テラーノベル
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「好きです。付き合ってください。」
「ありがとう。そう言ってくれて嬉しいよ?」
「っ、じゃあ…」
「考えたいから、明日、10時に待ち合わせしてデートしよう?」
「わかった!!!」
ーー今ここに、俺たちの戦いの火蓋が切って落とされた。
おはよーピーマン!!佐久間さんだぞ!ちょっと聞いて!!!
八日前にね、涼太に告白したの!大好きって!
そしたら、涼太、「デートしてから決めても良い?」って言ってくれたの!
マジでテンション上がった!
今日は頑張るぞー!って思いながら、涼太と待ち合わせしてる駅前の噴水まで行ったら、そこにはよく知ってる顔が七個並んでたの!
マジでどゆこと!!ウハハハハ!!!
渡辺です。聞いて。
七日前、俺は子供の頃からずっと好きだった涼太に思い切って告白したの。
涼太は「考えたい」そう言って、デートに誘ってくれた。
絶対に叶えたい、そう意気込んで、俺は昨日の夜と今日の朝、念入りにスキンケアをした。
いつもみたいな、サンダルにダル着なんていう格好じゃなくて、ちゃんとオシャレもした。
少しでも脈が広がりますようにって、そう願いながら待ち合わせの場所に行くと、そこにはよく知ってる顔が六つ……あって …………………………は?
ぅいー、俺、深澤。ちょっと耳貸してくれる?
かわいいかわいい俺の舘さんね、六日前に俺が「好き、付き合って?」って言ったら、「デートしたいな、ふっかのこともっとよく知りたい」ってOKしてくれたの。
超かわいくない?
今日は、そのデートの日。
目的地までを示したナビの所要時間、すげぇもどかしいなーとか考えてたら…。
あれ?あいつらこんなとこで何してんの?
おはようございます。目黒です。聞いてくれますか?
五日前に、俺、好きで好きで仕方ない舘さんに告白したんすよ。
「考えさせて」って、ちょっと赤い顔をしながら、舘さんはデートに誘ってくれた。
すげぇ嬉しかった。
だから、ちよっとでも好きになってもらえるようにって、いろんなシミュレーションをして、約束の場所まで来たんだけど、そこにいたのは舘さんじゃなくて……。
おはようさん!俺、向井言うねんけど、ちぃと聞いたってくれるか?!
俺ついに!舘に告白したんよ!四日前やな!
ぁ?俺が舘のこと好き言うん初耳やって?そないな細かいこと、今は気にしとる場合やあらへん!
ほんでな?舘がデートしよう言うてくれたんよ!デートして決めたい言うて、なんや舘はホンマにかわええなぁ、なんて思うとったら、俺の目ん玉飛び出てしもうた!!
やって、、そこにおったんは…。
みんなおはよー!ラウールです!今ね、すごい面白いことが起こってるの!
三日前にね、だぁいすきな舘さんに「大好き♡」って伝えたの。
「じゃあデートしよっか」ってニコニコ笑ってくれた舘さんを今、噴水のレンガのところに座って待ってたんだけど、来たのは舘さんじゃなくて…。
…おはようございます。岩本です。
俺、今ちょっと怒ってる。
一昨日、舘さんに告白したの。俺だけの舘さんにしたかったから。
そしたら、舘さんは「今度の休みの日に、出かけない?」って言ってくれた。
嬉しくて、うきうきしながら舘さんを待ってたのに………。むぅ…。
おはようございます。阿部です。聞いて欲しいことがあります。
俺が敬愛してやまない舘様がデートに誘ってくれました。
昨日、俺の告白を聞いて、舘様は間髪入れずに「考えたいから、明日、10時に待ち合わせてデートしよう?」って言ってくれたんです。
すごく嬉しかったし、遅れたらいけないと思って、俺は約束の三十分以上も前に、集合場所に着いてしまいました。
大人しく舘様が来てくれるのを待っていたら、俺に声をかけてきたのは……。
「阿部!?」
「照!?なんでここに!?」
「康二くんじゃん!おはよー!」
「おはよー!や、あらへん!!え!なんで!?」
「「「…舘さん(様)は?」」」
「…え?阿部ちゃんと岩本くんと康二とラウール!?みんな集まってどうしたんすか!?」
「お前ら、ここでなにしてんの?」
「ふっかさんまで!?」
「着いた。……………って、は?」
「「「あ…。しょっぴー(翔太)…。」」」
「ごめーん!!!遅くなっちった!お待たせ…って、、およ??」
「「「うん、知ってた。」」」
俺の前に現れたのは、舘さんじゃなくて、いつものメンバーたちだった。
あ、どうも。目黒です。
みんながここにいるっていう状況に全然頭が追いついてないし、みんなして「舘さんと待ち合わせしてる」って言うし、もうどうなってんだ?
仕方なく、俺たちは舘さんを待ってる間に、みんなで状況を把握して頭を整理しようってことになって、阿部ちゃんがまず話していく。
「告白したらデートしようって舘様が…」
「え、俺も」
「僕も!」
「俺もやで!?」
「…俺もなんだけど」
「え、俺付き合えたと思ってたんだけど」
「ふっか、お前は一番無い」
「そーだそーだっ!!」
「ぉい、なんでだよ!」
阿部ちゃんの話にみんなが反応して、岩本くん、ラウール、康二、しょっぴーが同じだと答えた。
ふっかさんに関しては、ちょっと言っている意味がわからない。
俺の舘さんだもん。
と、みんなに対してライバル心が芽生え始めた頃に、「みんなお待たせー!」という声が聞こえてきた。
全員で一斉に振り返ると、こちらに駆け寄ってくる俺の、いや、、俺たちの愛しい人。
舘さんは俺たちの近くまで来ると、少し息を整えながらニコッと笑う。
その笑顔に俺たちの心はきゅんと高鳴る。
その声に俺たちの顔はでれっと綻ぶ。
「ごめんね、待ったかな?」
「「「ううん!全然待ってない!!」」」
「そう?ならよかった。みんな今日はありがとう。すごく楽しみ」
「「「俺たちも!!!!!!」」」
リハーサルも何もしていないのに、俺たちの声と言葉はピッタリとハモって重なりっぱなしだ。
阿部ちゃん、三十分以上も前からここにいたって言ってたのに「待ってない」は面白すぎる。
岩本くんはさっきまでむすっとしてたのに、舘さんがここに来た途端にニコニコになる。岩本くん、独占欲強いからなぁ。
ラウールは、この状況すらもう楽しんでるみたい。神経強いな。
康二はいつも通り、舘さんの周りを犬みたいに駆け回ってまとわりついてる。
ふっかさんは、舘さんとまだ付き合えていなかったという現実にずっとショックを受けてて、すごく申し訳ないんだけど、阿部ちゃんと同じくらいだいぶ面白い。
しょっぴーはさっきまでずっと、呆然としてたけど、舘さんが来た瞬間、元気になったみたい。
佐久間くんは相変わらずの感じで、何を考えてるのか全く分からないけど、ラウール同様、なんだか楽しそうにしていた。
「じゃあ、早速行こっか」
舘さんの言葉に俺たちはアホみたいに大きく頷いて、みんなでゾロゾロと歩いていった。
舘さんが岩本くんに着いていくのに倣って、俺たちも舘さんの後ろに続く。
駐車場のような場所まで着くと、岩本くんが大きな車を車庫から出していた。
「照、車ありがとね」
「大きな車はこのために必要だったんだね…」
「うん、大変だったよね、ごめんね…」
「あ、気にしないで…!舘さんが喜んでくれるなら、なんでもするから言ってね」
「ありがと、照は優しいね」
「いひ、うれし」
どうやら岩本くんは、事前に車を借りるよう舘さんから頼まれていたようだった。
俺たち全員で出かけるために、大きな車が必要だったということに、岩本くんは少ししょぼんと落ち込んでいたが、舘さんに褒められるとまた嬉しそうな顔に戻った。
なかなかにわかりやすい…。
全員で車に乗り込んで、舘さんのリクエストでショッピングモールに向かうことになった。
目的地までの道中、何をしようか、という話になって、昔YouTubeの企画でやった「クイズ!正解は舘様」をすることになった。
きっと、みんな考えていることは同じだ。
ここでたくさん正解して、舘さんにすごいって思ってもらいたい。
舘さんが好きってことを今以上に知ってもらいたい。
もちろん、俺もそう思っている中の一人。
ここから、俺たちのアピール合戦が始まった。
みんなの目は、闘志に燃えていた。
舘さんは照れくさそうに、「えー、問題思い浮かばないよ〜」なんて笑っていて、俺たちは全員で、舘さんのその可愛さ全てに愛おしさを募らせて目を細めた。
「じゃあ、一問目ね?俺が飼ってるインコの名前は?」
「「「レインボーローズ!」」」
「ふふっ、みんな正解だね。次、第二問、今俺が食べたいものは?」
「…タコのマリネ」
「わ、翔太すごい。よくわかったね、正解!」
「っし。」
「「「(くそぉ…っ、幼馴染の秘術、テレパシー使ってきやがった…!)」」」
「第三問!」
「デデン!」
「ぁははっ、佐久間ありがとう。」
「!!涼太が笑ってくれた!っしゃぁッ!」
「…ぐぬぬ…佐久間め………。」
「阿部ちゃん、、ここは我慢や…」
「今日の俺、いつもとどこが違うでしょうか?」
「「「…え」」」
ちょっと待ってくれ…。
今日、何かが違うだと…!?
一問目の問題はあんなに簡単だったのに…?!
いきなり難しすぎる問題が来た…。
どうしよう…。
舘さんすごく、そわそわしてる。
俺たちの誰かが正解するのをドキドキしながら待ってるって、そんな顔してる…。
どうしよう、これ間違えたら、だいぶポイントが下がる気がする…。
舘さんに気付かれないように、俺たちは一時休戦して顔を見合わせる。
岩本くんもバックミラー越しに、チラチラと俺に視線を送ってくれていた。
「…わかるやついる…?」
「わかんない…何が変わったの?」
「え、服?」
「ちょっとお化粧してるとか…?!」
「髪型とか…?」
「いつもと一緒じゃね?」
「阿部ちゃん、どう思う?強火宮舘担でしょ?」
俺は助けを求めるように、小声で阿部ちゃんに問い掛けた。
さっきぶりの阿部です。助けてください。
めめに「どう思う?」って聞かれたけど、全然分からない…。
メイクはしてないように見えるし、服装はいつも通りおしゃれだし、それ以外に何か変わったところ……?
ダメだ、、全然分からない…。
こんなに難しくて、一歩間違えれば相手を傷つけちゃうかもしれないクイズ、初めてだよ…。
ほんとに困ってる…。
でも、この前、未成年の主張のロケで「髪切った?って聞いて欲しい」って言ってたし、イチかバチかの賭けで…!
これでもし違ってても舘様を好きな気持ちは本当だから…っ!!
俺は、表情はなんとか平静を保ったように見せながら、恐る恐る口を開いた。
「もしかして、髪切った…?」
俺がそう答えると、舘さんは少し不満げに眉を寄せて、頬をぷくっと膨らませて言った。
「……切ってないもん」
…終わったァァァァァァァァァァ!!!!
切ってないって…。
切ってないんだって……。
今日は切ってないんだってさ………。
一生懸命作ったポーカーフェイスが少しずつ崩れていく。
「…ぇ、ぁ、ぅそ…」
思わず漏れてしまった言葉に舘様が反応する。
「嘘じゃないよ、切ってない。ねぇ、阿部。ちゃんと見て?わかんない?」
バレてる?俺が動揺してるの、絶対舘様にバレてるよね?どうしよう。
もうダメだ、逃げられない。
舘様の期待が次から次に追いかけてくる。
でも、ほんとにわからないの…。
間違った答えを何度も繰り返して、これ以上舘様を傷付けてしまうくらいなら…。
あぁ、もう、いつもうまくいかない…。
俺は、これで何回目だろうかという、舘様と普段やり取りしていく中で「やっちゃった」と思った時に発する、お決まりの言葉を舘様に小さい声で伝えた。
「…ごめんね」
舘様よりも後ろの席に座ってて良かった。
俺は舘様に見えない一番後ろの席にうずくまって、しくしくと泣いた。
「あべちゃァァァァァァアんッ!!」
「…さくま…骨は拾ってくれ……ぐすっ……」
また会ったね!佐久間さんだぞ!
再起不能になった阿部ちゃんと、朝からずっとテンションが落ち切ったままのふっかをめめに任せて、俺たちはショッピングモールの中を自由に歩き回っていった。
俺と照と康二とで、涼太を挟んで涼太の好きそうな服屋さんを順番に見ていく。
涼太の目はずっとキラキラ輝いていて、すごく可愛い。
際どいトップスとか、かっこいいとんがった靴とか、「わぁ!これいい!」って興奮しながら手に取っていく涼太を、俺たちはこの上なく幸せな気持ちで眺めてた。
そしたら、涼太は急にくるっとこっちに体を向けて、柄違いの二つのボトムスを俺たちの前に見せて問い掛けた。
「ねぇ、このボトムス。チェックかドットかどっちがいいと思う?」
…ぇえええー…………。
これ、試されてんの…?!
俺たちは涼太に背を向けて、円陣を組むみたいに肩を抱き合わせた。
「…どっち!?」
「わかんないよ!」
「舘に似合う方を言うたらええんか!?それとも、舘の好みの方を選んだらええんか!?」
「どうする…!?そう長くこうしてはいられないじゃん…?!」
一回首を捻って、ちらっと涼太の様子を伺うと、涼太は、放っておかれているのが寂しいと言うようにむすっとして、こっちをじーっと見ていた。
うぅ…そんな顔も可愛い…。
でも、今はそんなにじっと見つめないで……。
追い詰められてるような気持ちになってくるよぉ…。
早く決めないと…。
「どうする…どっちだ。多数決で決めよう。」
「俺、チェックだと思う。」
「照はチェックね。康二は?」
「俺もチェックやな。舘ならそっちの方が似合うと思うねん」
「えぇーっ!俺ドットがいいと思ったんだけど!?ドット着てる涼太絶対可愛くない!?」
「お前が多数決にしようって決めたんじゃんか!」
「そうだけどさぁ!」
「やめやめ!ここで喧嘩せんとって!!照兄、チェック言うてきて」
「何で俺が!」
「お願いやって!」
「…はぁ、、、わかったよ…。」
岩本です。今、絶賛ビビリ中です。
康二に頼まれて、俺が代表で答えることになったんだけど、もし、その答えが舘さんの気に入らなかったらと思うと、不安で仕方ない。
でも、いつまでも答えないわけにいかないし…。
チェックかドットか、イチかバチか。
もし舘さんの欲しかった答えじゃなかったとしても、、それでも俺は!
舘さんを愛してる!!!
よし!チェックって言うんだ!岩本照!!
俺が口を開きかけた瞬間、舘さんの視線がドット柄のボトムスに向いて、俺が今さっき固めた意志は簡単に揺らいだ。
俺が出した答えは……。
「…どっちも似合うよ……?」
「ふふ、ありがとう。それよりさ、ちょっとお腹空いてきちゃったね。照と一緒だし、せっかくだから、甘いもの食べに行こう?」
「……うん」
全く聞いてない!!!!!!!!!!
えぇ!?どっちがいいかは、もうどうでもいいの!?
まじかよ……。
いつだって舘さんを喜ばせたくて、笑ってほしくて頑張るけど、いつだって空回りばっかり。また、満足のいく結果は得られなかった。
でも、そうやって簡単には手に入らなくて、思い通りにならないからこそ、余計に欲しくなる。
好きが募っていく。
軽い足取りでフードコートへ向かっていく、舘さんのその後ろ姿を夢中で追いかけた。
またまた邪魔すんで〜。俺やで!
俺たちは今、フードコートでクレープ食っとんのやけど、なんや気持ちが晴れん!
まず第一に!今日は俺と舘の二人っきりやと思っとったし、みんながおるなんて聞いてへんわ!
でも、まぁ、みんな舘のこと好きなら、そらしゃあないわな。
流石にライバル多すぎやけどな?
それと、さっきあんだけ俺たちを悩ませたんに、結局舘は手ぶらで美味しそうにクレープを口いっぱいに頬張っとる。
リスみたいで、めちゃめちゃ愛しいねんけど。せやけど、舘…。
聞いといて、どっちも買わへんのかい!!!
……舘が楽しいんやったら、もうそれでええか。
気まぐれな舘も、結局俺の目には、全部めっちゃ可愛く写ってまうねんから、もう末期やな。
俺は、舘の幸せそうな顔を見ながら、チョコバナナ味のクレープを一口齧った。
一日中施設の中で遊んで、夕方頃元気を取り戻してきたふっかさんが、ラウとしょっぴーと合流して、俺たちのとこへ来た。
「そろそろ代われ」
ってしょっぴーがむすっとした顔で言うてくるから、俺たちは舘と一旦別れて、他に行きたいところがあると言うさっくんについて行くことにした。
ゲームセンターでふっかが得意げにUFOキャッチャーで次々に景品を取っていく。
涼太は「すごいすごい!」と何度もふっかを褒める。
それに気を良くしたふっかは、「舘さんもやってみる?」と言い出す。
「俺、こういうのあんまりやったことないから、教えてくれる…?」
「〜っ、いいよぉ♡」
「ありがとう」
涼太の無自覚な上目遣いは、ふっかの眼球にクリティカルヒットした。
完全に舞い上がったふっかは、涼太を機械の前に立たせて、腰に左腕を回し、後ろから抱き締めるような体制で、ボタンに触れる涼太の手に自分の右のそれを重ねた。
その瞬間、俺とラウールは、同時にふっかの頭をぶっ叩いた。
「ッでぇ!!ぁにすんだよ!!!」
「調子乗ってんじゃねぇ。触んな」
「そうだそうだー!ずるいよーっ!!!」
「いいだろー!今は俺だけの舘さんなの♡」
「うっざ。破滅すればいいのに。」
「今度ふっかさんのラーメンに大量のハチミツ入れとこ」
「翔太は言い過ぎだし、ラウールは陰湿だなおい。流石に泣くよ?」
そんな俺たちのやりとりは全く持って聞いていない涼太は痺れを切らせて、ふっかに訴える。
「ねぇ、ふっか!早く教えて?」
「ん〜、ごめんごめん♡」
ふっかはデレデレと鼻の下を伸ばしながら、正面に向き直った。
あ、こいつ、俺らのこと見えてないふりしてやがる。
マジで覚えとけよ?
ほんとにハチミツ入れてやる。
やっほー!ラウールだよ!
ゲームセンター中の景品を、舘さんとふっかさんがほとんど取り尽しちゃったくらいで、スマホを確認するともう18時になりそうな時間だった。
「舘さん、なんか欲しいのある?」
「んー、特に無いかな。ふっかがほとんど取ったんだから、ふっかが持って帰りな?」
「…ぅん…そうする……ぐすっ………」
「ハハァッ!!ざまぁ!」
「キャハハ!かわいそう!!!」
「…お前らほんと血も涙もねぇな…。」
ゲームセンターの近くに置いてあったベンチに四人で座りながら、僕はもう一度スマホを取り出して、みんなにも時間を教えてあげた。
「ねぇ、みんな!もうこんな時間!」
「ぅわ、ほんとだ」
「あらま、そんな経ってたの?」
「すごい楽しかったね!」
「なんか、涼太と一緒にいると一日、あっという間だわ」
ふっかさんが舘さんに声を掛ける。
「ねぇ、舘さん」
「んー?」
「俺たちと今日一日一緒にいて、どうだった?」
「考えたいって言ってたし、今日、なにか答え出た?」
「そうだよ。俺たち涼太の返事待ってんだぜ?付き合ってみてもいいって思えた?……ってスマホいじってる…!?」
しょっぴーの言葉に釣られて、僕たちは舘さんに視線を移した。
舘さんはスマホに夢中で、僕たちの声なんて全く耳に入っていなさそうだった。
「舘さん聞いてないよね、これ…。」
「うん。多分聞いてない。」
「なんか嬉しそうな顔してない?」
「うん、すげぇ可愛い。」
「…もしかして……涼太、好きな奴とやり取りしてたりする…?」
「えぇっ!?僕たち今デートしてるのに!?舘さん他に好きな人いるの!?」
「いやいやいやいや!一旦落ち着こ?そんな…まさか、ね……?」
イケメンの代名詞と言えば俺、深澤だよ。
舘さんの好きな人、、誰…?
今俺が目の前にいるっていうのにスマホばっかり見てニコニコしてるってことは、それは俺じゃないってことでしょ?
もしくは、元恋人とか…?
えー、でも舘さんって引き摺るタイプには見えないけどな…?
あと思い当たる人と言えば……亀梨くんとか?
それか、もう答えが出て、俺たちの中の誰かと連絡取り合ってる?
うわぁ…思い当たる人がどんどん出てくる…。
しんどいってばぁぁぁもう…。
気になってしょうがない。うん、もう聞いちゃおう。
だって、今日、告白した俺たちに「デートしてから決めたい」って言ったのは舘さんなんだもん。
俺たちに可能性くれたってことでしょ?
それに、なによりも今目の前にいる俺たちに集中してよって思うもん。
誰なの?
元恋人なら、その人とまだ連絡取り合ってんの?もう切れてんの?
亀梨くんなら、その気持ちは好きなの?尊敬なの?愛してんの?
でも、自分で聞く勇気はなかったから、ここは任せようと、ラウールの肩を叩いた。
「よし、ラウール。聞いてこい。」
「えぇっ!?僕が!?ふっかさんが聞いてきてよ!」
「バカ、お前こういうのは年下のラウが可愛く「誰とやりとりしてるの?」って聞く方が角が立たないんだって」
「そうだぞラウール。聞いてこい。」
「えぇー、しょっぴーまで……?」
「あとで美味い飯、腹一杯奢ってやるから…!な?!」
「…わかったよもう…。マジで役に立たねぇお兄ちゃんたちだな…。」
「いや、聞こえてんのよ。せめて声量落とそ?」
「ねぇ、舘さんっ!」
「なぁに?」
「今やりとりしてる人って、だぁれ?」
「よし、いいぞラウ!かわいい!」
「うん、可愛い俺が見込んだだけのことはある。ラウール、可愛いぞー」
きゅるぅんってした目で舘さんを見つめながら、誰と言葉を交わしているのかをラウールが探る。
舘さんは、少しだけ困ったように笑って答えた。
「えっと、それは言えないかな」
ラウールは、なんて言ったらいいか分かんなくなっちゃったみたいで、苦し紛れに口をグギギギ…って開いて返事した。
「だっ、だよねぇ〜!……ごめんね…?」
あ、ども。渡辺です。
今、俺は、絶望のど真ん中に突っ立ってます。
これ、黒だ。
元恋人にしろ、亀梨くんにしろ、俺たち以外にもライバルがいることが確定した。
もぉぉぉぉぉぉー!!!!
どんだけモテんのこいつ!!!!
もう表情さえ取り繕えない。
でも、幼馴染やってる涼太なら、今日一日中、俺が頑張ってポーカーフェイスしてた、その裏の顔まで見透かしてたんだろうなとも思うから、もう何でもいっかって少し投げやりな気持ちにもなる。
でも、じゃあ、何で今日こいつは、そのスマホ越しのやつは呼ばなかったんだ?
もしかして、そいつは涼太の気になってる相手じゃ無い…?
少なくとも、こいつは今日俺たちをデートに誘ってくれてるわけだし、なんだかんだ言って、俺たちのこと好きなんじゃねぇの?
今日一日の刺激の強い出来事と、こいつらとの熾烈な戦いでぶっ壊れそうな頭を、最後の力を振り絞って回す。精一杯都合のいい方にばっかり目を向けて、なんとか意識を保つ。
毎日毎日、俺は、いや、俺たちはお前に恋をしてる。
お前の一番になりたくて、お前の「特別」が欲しくて、いつだってがむしゃらなんだ。
今まで繰り返してきた「ごめん」は、「好き」の裏返し。
お前が望む答えを出せなくって、バカで不器用かもしれないけど、俺たちの愛はほんとなんだって、気付いてよ。
やり切ったような、やるせないようなそんな思いで、ベンチから立ち上がった涼太に俺たちは項垂れながら着いていく。
目黒、阿部ちゃん、佐久間、照、康二と合流して、俺たちは車に乗り込んだ。
車がサーっと静かな音を立てながら走っていく。
誰も、何も話さない。
それぞれが一様に今日の反省やら、モヤモヤやらで頭の中がいっぱいなのだろう。
そんな静寂を破るように涼太がぽそっと呟いた。
「みんな、今日はありがとね」
「すごく楽しかったよ」
「それで、すごく言いづらいんだけど…」
来る。
落ちて来るぞ。
ギロチンの刃が。
あぁ、一思いに言ってくれ…。
「…みんな選んじゃダメかな……?」
「「「…ぇ?」」」
発された涼太の言葉で、暗い車内に異様な空気が立ち込めていった。
つづく…かも………?
お借りした楽曲
キッタキッテナイ/Snow Man様
コメント
5件
❤さま可愛かったです!!!!
気まぐれな❤️さんが可愛いしとっても最高でした!!!
今日の俺どこが違う?で、あれ…なんか聞いたことあるぞこれ…と思ってたらやっぱりキッタキッテナイで最高でした面白かったです!!😂✨