夕日に照らされる街。
その中に1人の少女がフラフラと歩いていた。
「……まだ……まだ……間に合う……」
既に事切れたアルカを抱え家へと向かう。
家の扉を勢いよく開ける。
「……っ……カルヴァリーッ!」
家に着くと、唯一頼れる彼の名前を叫ぶ
《は? トウカ?! どうしたんだよ……その怪我……それに…そいつは》
「私はいいの……っ……アルカが……っ……」
《こいつは……もう死んでるだろ……》
既に事切れているアルカを見つめてカルヴァリーは呟く。
「貴方、幽霊でしょ……? だから……だからアルカを…………戻して……」
頼れるのは貴方だけなのよ…
泣きながら彼を説得する。
これがコイゴコロなのかもしれない。
透海 side
カルヴァリーに回復してもらった後、
私は彼に今日起こったことを話した。
カルヴァリーは私の話が進むにつれて、どんどん不機嫌になっていった。
《それで……俺にこいつを生き返らせて欲しいと?》
「えぇ。そうよ……私はまだ……彼に……」
《伝えてない?》
「……」
《図星だな。》
カルヴァリーは少し考え込んだ後、真剣な声で私に続ける。
《……こいつを生き返らせる事は、不可能ではない。 でもな?》
「…………」
《人を生き返らせるのは大変な事だ。だから、変わりにお前の体の1部を貰う。》
体の一部?
まるで人魚姫ね。
《……それでもいいのか?》
「勿論よ。 彼が戻ってくるなら。」
彼が生き返るなら、私は腕でも、足でも、捧げる。
声を失ったって構わない。
海の泡になって消えたって、貴方が戻ってくるなら……
《……わかった。それじゃあな……お前の髪を貰う。》
髪……?
それだけでいいの?
私の髪はここに転生してきてから、ずっと伸ばし続けてきた。
最初から長かったけれど、今は私の膝くらいまである。
「……どうぞ……」
《ははっ……まさかお前がコイゴコロだけでここまで動くとはなぁ……?
昔からお前を見てきたが、こんなことになるとはおもってなかったぜ、》
愉快そうに笑うと、彼は呪文のような何かを唱え始める。
すると、私の周りが青い炎に包まれ、長い髪を奪い去ってゆく。
《ほらよ。終わりだ。》
ベットに横になった彼を見てみると……息をしている。
《今は眠ってるみたいだな。いつ起きるかは、こいつ次第。》
「……ありがとう。」
《お前ももう寝ろ。疲れてるだろ。》
「えぇ。ありがとう。」
ヒスイは今日のお昼頃、自分の家に帰ったんだそう。
本当に今日は忙しい1日だった。
明日は……きっといい日になるわ……
嫌なことがある度に呪文のように唱えていた言葉。
こうやって、自分に言い聞かせる。
こんな日でも、ぐっすり眠れそうね……
おやすみなさい……
その日の夜は、おかしな夢を見た。
多分、私が転生する前の話…
あんまり覚えてないわ。
中学生の……教室?みたいな所で、1人の女の子が虐められてるの。
1人のいじめっ子に殴られ、蹴られ、悪口を言われて……
虐められている子は、私の名前を呼んで、
こう言ったの。
ートウカちゃん……助けてっ……
それでも、私は動けなかった。
きっと、その子とは仲が良かったのね……
助けてあげたかったのだけど、これは夢だから、どうすることも出来ないの。
ー嘘つき
すると、虐められた子は、私を睨んでそう言った。
私が覚えているのはここまで。
この夢はいつの物なのかもわからない。
本当にあったのか、ただの夢なのか…
今の私にはわからなかった。
ただ、あの光景を思い浮かべる旅、後悔が…罪悪感が…
胸に広がって…苦しかった。
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!