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勢いよく玄関ドアを開き、思わず声を張る。
「中華!」
俺がその名を呼ぶと、彼女はこちらを驚いたように振り返った。
「炎露アルカ?」
目を大きく見開いて確認するように中華は声を漏らした。
中華の手には、大きな空色のキャリーケースがある。
その奥には兄貴も居た。
「それは、良かったアル」
中華は嬉しそうに、俺に向けてふんわりと優しく笑って見せた。
その笑顔に、心臓が高鳴った。
ドクン、ドクン。そんな音が嫌でも耳に入る。
初めて感じるこの感情に、俺が戸惑っていると、間髪入れず。と言うように、兄貴が大粒の涙を流しながら話し始める。
「炎露。お前、本当に、っ」
兄貴は少しづつこちらににじり寄ってくる。
「心配したんだぞっ」
兄貴はその言葉を最後に弾け飛ぶように俺に抱きついてきた。
無事に嫌な予感が当たった。
重い。兄貴、力強い。
でも、最後には俺からも笑みが溢れた。
もう、寒さも、冷たさも怖くない。
ここにはどんな冷たい氷すらも解かす【熱】があるのだから。