涼介は元々変わったやつだった。
急に家に帰りだしたと思ったら、やっぱり辞めるなんて言い出して僕の家に泊まったり、食べたくなったからという理由で隣町のケーキ屋さんに歩いて行ったり。
ほんとに変わったやつだった。周りからもうんざりするほど言われていたらしい。
今だってほら、
「なあ優人、俺が人を殺したって言ったら信じる?」
「…え?」
また変なことを言い出すんだ。
僕と涼介は家が隣同士の幼馴染だ。僕が5歳の頃、両親の転勤がきっかけで引っ越してきた。最初は緊張したし、新しい環境で馴染めるか不安だったけど、涼介はいつも僕を遊びに誘ってくれ、僕と涼介が仲良くなるのに時間はかからなかった。
涼介はいわゆるガキ大将的な感じで、いつも喧嘩を吹っ掛けられてはボコボコにされて終わるような人だった。
正義感が強く、僕がいじめられていればどんなときでも守ってくれた。
そんな涼介に憧れを抱き、一生ついて行くことを決意した。
確かにちょっと変わったやつだなとは思っていたけど、僕にとってはたった一人のヒーローだったから。
そんなヒーローが高校2年の夏、僕の前で人を殺したと言ってきたんだ。
「人を殺したって…それ本気で言ってる?」
「うん。まだ誰にも話してない。」
夕日に照らされる教室に、ただ僕と涼介のふたりきり。 学級日誌を書いていた手も、無意識に震えだしていた。
涼介の普段見せないような顔が、本当だと物語っている。
「な、なんで僕に言うんだ?僕に言ったって…どうしようないだろ…。」
「わかってる。これは俺自身の問題であって、お前には全く関係ないことだ。」
「じゃあ…何で…」
今まで伏せていた涼介の視界に、僕がしっかり映り込む。
「俺はまだ、お前のヒーローでありたいと思ってるから。」
あまりにも真剣な表情と、僕に何かを求めているような眼差し。
「ひ、ヒーローって…、人殺しがよく…」
そうだ。いつだって涼介は僕のヒーローだ。これからも変わらないだろ。例え人を殺すようなやつでも、変わらない…。
ほんとに、僕もつくづく変わったやつだ。
「…そうだね。君はずっと僕のヒーローだ。ずっと。これからも。だから、次は僕が君のヒーローになりたい。」
「一緒に罪を背負うんだ。」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!