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後日。
雪乃はいつもの通学路を歩いて登校していた。
欠伸をしながら校門をくぐり歩いていると、
「おーーい!!草凪さーん!!」
後ろから元気よく声をかけられた。
振り返るとこないだ会ったイメケン加島が手を振りながらこちらに向かって駆け寄って来ていた。
「おはよう草凪さん」
「あ、おはようございます加島さん」
どうしたんですか?と首を傾げる。
周りに注目されているのを気にしながら。
「お爺ちゃんから聞いたよ。俺からも直接お礼を言いたくて。本当にありがとう」
「いえ。自分がやりたい事をやっただけですから」
「ううん。俺にはできなかったことだから。ずっとお爺ちゃんが悲しそうにしてたの知ってたのに。だから本当にありがとう」
「…2人が幸せなら、それで良かったです」
雪乃は黒いマフラーに口元を隠す。
こんなに真っ直ぐにお礼を言われると何だか恥ずかしくなる。
「こないだ俺も会いに行ったんだけどさ、ほら見てよ」
加島は自分のスマホを取り出し、雪乃に見せた。
そこには幸せそうに笑うムウマと老人の姿があった。
「いいでしょ、この写真」
「…ええ、とても」
見ていてこちらも幸せになるような、素敵な写真。
「お爺ちゃん最近毎日楽しいみたいで。リハビリもいい感じで最近ちょっと良くなってきたみたいなんだ、足」
その言葉に雪乃は驚き、「よかった」と嬉しそうに微笑む。
「え、ちょっとあれ、加島先輩じゃない?」
「うそ、ほんとだ。なんでこんな所に」
「あれ草凪さんだよね…もしかして付き合ってるの?」
ひそひそとすれ違う生徒みんなに注目され始め、雪乃は少し焦る。
そろそろ離れねば。
「あ、それでね、草凪さん。よかったらなんだけど、連絡先教えて欲しいんだ」
「へっ」
「いや、また改めてお礼したいし、お爺ちゃんもまた来て欲しいって言ってたし、ムウマとの写真とかも見せてあげたいしさ…ダメかな?」
雪乃は考えた。
考えて考えて考えた。
しかし朝なので頭が回らなかった。
まぁ確かにお爺さんの現状とかも気になるし、イケメンだし、別にいいか…。
「いいですよ」とスマホを取り出そうとしたところで、
「よお加島、なに人の妹ナンパしてんだよ」
加島の肩に乱暴に腕をまわす男、雪乃の兄春翔が現れた。
周囲がさらにざわつく。
「あ、おはよう草凪。別にそんなんじゃないよ」
「ふーん。まぁいいけど、うちの妹に近寄りたきゃまずこの兄を通してもらわんとなぁ?」
「え?どういう…あ、ちょっと」
加島は春翔に引っ張られるように肩に腕をまわされたまま歩いて行ってしまった。
一人取り残される雪乃。
…何だったんだ?
何故春翔がいたのか謎だが、まぁいいかと雪乃も歩き出した。