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第5話:過去の影:ゾムの嗅覚
登場人物
ゾム:暗殺者
ロボロ:監視/情報分析担当
ひとらんらん:一般兵、農業担当
グルッペン:WrWrd軍総統
トントン:書記長
本文
深夜、監視室。潜入任務から戻ったゾムは、機密情報を扱うロボロの元を訪れた。
ゾム「おい、ロボロ。このリスト、ちょっと見てくれ」
ゾムがテーブルに広げたのは、任務先で回収したという、薄汚れた紙の束だった。
ロボロ「ん? ゾム、お前いつの間に帰ってきたんや。お疲れ。……どれどれ……これは、W国東側の島国の特殊工作隊のリストか?」
ゾム「ああ。潜入先で偶然手に入れたモンや。まあ、機密扱いではない古いデータだが、こいつがちょっと気になってな」
ゾムは、リストの一行を指差した。
ゾム「ここ。『隊員名:ラン。特技:刀剣術、医療、暗号解読。抹消済み』……この『ラン』って、ひとらんの『らん』やろ」
ロボロはリストの文字を凝視した。その情報と、トントンが預かっている暗号文書、そしてゾムが目撃した異常な医療スキルが、脳内で一つの線に繋がる。
ロボロ「……まさか。ひとらんらんがそんな特殊な訓練を受けてたなんて、あののんびりした農業好きには見えへんやろ」
ゾム「トントンがひとらんの部屋で見つけたっていう暗号文書。俺が見たあのプロ並みの応急処置。そして、手首のナイフの傷」
ゾムはフードの奥で冷たく笑った。
ゾム「全部繋がったやろ、ロボロ。あいつは、W国とその傘下の島国から送られてきた、特殊工作員や」
ロボロ「……トントンに報告や。グルッペンにもすぐに伝えなあかん」
その日の昼過ぎ。畑で農作業をするひとらんらんの元へ、ゾムがふらりとやってきた。
ゾム「よう、ひとらん。今日はまた、大量に野菜育てとるな」
ひとらんらん「ゾムか。うん、収穫が楽しみだよ。君の分も残しておくからね」
ゾム「……ラン」
ゾムが突然、静かに、そして鋭くその名を口にした。
ひとらんらんは、鍬を持つ手を完全に停止させた。彼の瞳の奥で、何かが激しく揺れたが、すぐに冷静な笑みを浮かべた。
ひとらんらん「……? ゾム、どうしたんだい? 何の話?」
ゾム「別に。ただ、前にW国で聞いた、東側の島国の言葉や。なんやったかな。**『仲間』**っていう意味だったか?」
ゾムはひとらんらんの目から目を離さず、ゆっくりと話す。ひとらんらんは汗を拭う仕草をしたが、その額には汗一つ流れていなかった。
ひとらんらん「そうなんだ。詳しいんだね、ゾム。僕は……ただの農夫だから、その国の言葉なんて知らないよ」
ゾム「フーン。そうか」
ゾムはそれ以上追及せず、くるりと背を向けてその場を離れた。ひとらんらんは、ゾムの背中が見えなくなるまで、動くことができなかった。彼の心臓は激しく鼓動し、スパイとしての正体が露見寸前であることを悟った。
夕方。総統執務室には、グルッペン、トントン、そしてゾムとロボロが集まっていた。
ゾム「というわけで、グルッペン。ひとらんらんはW国傘下の特殊部隊の元隊員で、暗号文書と専門スキルを持っている。十中八九、スパイや」
トントン「オスマンも、W国の機密シンボルに関わる装飾品を持っていたことが鬱先生の調査で判明しています。さらに、守るべき家族が人質になっていると、ショッピに打ち明けている」
トントン「彼らの隠し事、すべてがW国に繋がっています。グルッペン、どうしますか」
グルッペン「フフッ……面白い。やはり、そうきたか」
グルッペンは椅子に深々と座り、冷徹な笑みを浮かべた。
グルッペン「しかし、彼らはまだ、我が軍に決定的な害をなしてはいない。むしろ、オスマンの外交手腕は本物だ」
グルッペン「トントン、ゾム。よく聞け。やつらは**『生きたまま』**泳がせておく。そして、偽の情報を流し続けろ」
グルッペンは、二人を徹底的に利用し、そして試すことを決めた。彼が仕掛けた**「決別の罠」**が、ここから始まる。
ここまでの隠し事の状況(5話終了時点)
オスマンとひとらんらんの隠し事5つが、メンバーによってバラバラに露呈した。
グルッペンは彼らをスパイと断定し、利用するための**「罠」**を仕掛け始めた。