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「なぁ角名!聞いたか、3組の谷口おるやろ?あのなんかめっちゃ美形なやつ、」
「うんいるね。知ってるけど、どしたの?」
「驚くなよ?あいつ1組の齋藤と付き合ったんやって、まー今のご時世あってもおかしくないよな〜」
「へぇー…そうなの、まぁいいよね。お互い好きなら。否定する理由もないし」
最近は同性愛、も認められ始めているようで。
自分には縁のない話。きっとそう。
普通に元カノだっているし、彼氏?作る理由なんて、ない。
…そう言い切れればいいけど。
「すなぁ」
「んなにっ。ひっつくな」
俺の肩に全体重をかけて名前を呼ぶ治。
平常通りと言えば平常通りなんだけどね。
「ええやん…さむいねんもん」
「馬鹿か、多少朝晩冷えるようになったからって……」
治は不貞腐れたような顔をして自分から離れて少しだけ距離を取った。…確かに朝晩は20℃を下回って長袖が必要になるくらいの気温になったけれど昼間はまだ暑い。
「…でも俺すなにくっついてたい」
「は、な、何急に。変な事言うなよ。ほんと、何言ってんの、」
「べつに変な意味とちゃうよ、」
嘘つけ。全部わかってるから、
首横に振っても無駄だからな、
「変な意味だろうが……兎に角離れてて、ほんと、」
ほんと読めない。
あと普通にしょぼんってするのやめて欲しい。 罪悪感残るし……
「うわっ、何っ!?はなっ離せって、勝手に温もり感じんなバカっ」
「うお。すなぬっくぬくやな」
「お前は人の目があるってことを覚えて頼むから、……あと離して」
ここ最近本当に治との距離が近い。
ソーシャルディスタンス、って言葉。教えてあげたいくらい。
溜息を吐きながら机に突っ伏していると、クラスの男子が俺の机にダンッ、と手を置いて話し始めた。
「お前っ治と付き合っとるんか!?」
「は?」
は?俺と?治、が?
「、それ誰かのでまかせだからっ、しかも男同士が付き合う?馬鹿じゃないの!?」
それを窓辺に座っている治が聞いていたのか、
「そんなんでまかせや、違う言うといてくれんか」
と。静かに話した。俺の手を引っ張って。
「はあっ、?どういうつもりだよ、なんで俺とお前が付き合ってることになってるんだよ、……っ」
正直わからなかった。困惑してた。
何が何だか分からなくなって自然と涙が止めなく頬を伝って地面に落ちる。
それを治は自分の袖で俺の涙を拭ってただ俺を見つめてる。
「そういうとこだよっ、ばーか、ばかぁ…っ、そういうとこきらい…周りの目くらい気にしろよ、っだからこんなことになってんだろっ……」
「、周りの目なかったらいいん?」
「そういうことじゃねぇよ、っ…ばか、ほんとばか、」
ひっ、ひっ、と小刻みな嗚咽が漏れる。
だって、そんなこと言われたら、誰だって戸惑うでしょ。
「すな」
「なに、もう変なこと言わないでよ、」
「ばからしいけど、ほんまにおれ角名すきや、…あかんの、」
あぁ、この目嫌だなぁ、
YESって、言わせようとするそんな目。
ぜんぶわかってるんだよ、治がやろうとしてる事なんかずうっと昔から知ってる。
「なんで、どこがすきなの、なんですきなの…、生半可な気持ちだったら許さないから、」
焦燥感に駆られて自分はそう口にする。
治は俺の手をそっと握って真っ直ぐ貫くような目を俺に向けて、
「生半可とちゃう、ほんきやから、」
そう言ってた。
「ほ、ほんっとばか、ばぁーかっ……」
あぁ、…もうだめだよ、
そんなの、YESしかいえないじゃん。
「泣かんで、」
「や……」
治はそっと俺を抱きしめて、何も言わなかった。
抵抗しなかった、からか知らないけど、さっきよりも少し強く抱きしめられた気がした。
その日は部活もなんだかやる気になれなくて
また侑に喝を入れられた。やる気ないのはアンタの片割れのせいだけどね。
「角名いつもに増してチベスナ顔やな、」
「うるせぇよ、黙ってトス練してろ、」
「うわ酷なんやこいつ」
侑は顔を歪めて俺を見てた。
いつもに増してムカつくような気がする。
今日だけ、ちょっとだけ手抜こ。だってこんな日にやる気出せるわけないじゃん。
「なんや角名、体調悪いんか?」
「いや、別に普通…ごめん。心配しなくていいよ、」
やっぱり銀なんかいつもより優しい気が…。まぁ、いつもか。周りに気遣いできるってほんといい。侑も気遣いくらい、できたらいいのに。
「…あざした、」
体育館に軽くお辞儀して靴を履き替える。
「あ」
しまった。教室にお弁当箱置きっぱなしにしてた。思い出してしまった、という罪悪感に苛まれながら教室に戻る。体育館から教室の棟まで少し距離があってなんだか面倒臭い。
「……、治?」
「ぁ。すな、お弁当箱忘れてんで。」
「知ってる。ありがと」
お昼のことがあってか少し、ほんの少しだけ気まずい。今は誰もいない。話すなら、今しかない、のか。
「…すな。さっきの、」
「あーっ、分かってる、いいよもう、……仕方ないから治の芝居に付き合ったげる」
「は、芝居なんかとちゃうけどっ、すな待ってや、」
治が言葉を言い終わる前に教室を出た。
鍵閉めは面倒くさくてやりたくもない。わざわざ職員室に行ってわざわざ担任と話さないといけないなんて。極力話したくないっていうのに。
「……昇降口で待ってるから早くして。1分だから。」
「、っおう」
必死だな、俺のため…に走ってる。
歩けばいいのに、ここからなら行くのに20秒もかからない癖にわざわざ走るの、意味わかんない。ほんとそういうところ理解できない。
「男子高校生が二人で帰るとかばっかじゃないの……、青春もクソもねぇじゃん」
「いいやんかべつに。俺らも今日から晴れてカレカノや、青春もクソもあるやろ」
「っ、だまれっ」
照れ隠しと若干の苛立ちを隠す為に石を蹴った。
「俺寮だから、ここでバイバイだよ 」
「家寄ってええのん?」
「良くねえよっ帰れ」
治は馬鹿だから家に帰って侑と勉強しなーね、と付け足して。
end .