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山中side
研究生として目まぐるしく自分の状況が変化するなかで、あの人は憧れの存在へと変わっていた。
グループを組んで前を歩いていくあの人はすごいなぁとつくづく実感した。
彼の出ている作品は何度も観た。
一緒に過ごす時間が長かった舜太には
「佐野さん好きなん?
もう何回観るねん
そんなに観て飽きへんの? 」
ってつっこまれたりもした。
飽きなかった。
あの人の演技、仕草、表情、パフォーマンス全てが魅力的で、釘づけになる自分がいた。
少し経ったある日、突然事務所のお偉いさんに呼ばれた。
今度、オーディションがあるんだが来ないかとの誘いだった。
今の活動が精一杯な自分には無理な話だと断ろうかと思ったその矢先、思わぬ文字がその人から聞こえてきた。
「M!LKとして活動することになるんだけど」
M!LKという言葉にすぐに食いついた。
「受けさせてください」
あの人と同じグループで活動できる!
ただ、その想いだけでオーディションを志願していた。
あっという間にオーディションは終わり、 M!LKのメンバーとしての活動が決まっていた。
新加入メンバーと現在籍メンバーの対面の時、「柔太朗じゃん!」
その声に目を丸くする。
覚えてくれていたんだ。
嬉しさのあまり、自分の体に熱が宿る。
でも、この気持ちを知られる訳にはいかない。
だって同じグループで活動するんだ。
それに同性…。
自分の気持ちに鍵をかけたつもりだった。
でもあの人と活動するなかで、自分の気持ちを止められない瞬間が芽生えはじめていた。
炭酸が弾けるように、また一つあの人の好きな部分が増えていく。
敬語もやめた、苗字読みや先輩後輩の関係もあの人が嫌がるからやめてきた。
最初は嬉しそうに喋りかけてくれた。
その笑顔が自分に向けられていることが何よりも嬉しかった。
でも、突然そっけない返事がくる時があった。
冷たくあしらわれるような、他のメンバーにはしないような態度もあった。
「柔…」
あの優しい眼差しで、その包み込むような低い声で、大きな手で…
誰も知らないでほしい。
その全てを自分に向けて欲しい。
甘く儚い、どこかパチパチと刺激を感じる気持ちは増え続ける一方だった。
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