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ひより
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#ロマンスファンタジー
Jasmine
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しばらくの間、私たちは言葉もなく抱き合っていた。 そのとき――。
パキッ。
「……え?」
小さな音が響いた。カイル殿下が身体を離し、鞄へ手を伸ばす。取り出した二つの幻装石を掌に載せると、その表面には細い亀裂が走っていた。
パキ、パキッ――。
亀裂がみるみる広がり、二つの石は掌の上で細かな欠片へと砕けていく。 それと同時に、アッシュグレーだったカイル殿下の髪が根元から黒へ戻り始めた。 琥珀色の瞳も――澄んだアイスブルーへ。
「……効果が切れたな」
「ちょっ、ちょっと待って!? 私も!?」
慌てて部屋の姿見を覗き込む。 ハニーブラウンだった髪はプラチナブロンドへ。 紫色の瞳も、鮮やかなエメラルドグリーンへ戻っていた。
「うそでしょう!? こんなに目立つ姿でどうやって帰るんですの!」
「落ち着け。今は部屋の中だ。店からフード付きのマントを買い取る」
「行き当たりばったりすぎじゃない!?」
ベッドの端に座り、思わず頭を抱える。その隣へ腰掛けたカイル殿下が、じっと私を見つめていた。
さっきまで、私たちは“カイ”と“ソフィ”だった。ただの町人同士として手をつないで、屋台を回って、笑い合って。けれど今はもう――。
「……残念ですわ」
「何がだ」
「せっかく今日は、ただの恋人同士でいられたのに」
ぽつりと呟く。すると、彼の指先が私の頬へ触れた。
「違う」
「……え?」
「姿が違っても、俺は俺だ」
澄んだ青い瞳が、まっすぐ私を捉える。
「お前も同じだろう?」
「…………」
胸の奥が、トクンと小さく跳ねた。姿が変わっても。名前を変えても。目の前にいる人まで、別人になるわけじゃない。
「……それは、そうですけれど」
私は彼の頬へ手を添えた。
「でしたら――」
少し顔を近づける。
「今度は、私の知っている姿でキスしてくださいませ」
彼の瞳が、わずかに細められた。
「望むところだ」
そのまま引き寄せられ――唇が重なる。
「……ん……っ」
一度唇を離すと、彼が少し困ったように眉を下げる。
「ところで、ソフィア」
「何ですの?」
「……こんなに明るいままで、本当にいいのか?」
薄いカーテン越しに、夏の夕陽が部屋いっぱいに差し込んでいる。日没までは、まだ時間がありそうだ。
「……殿下のほうこそ、日没まで我慢できますの?」
不敵に口元を吊り上げ、人差し指で彼の胸元を軽くなぞる。
「……っ」
「それに、さっきの酒場での一件もありますし。おしおきするしかないようね?♡」
「無茶な。あれは向こうから――」
言い訳ごと唇で塞ぐ。
「……ん……っ」
本当は、傷ごと彼を優しく抱きしめたい。けれど同時に、その澄ました顔をどうしようもなく崩したい。両手で彼の頬を包み込み、舌を深く絡め合わせる。
奪うような口づけを交わしながら、ブラウスのボタンを外し、スカートを足元へと滑り落とす。レースの下着姿のまま、ためらいなく彼の太腿の上へと跨がった。
カチャリ、と革ベルトの金具を外し、ズボンごと引きずり下ろす。露わになった肌には、やはり無数の古傷が刻まれていた。
下着越しに、張り詰めた箇所を指先で軽くつつく。
「……こっそり強壮薬を飲んだんじゃないでしょうね?」
「……の、飲んで……ない……っ」
耳元で囁く。
「ふーん? こんなに元気なら、やっぱりあの薬はいらないようね?」
「っ……からかうな……」
古傷へ視線を落とす。少しだけ表情を引き締め、傷跡の一つ一つへ、慈しむように唇を落としていく。鎖骨、胸板、脇腹――。最後に太ももの付け根を撫で上げると、カイル殿下がビクッと腰を跳ねさせた。
「……くっ……」
「ここ、すごく凝ってるわよ?」
下着を下げ、剥き出しになったそれを手のひらで包み込む。裏筋から先端へ舌先を這わせると、彼は唇を噛んだ。
「……あ……ソフィア……っ」
口に含みつつ、先端から滲む雫を、舌で丹念にすくい取る。
「……っあ、待て……そんな風にされたら……っ」
「いいのよ、このまま出しても♡」
「駄目だ……っ、俺も……お前を気持ちよくしたい……」
(なによそれ……健気で可愛すぎるじゃないの……!)
きゅんとした。カイル殿下が上体を起こし、私の下着の背中のホックを外した。首筋から鎖骨、そして胸元へと、唇が落ちてくる。
「……んっ……」
胸元へ沈んだ舌が、先端を転がし、吸い上げる。 甘い痺れに、私の口からも切ない声が漏れ出した。
「あっ……ん……っ」
「……随分、俺のことをからかったな」
「な、何ですの……」
「俺ばかり余裕がないような言い方をしていたが――」
ずらされた下着の隙間へ、長い指先が滑り込む。そこへ僅かに触れただけで、とろりとした蜜が糸を引いた。
瞳が、意地悪そうに細められる。
「お前も同じだろう」
「……わざわざ言わなくていいのよ!」
思わず、その手を払いのけた。
(……むかつく)
(さっきまであんなに可愛かったくせに、もう調子に乗ってるじゃない!)
「……もういいわ」
「何がだ」
「あなたには、一度ちゃんとわからせる必要があるようね?」
ぐっと体重をかけてベッドへ押し倒した。
「おい、待て──」
先端をあてがい、一気に腰を落とす。強い圧迫感とともに、背中をぞくぞくするような痺れが駆け抜けた。
「……っ、はぁ……っ!」
抱きつくと、吐息が私の耳朶を打つ。二人の心臓の鼓動が、混ざり合う気がした。
胸元に指先を這わせ、彼の突起を弄びつつ、見せつけるようにゆっくりと腰を揺らし始める。
「あっ……く……っ」
「ふふっ。ここは皇宮じゃないんですもの。もっと声を出せばいいのに♡」
「そんなこと……できるわけ……あっ……」
悔しそうに眉根を寄せながら、荒い息を漏らす。
(ああ……)
(そうよ、これよ)
普段の冷静沈着な面影など微塵もない、熱に浮かされた目。息を乱しながら、ただ私だけを見つめている。
(……この顔が見たかったの。あなたの一番無防備な顔……)
勝利を確信した、そのとき。
「……っ!」
腰をぐっと掴まれ、動きを止められた。
「……言っただろ。俺も、お前を気持ちよくしたいと」
「え……っ!?」
ぐるりと視界が反転する。私はベッドに背を預け、彼が覆い被さっていた。けれど――すぐには動かない。ようやく動き始めたと思えば、その動きは驚くほど緩やかだった。
「ん……っ……?」
明らかに、いつもの激しさがない。浅いところばかりで、一番欲しい奥底には届いてくれない。身体の芯は、切ない渇きに取り残されたままだ。
「ちょっと……?」
「どうした?」
涼しい顔で見下ろされ、ようやく気づく。
(これ……絶対、わざとやってるわね……!)
(自分からおねだりするなんて……恥ずかしいけれど)
(でも――今は、恋人なんだもの)
私は彼の首へ腕を回した。
「……ねえ。お願いがあるの」
「……何だ」
「恋人なんだから……」
目が合うと、やっぱり恥ずかしくて、一度だけふっと視線を逸らす。それでも、ぐっと引き寄せた。
「キスしながら……最後まで、して……?」
一瞬、カイル殿下の目が見開かれた。
「……言ったな」
(……あ。もしかして私、自分で猛獣の鎖を外しちゃった?)
逃げ場のない、深く貪るような口づけ。
「んむっ……!? ふーっ……んんっ……!!」
容赦のない深さと速度で、腰が打ち付けられた。身体の芯まで揺さぶられるみたい。部屋中に響き渡る、甘く淫らな水音とベッドの軋み。一番敏感な場所を的確に抉られるたび、頭の中が真っ白に弾け飛んでいく。
私は彼の首にしがみつき、足を絡め合わせた。繋がった場所から、燃えるような熱が全身を駆け巡る。
「ん……っ!」
内側で脈動が伝わり、熱が広がった。
「……っ、はぁ……っ……!」
ようやく唇が離れる。彼は崩れるように私の首筋に顔を埋めた。荒い息が、肌をくすぐる。
そのまま、どちらからともなく軽く唇を重ねた。ちゅっ、と触れ合うと、胸の奥がじんわりと温かくなった。
(……恋人って、こういう感じなのね)
コメント
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うわああ第46話読み終わった…!!😭💕 変装が解けて本来の姿に戻った二人、でも「姿が違っても俺は俺だ」って言い切るカイル殿下がかっこよすぎる…!! ソフィアが「私の知ってる姿でキスして」っておねだりするところ、めっちゃ胸きゅんだったよ…💘 傷を慈しむようにキスするシーンも尊い…お互いを想い合ってるのが伝わってきて、なんだかこっちまで温かい気持ちになったよ🥺✨ そして「やっと恋人らしくなった気がする」って最後の一文、本当にその通りだね…! お似合いの二人、ずっと幸せでいてほしいな🌸