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「ぐわぁぁああああああああああ!!!!!!!!!!!」



パーティ会場に魔法士団長の悲痛な叫び声が響き渡る。そんな彼の姿を見ても何も思わないのか、第一王子は彼の胸に突き刺している指さらに突き進める。



「異界に住まいし者 業深き深淵よ 汝に贄を捧げ 我が呼び声に応え給え!」



第一王子が詠唱を行うと展開されていた魔方陣がさらに複雑に構築され始めた。俺はその構築されていく魔方陣を見て、奴が行おうとしているもののやばさに気が付いた。


すぐに魔法を止めさせようにも今の状態で強制的に魔法の発動を中断させてしまうと魔法が暴走して辺り一帯が吹き飛んでしまう可能性がある。ならば今するべきことはたった一つだ。



「この場にいる全員、今から安全な場所に転移させるから一歩も動かないように!!」



俺は出来る限り大声でパーティ会場中にいる人たちに呼びかける。それと同時に俺は魔力探知を応用し、この王城にいる人すべてをマーキングし始める。


すぐに近場で広い空間があって安全を確保できそうな場所を魔道衛星を使ってすぐに探したが、 王城のすぐそばにある庭園ぐらいしか発見できなかった。


だが時間がないのですぐに魔道衛星で正確な座標を算出し、急いで転移を開始させる。



「転移魔法、多重発動!」



するとパーティ会場にいた人が次々と瞬時に姿を消し始めた。100人近くの人数がいたのだが、魔法発動から5秒もしないうちにその大半が転移されていった。それと同時にパーティ会場以外にいる王城内部の人たちも庭園へと転移させた。


残ったのは俺とルナ、そしてアイリスたち王族と騎士団長だ。そして俺はアイリスと騎士団長に目配せをして彼らのことを頼み、ルナと俺を残して他のすべての人を転移させた。



「さあルナ、少しじっとしていてくれ」


「…えっ?!」



最後にルナを抱きかかえ俺たちも転移を完了する。すると俺たちが転移した数秒後、王城の大部分が大きな爆発によって吹き飛んだ。


急いでルナを下ろして王城全体と庭園に結界を展開させた。それによって爆発による王城外への被害を防ぎ、庭園に避難させた人たちの安全を確保した。



「せn…オルタナ様!」


「王女殿下、まだ終わっていませんよ」



すると王城から何かがこちらへと飛んできた。ものすごい勢いで俺たちの前に着地し、地面に大きなクレーターを生じさせた。



「…エモノガイッパイ、ダナ」


「あっ、あれは…」



アイリスが目の前のものを見て驚愕していた。

無理もない、それは完全に化け物と化した自身の兄だったのだから。



「ど、どうして兄上が…魔法士団長が生贄にされたのでは…」


「…おそらく、呼び出したものが強力すぎて魔法士団長だけでは足りなかったのでしょう。結果的に呼び出した本人も異界から召喚した禁魔獣の生贄となってしまったというところかと」



正直、あいつが生贄になろうが知ったことではない。現状で一番重要なのはあいつが呼び出したものがかなり厄介なものだということだ。以前戦った個体もかなり強力だったが、おそらく今回呼び出した存在は以前の数段上。


だが言葉を話しているということは生贄となった二人のどちらかの意識が残っているのか?それとも禁魔獣自身が話しているのか?もし後者であればさらに厄介だ。



「お前は誰だ?第一王子なのか?それとも魔法士団長なのか?それとも…」


「…オレカ?オレハ、アドラス。オレヲ呼ビ出シタヤツ、チカラガ少ナイ。ダカラ必要ナダケ喰ラウ」



本当に第一王子は面倒なものを呼び出したようだ。禁魔獣たちの中でも人語を話せる高い知能があり、そして名を持っているということはかなり上位に位置する存在なのだろう。



「喰わせるわけないだろ、大人しく元の世界に帰ったらどうだ?」


「喰ラウマデ帰ラナイ。ダッタオマエヲマズハ喰ッテヤル」


「まずい…ルナ、アイリス!ここの人たちを頼む!!」



するとやつから強烈な殺気に満ちた魔力が放出し始めた。俺はすぐにルナとアイリスに指示をしてアドラスと名乗る禁魔獣に攻撃を開始する。



「はぁ!!!!!」



俺は強烈な一撃をアドラスの腹部へと叩き込み、奴を壊れた王城へと殴り飛ばした。俺もすぐにそちらの方向へと向かって庭園からは距離を取った。



「邪魔ヲスルナラ、オマエヲサキニ喰ウ」


「悪いがお前には誰も喰わずに帰ってもらう」



最初から全力を出してこの戦いを早急に終わらせる。長引かせて被害が拡大させるわけにもいかないし、それにタイムリミットもあるようだし。



「能力制限、解除!」



俺はオルタナの体に組み込まれた能力制御システムを開放した。


これは前回の禁魔獣戦でゴーレムの性能不足を実感したため、現状持てるすべてをつぎ込んで自身の能力に対応できる機体を制作したのだが普段からその力を常時開放しておくわけにはいかないので設けた新たなシステムだ。



「これの実践は初めてだが…いい実験台になってくれよ!」


「ナッ?!」



俺はアドラスが反応するよりも前に奴の懐へと潜り込み、上空へと魔力砲を発射する。完全にこの一撃で終わらせるつもりだったのだが、やはり今回の相手は一筋縄ではいかないようで間一髪のところで避けて俺の至近距離魔力砲による消滅を免れた。


しかし完全に回避できたわけではなく、やつの上右半身は綺麗に消し飛んでいた。



「オレノスピードヲ上回ルトハ、ナカナカヤルナ。ダガ、オレニ勝テルト思ウナヨ」


「悪いがお前の見せ場を作るつもりはない」



そうして俺は再び超高速でアドラスに接近する。

対するアドラスもすぐに体を修復させて俺のスピードに対応してきた。


破壊された王城跡地の上空で激しい戦いが繰り広げられる。おそらく俺の張った結界がなければ王都の街中や庭園にいる人たちにも戦いの余波で被害が及んでいただろう。



激しく戦っているように傍から見えているようだが、実際は一方的なものである。アドラスは何とか俺のスピードに対応していたのだが、攻撃は一方的に俺だけが奴に与え続けていた。


アドラスの攻撃はすべて最小限の動きで避け、その隙を突いて何度も致命的な威力の攻撃を奴に喰らわせ続けていた。ただ、アドラスの再生力はかなりのもので損傷した次の瞬間にはすぐに元通りに戻っていたのだ。



このままこれが続けば完全なる消耗戦になることは必至。


アドラスの再生にはかなりの魔力を消費しているようだが、そもそも奴の魔力保有量が馬鹿げたものなので総量から考えると微々たるものである。だからこそやはり禁魔獣を倒すには一撃で再生の隙を与える間もなく消滅させることが必要なのだろう。



だがそれをすると依り代となった第一王子たち諸共葬り去ってしまうこととなるので困る。あいつのことは正直どうでもいいが、どうせなら人としてしっかりと大勢の人の前で裁かれて罪を償ってほしい。


怪物として倒すのは簡単だが、それでは逃げられたも同然だからな。



だとすると依り代となった二人ではなく禁魔獣のみを消滅させられる攻撃を考えないといけないがそんなことが果たして出来るのだろうか…?俺はアドラスに攻撃をし続けながら必死に禁魔獣のみを消滅させられる方法を模索し始める。



禁魔獣…

異界…

不気味な魔力…

召喚…

依り代…



「……っ!!」



そうか、そうだ!


禁魔獣は異界の生物、こちらの世界では生身の体というものが存在しない言わば『魂』だけの存在だ。だからこそ召喚される際にこちらでの器となる依り代が必要となる。


それに禁魔獣から漂うこの不気味な魔力はおそらく奴らの魂由来のもの。であればその不気味な魔力の根源である魂を消滅させれば禁魔獣のみを倒せるかもしれない!!


俺は自分の中で立てた仮説により根拠を持たせるために少し攻撃の頻度を落としてアドラスの体を鑑定する。いつもより深く、より深く鑑定をかけていく。



そしてついに奴の魔力の根源であるこの世界における禁魔獣の本体とも言える魂を知覚することに成功した。普通は魂の知覚なんてほぼ不可能な芸当ではあるが、俺はすでにこのオルタナシステムにて自身の魂を認識している。


その経験もあって自分以外の魂の近くは初めてのことだったが無事に成功する事が出来たのだろう。このリモートワークのシステムが役に立ってよかった。



ならばあとは簡単だ。

知覚した魂に直接干渉する攻撃を仕掛けるだけだ。


さあ第一王子、最終決戦といこうじゃないか。

元天才貴族、今やリモートで最強冒険者!

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