明日は、会えるメンバーみんなで、夏の醍醐味、花火大会や夏祭りに行く。ちなみに会えるのは、じゃぱぱとたっつんとのあとえととうりとヒロだ。少し珍しい組み合わせだ。それも楽しみの一つとして捉えることができる。
花火大会が始まる間に1、2時間、時間が空くので、持ち合わせた線香花火や勢いが強い派手な花火を川の近くで遊ぶ予定だ。
皆は数日ぶりにメンバーに会えることや、夏祭りの屋台で何をしようかと、すこぶる心を踊らせた。過ぎゆく時間は早く感じた。
宵の口、辺も少々薄暗くなり、いつもは静けさを纏う神社はたくさんの灯りがやどり、華やかさが漂っていた。まだのあさんだけが来ていないから、他のみんなで会話などしてのあさんを待っていた。
えとは随分長い距離を歩いて足が疲れていたので、座る所がツルツルとしている石の上に座った。
5分経って、えとはようやく気づいた。ふと、横を見たところ、腰掛石の上に、誰かが置いて行ってしまった餅のような形をした兎のフィギュアがえとの太腿の10センチほど離れた横に、ポツン、と寂しそうにしていた。
えとはそんな様子になんでか好感が持て、手に取り、手の平の上で兎の硬い耳を撫でる。誰しも、まだ綺麗で可愛らしい人形に興味が湧くだろう?
そんなえとを見たじゃぱぱが、興味津々で歩み寄った。そして兎の人形に顔を寄せて、顎を抑えて不思議そうに尋ねた。
「えとさん何してんのー?」
「?!うわぁっ!」
えとさんは急に目の前に来たじゃぱぱに声を上げて驚き、じゃぱぱの頭を軽く叩いて離れさせる。
「もー、びっくりしたんじゃん笑」
「痛いって笑ごめんごめて笑」
えとはいつもどうりのじゃぱぱの肩をバシバシと軽く叩きながらそう言った。そして今度は驚かせないようにじゃぱぱを問う。
「そういえばさ~えとさん、それどこから持ってきたの?」
えとさんは少し迷って、こう答えた。
「ん~、ここに置いてたやつ」
えとさんは、人差し指指と親指でぐっと挟んで、じゃぱぱに兎のフィギュアを見えるようにしてそう言った。じゃぱぱはきょとんとした顔をして、すぐに真面目な顔をして言った。
「うーん、じゃあ後で交番に届けに行こうか」
じゃぱぱは普段おちゃらけているが、案外、真面目だ。こういうところは、本当にしっかりしている。えとは改めてそう思った。そのまま頷いた。
しばらく会話が途切れた後、すこし遠くで、じゃぱぱは小虫でキャーキャー騒いでいたえとを見て、ハッと思い出したかのように目を見開いた。すぐにニヤニヤと口角を上げて、目を細める。まるでイタズラ好きの猫のようだ。そして、えとさんにのらりと近づいて小声で言う。
「そういえばえとさん、たっつんとはどうなの?」
えとさんは、そのことを聞かれ、ぼっと頬に火が籠る。額から汗がだらだらと吹き出してくる。
えとはその事に気づかずに、たっつんに片想いしていることをじゃぱぱにバレていたことに驚く。動揺を悟られないように冷静を装った。
「どゆこと?」
「もー白々しいなー笑」
(も~バレてるんだよなぁ~)
じゃぱぱはそう思いながら肩を竦めて面白そうに苦笑いした。
「……💢!」
そんな様子じゃぱぱを見てか、その可憐な見た目の割に合わない強靭な拳でポカポカとじゃぱぱを叩く。
「いたっ、痛いって!ごめんごめん」
後頭部を撫でながら片手でちょんちょんとよくある許しを乞うポーズをしていた。えとさんは、まぁ許してやろうみたいな顔をしながら腕を組んでツンデレみたいに言った。
「ふん…べ、別に……」
じゃぱぱはニタァと開いた口に手を当てて、揶揄うようにえとに言う。
「またまた~?本当は~、す き な ん で しょ?」
えとは耳まで真っ赤にして視線を逸らしながらじゃぱぱの予想よりすんなり答えた。
「そ…そうだよ、す き だ よ」
恥ずかしすぎて言葉が途切れるが、本心をちゃんと言えたことに安堵した。しかし、そんなことを知らないじゃぱぱはニヤニヤと意地悪をする。
「えぇ?聞こえなかったなぁ~?」
(こいつ……!)
そう思いながらもえとは勇気を出してもう一度言うことにした。
「……好き」
えとは、目と拳をギュッと力いっぱいつぶってからそう言った。じゃぱぱはその言葉を聞くと、にんまりとした顔でこう言う。
「やっぱり?笑」
(くっそ!こいつー!!!)
そう、えとは心の中で悪態をつきながらも、満更でもないような顔をする。
「で?たっつんはどうなの?」
まだその話を続けるつもりのじゃぱぱに半ば呆れながらも答えることにした。もうやけくそに近いが。
「どうって、たっつんは……優しいし……」
「うん」
(まぁ~、えとさんだからな(?))
じゃぱぱはニヤニヤしながら、相槌を打った。
「笑顔が可愛いし、あと……お酒に弱いし……」
えとはそう言うと、毛先を指にくるくると巻き付けて居心地が悪そうに遊んだ。
「だからその、とにかく好きなの…!」
もじもじと下を向いて、だんだん小さくなっていったえとの声に、じゃぱぱは本当に好きなんだな~と頭で思った。
「えとさんって本当は、乙女だねー笑」
じゃぱぱは面白そうに言った。えとはその言葉にむすっとした顔をして、ジトっとじゃぱぱを見つめた。
(こいつ、たっつんと仲良いからって……)
そんなことを思い、内心少し腹を立てながらこう言った。
「じゃあじゃっぴはどうなの?」
じゃぱぱはその挑発にも似た質問に、ちょっと気色の悪い笑顔のまま答える。
「俺?俺はね~」
『ほんとに遅れてすみませーん!!!』
えとは結局、じゃぱぱの答えを聞けずに、遠くから聞こえたのあの言葉によってられた。タイミングが良すぎる、いや、悪すぎるか。
のあの着物はシックなピンク色の着物でよく似合っていた。周りにキラキラと光る星が見える程に。
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