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震わせて来る
この世から居なくなる1週間前、
絵画を買った。
その絵画はオークションに出されていたらしいが
誰も買わなかったらしい。
だから落札されずに残ってしまったそう。
だが、俺には艶美さを感じた。
もうすぐ居なくなるのだから、孤独なヤツと1週間を過ごそうと思った。
絵画を買って1日、絵画からの意思が感じられた気がした。
こう語りかけているかのように。
「散らかった思考の渦に 呑まれそうな私を最期まで愛してほしい
飾られる様な絵画にはなれなくても。」
そう感じた俺は、お気に入りのものが置いているところに飾ることにした。
震わせて来る
この世界。
何もやることがなく外を見た。
花。
咲くことも知らずに散る
何故か腹が立ち、絵画を見た。
気の所為かもしれないが、俺に似ている気がした。
髪型、目つきが悪く隈が酷 い目、そしてウザったらしいアヒル口。
そして、背景は薄暗く、今の自分とそっくりだった。
もっと腹が立ってきた。
そんなことを考えていたら、俺と似ている絵画の口が数mm動いた気がした。
其の瞬間、絵画がまた語り掛けてきた。
「散らばった理想の海に 溺れる様な私を 最期までポイして欲しい
鮮やかに映す レンズには傷が目立つけど 私にしかない理由で 縋っていて欲しい せめて私のためだけに 歌っていて欲しい 」
前より長い言葉で。
歌っていて欲しい。か。
もう歌は歌いたくないんだ。ごめん。
前の事を思い出していたら、1週間が経つまであと6日もあるのに
この世から旅立ちたくなった。
誰かのせいに
誰かのせいにして
生きて行けたら
楽なんだろうな
玄関のドアを開け、外に出ようとした時
家の奥から絵画の中のヤツが話してきた。絵画の中から出て。
「辛かった非凡と鬱に 呑まれていた 私の海岸を歩いてほしい 見せられぬ程に だらしない今日に明日に 私にしか無い色で描いてほしい せめて貴方の部屋に その絵画を飾って欲しい 」
海岸。いいかも。でも、やめだ。
コイツに少し色を足して、描いて、そしてコイツとサヨナラするんだ。
虚しさが残る
血管を泳ぐ
不安のループに踊る
私を許して
また鐘がなる
冷えた部屋に残る
私の影を
貴方は探してくれる?
私にしか無い色で描いてほしい
1週間の日記。_大森元貴
これは僕が絵画になる前のお話。
コメント
2件
意味深最高