あるいみ初投稿です!
⚠わんく⚠
・みずえな
・死ねたありです
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
最近、ボクの恋人がおかしい
デートの約束も忘れるし、お揃いの指輪を2人で買ったことも忘れる
「あれ?瑞希、どこか行くの?」
「も〜、今日は一緒にショッピング行く予定でしょ〜」
「そうだっけ?おかしいな、覚えてたはずなのにね」
早めに病院行きなよ〜、そうやって軽く受診を勧めたが、何かが引っかかっていた
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
忘愛症候群
愛する人を拒絶し、愛する人に関するすべての記憶を綺麗に忘れてしまう病気
それが絵名から発せられた言葉だった
「でも、瑞希のことは嫌いにならないし、メモとかして、頑張って忘れないようにするから」
やっぱり絵名は優しすぎる。自分がいちばん辛い筈なのに、
「ボクも支えるから、無理だけはしないで」
そう言って絵名を優しく抱きしめた
少しビクッと肩が震えた。ゆっくりと抱きしめ返してくれた体温はまだ温かかった
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
時が過ぎていくごとに絵名の記憶は消えていった
「そろそろ私たちも結婚したいね〜」
「そうだね〜」
(もうしてるよ)
「このカフェ可愛くない?今度久々に2人でデート行こうよ」
「お〜いいじゃん!行こ〜!」
(そこには先月行ったよ)
絵名が記憶を忘れていくとともに、徐々に触れられなくなっていった
キスはともかく、ハグすら出来なくなった
「おかしいね、嫌いなわけないのに」
うっすらとボクに対する恐怖があるのか、小さく体が震えている
“離れた方がお互い幸せなのに”
そう何者か分からない声が訴える
分かってるよ、解ってる。早く別れなきゃいけないのに、体は動かない
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「その声、もしかしてAmia?」
パリンッ
ガラスで造られたコップが音を立てて割れた
とうとう絵名は忘れてしまった。“暁山瑞希”の存在を
「やっぱりえななんだ〜!なんか顔が似てるな〜って思ったんだよね〜!」
「じゃあここAmiaの部屋?結構可愛いね」
「そうかな〜?ありがと〜!」
なんでここにいるのか、とかそういうことを聞かれるんじゃないかって思ってたけど案外気にしてないっぽいな
ここまでくると“他人”としての認識になるかも知れない、そう感じて、「今日から絵名を実家で預けて欲しい」と弟くんにお願いした
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「弟くんからなんて珍しいね〜」
「だから、弟くんは辞めろって、本当に弟になっちまったんだから」
「え〜そうだっけ〜?」
あれから1ヶ月、絵名がいない生活に物足りなさを感じていた時のこと。弟くんから「話があるって」メールが来た
「それで、話って?」
「……1回も絵名に会わなくていいのか?」
「………いいよ。どうせボクのこと覚えてないし」
「んなことねぇよ。アイツ、最近ずっとAmiaが〜 って言ってるけど、アミアってお前だろ」
“暁山瑞希”は忘れてしまった、でも“Amia”は覚えていてくれた
その事実だけでも少し救われた
「だから、もう一回だけでも顔見せてやれよ」
「……そうだね。このあと行っても大丈夫?」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ん、ここが絵名の部屋。多分アイツまだ寝てる」
「ありがと、弟くん」
「なんかあったら呼べよ。今日はなんもねーし」
弟くんは絵名に似て優しい。挨拶に来たときのお義母さんやお義父さんも優しかったし、遺伝なんだろうな
ガチャ
「えな?」
「……スー……スー」
良かった。まだ起きてない。入って突然「誰!?」ってクッションでも投げつけられたらどうしようかと思ってたんだよな〜
「スー……んっ………ふわぁ……彰人〜お腹へっ……誰?!」
「ッッ…」
やっぱりそうだった。絵名は“暁山瑞希”も“Amia”も忘れてしまった
「……弟さんと仲良くさせて貰ってる暁山瑞希です。なんか部屋間違えちゃったみたいで、寝てた時にすみません」
「あ、あ〜、そういうことね、こっちこそうちのバカ彰人がごめんね、彰人ー!!彼女!!!」
知らないと女の子の認識になるよね、仲良くさせてもらってるなんて言っちゃったし
「ッお前な!彼女ーとか叫ぶな!」
「は?!アンタが部屋を正確に教えないのが悪いでしょ?!」
「チッッあ”ーお前なー!」
「もういいよ、彰人くん、私帰るね、今日はありがとう」
「あー彰人が彼女帰らせたー」
「だから彼女とか叫ぶなって!」
賑やかな声が遠ざかっていくように感じた
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
そこから何日経ったのか分からない
ただ、〝絵名がボクを忘れてしまった〟っていう事実が耐えられないほど苦しかった
“東雲瑞希”“東雲絵名”として過ごした日々、
“暁山瑞希”“東雲絵名”として過ごした日々、
“友達”として過ごした日々、
“サークル仲間”として過ごした日々、
どれも幸せだった。君の隣にいれるだけで良かった
ただもう無理だから、せめて最後に罪滅ぼしをさせて欲しい
君の病“忘愛症候群”の治療法、それは
“愛する人の死”
薄れゆく意識の中、最期に見たのは淡い黄赤色の空だった
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ーー!
ーな!
絵名!
「瑞希ッッ!!!」
「うおっ!!」
パリンッ
「…なんで、彰人?」
「1ヶ月前からお前は実家暮らしです〜」
「そんなことはいいから!瑞希!瑞希はどこ!?」
「……お前たちの家だよ。この前、忘れられちゃったって泣いてたぞ」
“泣いてた”その言葉で一気に血の気が引いた
まだ間に合う。意識がなくてもいいから生きてて欲しい。
その一心で実家を飛び出した
途中でクラクションを鳴らされたり足の平に食い込む石があったり、しても気にならなかった
ただ走り続けた
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ガチャ!!
「瑞希ッッ!!」
人の気配がない家に声が響く。そこまで広くない家のはずなのに、なぜか広く感じる
震える足でリビングに向かうけど、瑞希はいない
となると部屋?それとも出かけてる?
何処でもいいから生きてて欲しい。
その願いは打ち砕けた。
「……瑞希?」
リビングに入って少しした所のキッチン。そこに瑞希が倒れていた
隣には
「どうか別の人と幸せになって
愛してる」
そう無気力な文字で書かれた手紙と“忘愛症候群”と書かれた紙。名前には“東雲瑞希”の文字が佇んでいる
私のせいだ。私のせいで。そう自分を責めた
なんで、なんでもっと治そうとしなかった。瑞希も同じ病に悩んでた筈なのに、瑞希は私なんかよりもっと頑張ってたのに、
「ごめんね、私も今いくね」
暁色の空がどうしようもなく愛おしかった
来世はおばあちゃんになるまで愛し合えますように
それが最期の願い
ピンクの空に意識を預けた
Fin
コメント
1件
すごく悲しい話だった。