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高専に1度飛んだタイミングで傑から連絡が届いていた。
学校に癒月の姿はなかった事。
癒月が対処出来なそうな呪霊は確認出来なかった事。
まとめると以上の2つの内容だった。
これでハッキリした。
十中八九アイツらが絡んでいる。
しかし、今から凸ったところでこの時間じゃ相手にされないだろう。
それでも、一刻の猶予もないこの状況で明日まで待つことは出来ない。
まあ、僕を追い返すなんてそうそうできる事じゃないからいざとなれば強行突破するしかない。
お叱りなら後でいくらでも受けてやる。
僕はもう一度術式で京都まで飛んだのだった。
この日はたまたま、珍しく夜遅くまで任務をしていた。
車に乗り込んだ時、五条の坊から連絡が来ているのに気づいた。
いつもなら野郎の連絡は無視しているが、この日は何となく、ただの気まぐれでメールを見てみた。
内容は癒月が帰ってきてないという事だった。
甚(癒月……)
癒月は十種ではなかったものの、俺とは違い術式持ちで生まれた。
その術式で1度命を助けられた事もある。
たった1度、死を実感した時に。
その話は置いといて、癒月が帰ってないとはどういうことか。
俺とは違って戦闘系でもないし、戦闘系の術式でもない。
ましてや、十種のように多種多様な使い方ができる術式でもない。
つまりは、対呪霊でも、対人間でもない術式である。
癒月の術式は確か
〈自分の身体の1部を代償に他人を治癒できる〉
というものだったはずだ。
甚(呪霊に襲われたか?)
とりあえず俺は五条の坊にアパートの方に戻ると連絡しておいた。
特に何も荷物がないので俺はそのままそこへと向かうことにした。
京都まで飛んだ。
五(長距離の瞬間移動はまだまだ改良の余地ありって感じかな)
そんな事を考えながら歩き、
とうとう結界の前までたどり着いた。
そこそこ強力みたいだけど、僕ならこんなん飾りに過ぎない。
僕はするりと禪院家の中に入る。
すると警報だろうか、危機を知らせる音が響いている。
呪術師が何人か出てきて、僕のことを認識すると構え、警戒しながらも近づいてきた。
モ「五条様?!なぜこのような時間に…」
五「当主はどこ」
モ「今はお休みになられております。それよりも一体どのようなご用件で?」
五「分かってるんじゃない?てか、さっさと呼びに行ってくんない?緊急なんだけど」
モ「し、しかし…!」
五「何?今僕ちょっと怒ってるんだよねー
ここら一体吹き飛ばしてもいいんだよ?」
モ「そ、それは!」
五「嫌でしょ?なら早く」
モ「は、はい!」
連中は屋敷の中に戻り、慌ただしく駆けていった。
五(はぁ、めんどくさいな)
僕はそんなことを思いながら通された応接室であろう場所に座ってこれからどうするか考えていた。
すると襖が開き、不機嫌そうな禪院家当主_禪院直毘人が出てきた。
ソイツはドカリと腰掛けるとこちらを睨みながら話し出した。
直毘「なんだこんな夜更けに急に来て」
五「前置きとかしてる余裕ないから単刀直入に言う」
五「癒月を何処へやりました?」
直毘「癒月……?あぁ、甚爾の」
五「そう、癒月を何処へやったんです?」
直毘「ワシは知らん」
五「冗談を聞いてる暇はないんです、正直に言った方が身のためですよ」
直毘「ワシは何も知らん、その癒月に何か?」
五「お宅の人達に攫われたんですよ」
直毘「何か証拠でもあるのか?」
五「癒月の通学路の途中にアンタらの者の呪力の残穢があった。僕の眼は騙せませんよ」
直毘「お主の眼がそういうんならそうかもしれんがワシは本当に何も知らん。
その癒月とやらを攫えと命令した覚えもない」
五「根拠は?」
直毘「何処にでも、度が過ぎたお節介をするバカはいる。命令したかどうかは家中の者か知っているだろう」
五「…じゃあ条件を出す。そのバカとやらを見つけ出してください。明日までに。
もし明日までに見つけられなかった場合は禪院家の歴史が途絶えると思っててください」
長い会話の終わり、僕は席を立ちながら条件という名の縛りを出す。
相手はどうするか考えているようだ。
答えは1つしかないというのに。
直毘「……はぁ、分かった。それを飲もう」
五「よろしくお願いしますね、あ、後急に押しかけてすみませんでした。良い報告を待ってます」
そう言って、僕はわざと音を立てて襖を閉めた。
五(情報が無さすぎる、癒月は何処に連れて行かれたんだ?)
僕はこんなところから一刻も早く出たくて、術式の乱用にはなるが、もう一度術式で瞬間移動したのだった。
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