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彼は両手で顔を覆い、しゃがみ込むと静かな廊下に子供のような嗚咽が響き渡った。

それは威厳も、理性も、全てを失った、純粋な悲しみの声だった。

「ごめ…ごめん…っ、ごめん、なさい…っ、こわい…六葉…っ、お前が…っ、また、俺から…離れていくのが…っ…こわいんだ…っ」


彼は、もう生徒会長ではなかった。


ただ、幼い頃に魔力で傷つけ、二度と誰かを傷つけまいと誓った、孤独な少年そのものだった。


彼の冷酷な態度は、全てこの**「*恐怖*」**を隠すための鎧だった。


六葉はその光景を見て、涙が溢れるのを感じた。


彼の冷たさの裏にあった、これほどの痛切な孤独をようやく理解したから。


彼女は、何の躊躇もなく、彼の傍らに膝をついた。


「大丈夫です、隷様」


六葉は優しく声をかけると、彼が顔を覆う腕をそっと外させ、泣き崩れる彼の体を、しっかりと抱きしめた。


「私は、どこにも行きません。もう、隷様を一人にはしません。誓います」


六葉の体から発せられる魔力は、いつの日か隷が自分に送った魔力と同じ、**『絶対的な安心感』**の周波数だった。


その温かい魔力は、彼の凍りついた魔力と混じり合い、彼の胸の奥深くに沁み込んでいった。


隷は六葉の腕の中で、激しく震えるのをやめた。


幼い頃から誰にも見せなかった、自分の弱さ、恐怖、そして抑圧してきた六葉への想い。


そのすべてを、彼女は温かく受け止めてくれたのだった。

彼は六葉の肩に顔を埋め、さらに嗚咽を漏らした。それは、 張りつめていた糸が切れ、長年閉じ込めていた感情を全て解放する涙だった。


六葉はただ何も言わずに、その小さな体を自分の中に抱きしめ続けた。


冷酷な仮面は、完全に溶け落ちた。

残ったのは、ただ六葉を愛し、失うことを恐れる、一人の孤独な少年の心だけだった。

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