのが見えたのである。
「ギャッ‼︎」
柄にもない叫び声に前を歩いていたスクイドが慌てて振り返り戻ってくる。
スクイドはホエールの目線の先をみると先ほどのホエールの叫び声を超えるくらいの大きさで叫んだのである。
もう朝日が出始めていたことに気づいた。