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これは夏の日の物語
そして、誰も知らない物語
俺は今なにかに追われている
それから逃げるために草むらを分けて走る
草の匂いが鼻をつんざく
呼吸の音がうるさい
疲れた、なんて思いながらも体を鞭打って無理やり走らせる
何で、どうして、こんなことに
なんて思っても後ろの化け物は止まらない
それどころか嬉しそうに、兎を狩る狐のような目で追いかけてくる
きっと捕まったら食われてしまう
そんなことを肌で感じながらも限界がひしひしと伝わってくる
もっともっと走らないと
勢いよく前に飛び出たときだった
突然開けたところに出た
は?
頭が混乱する
頬から汗が落ちて苛つきを隠せない
何でこんなところにこんなに開けたところがあるんだ?
そんなこと思ってる場合じゃない
そう思って振り返ると化け物がおってくる気配がない
なんで?
「お、きたきた」
そう言われてもう一度振り返るとそこには小さな祠とそれを囲うように3人の男が立ってた
「誰?」
その俺の疑問に祠の上で座っている白髪の儚げな雰囲気をかもちだしている男は答えた
「君の仲間だよ!」
優しい笑みを浮かべて
「初めまして僕は六花」
「あ、津雲 奈緒です」
と自分の名前を名乗った
「ツクモね!よろしく」
「私はキウ」
その隣にいた大きい狐耳を付けた目つきの透き通った青い目はこっちを見つめてくる
「僕はアスマ。ところで六花?」
アスマと名乗った男は綺麗に整った顔と右目にホクロがふたつ連なっている
「何?」
「大切なことを忘れてないかい?」
「え、なんかあったっけ」
2人の会話を聞いていたのかキウさんはため息をついた
「お前本当に間抜けだな」
「じゃあキウはわかるの?」
その言葉にキウさんはため息をつく。本当に馬鹿だと言いたげな目で
「簡単なことだろ。お前と俺は人じゃない」
それだけだ
と彼は言った
その言葉がずっと頭に響く
人じゃない?
いったいどうゆう事だ
その言葉で思考は停止した
「あぁ、そんなこと」
六花さんが心底どうでもいいように言ったが全然俺はどうでも良くない
良くないという規模の話じゃない
脳が理解しない
「えっと、どうゆうことですか?」
「そのままだよ」
「お前も追いかけられてたじゃないか。さっき」
さっきというのはあの化け物のことだろう
つまりこの人たちはあれが何か知っている?ってことか
「あれはなんですか?何かわかるんですか?」
「わかるも何も私はあれと一緒だ。あんなに醜くは無いがな」
キウさんは鼻で笑っている
「厳密には僕は神様、キウは妖怪だよ。君が追いかけられたのは妖怪って呼ばれるもの」
妖怪?
そんなものが本当にいるなんて
今までなら嘘だと思っているだろう。だけどもう実感してしまった。あれはあの化け物は妖怪と呼ぶにふさわしい
「あの、」
ずっと思っていた疑問がある
この夏休みが始まってからずっと分からなかったこと
知りたかったことだ
「俺突然見え始めたんです。この夏が始まってから」
「なんでですか?」
俺の疑問に3人は目を合わせた
そして六花さんが口を開いた
「きっかけは僕らも知らない。なんなら被害者なんだ」
被害者?
ってことはこの人たちも急に見えたということか?
いや、だけど妖怪同士見えないことなんてあるのか
そんな疑問が俺の中で渦巻いている
「六花はいつも言葉が足りないね」
アスマさんがため息をついてそう言った
「え、分かりやすくない?」
その言葉を聞いてまたため息を着く
そしてアスマさんは俺の前に来て目線を合わせた
この人顔綺麗だな。長いまつ毛がとてもよく見えるホクロすらも芸術の域なのではないかと思ってしまうほど美形だった
「ツクモさん俺はこの夏に入って人の声が聞こえなくなりました」
「けど俺とは喋れてますよ?」
「見える人そして妖怪だけです」
その言葉に目を見開いた
殆どの人間と会話ができないってことじゃないか?それを平然と言えるこの人も俺からしたら有り得なかった
なんでそんな落ち着いていられるんだ
「それって大変じゃないですか?」
「えぇとても」
美人はどんな顔でも美人だ
こう話している時ですら絵になる
もはや現実逃避したくなってそんなことを考えるがすぐさま現実に戻る
「そしてこの狐のような妖怪は嗅覚があんまり良くなくて」
「簡単に言うと激しい運動したら死ぬらしいです」
「そこの神のようなものは味覚がない」
「神のようなもの?」
「六花のことだ」
とキウさんが付け足してくれた
神様、なのか?
こんなに明るい元気な神様がいるのだろうか
なんて思ってしまったが口には出さないでおこう
「こいつが神かどうかなどどうでもいい」
「え、キウ酷くない?」
「お前がここに来たのは俺たちとこの問題を解決するためだ」
「解決ってどうやって」
「そんなの知っていたら私がとっくに解決している」
なんて身勝手なんだ
と叫びたくなったが心の中に押しこめる
「あーみんなが色々言うからツクモが戸惑っているよ!」
六花が困ったように2人に話しかける
まぁ実際何も情報は入っていない
頭が壊れていくのを感じる
「とりあえず協力しない?ってこと」
そう言って六花は最初のように優しい笑みを浮かべて手を差し伸べる
「僕らと関わっていたら絶対食われることは無い。そこは安心して」
「そして君は僕らに協力する。どうかな?」
もう俺の頭は働こうとしない
とりあえずこの妖怪を急に見えたという問題を解決するためには協力した方がいいってことか?
ならした方がいいのか
必死に頭を働かした結果その結論にたどり着いた
「わかった」
「よろしくねツクモ。ついでに僕とキウには敬語は必要ないよ。妖怪に敬語なんてないからね!」
「わかった」
意味がわからない
なんで、どうして、こんなことに
全然何も理解できない
とりあえずこの現象を解決するために協力しなければならないということだけだ
おまけ
ツクモと六花
「キウ、六花、アスマさん名前覚えられないな」
「がんばれがんばれ!」
「そう言われても…急に3人は難しいな。これからゆっくり覚えるだけじゃダメかな?」
「早く覚えないと会話しにくいじゃん!早く早く」
「うーん。わかった六花はとりあえず覚えた」
「やったね!」
「煩いのは六花」
「酷い!残酷!」
ーーー初期設定ーーー
ツクモ(津雲)
高校2年生
妖怪が突然見えるようになった。灰色の髪に水色の目が印象的
キウ
大きい狐の耳に高くひとつで結んだ髪、透き通った青色が印象的
激しい運動ができない
長生きはしてる
六花
神様
白髪に黄色い目そしてそこに浮かんでいる十字架の瞳が特徴的。初めて見た人は儚げな印象を抱く
味覚なし
アスマ
赤い目に茶髪の髪、そして非常に顔が整っており右目にはふたつのホクロが連なっている
人の声が聞こえない妖怪の声しか聞こえない
不定期的に上げますゆったりした物語になる予定です。常に全員が出てくるとは限りません
のんびりお待ちしてくれると嬉しいです