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月影
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「明……わかったって…」
やっと喋り出した俺の声は聞こえないほどに掠れている。だが明には届いた。
「少し、だけだけど……」
向こうも緊張しているみたいだ、呼吸をするたびに体が震えている。
「博雅……僕達…」
(言わないでくれ…)
その気持ちとは裏腹に“何か”を期待している自分もいる。明の口が開く瞬間もまともに姿さえ見れず、俯いたまま耳を澄ます。
「付き合ってるんだよね…?」
ついに……
ついにその言葉が発せられた。たった一言に俺の身体中に血液が巡って赤くなり、汗が噴き出す。
「……ぁ…」
「あぁ……そうだ…」
もう戻れない、
これ以上嘘を続けるくらいなら正直に言って……それで……
それで、
「……っ……くっ…」
「博雅……泣いているの…?」
「ごめん……明…俺のせいで…」
(最後まで自分に出来ることが出来なかった…)
「俺はな……別れたくない、一緒にいたい、何も出来なくても…」
泣きながらも言葉を続ける
「自分勝手なのはわかる……でも…」
急に肩から温もりが伝わってくる。驚き顔を上へると目の前には明の顔が目の前に…。
「大丈夫……全てが博雅のせいってわけじゃない…」
その顔は、いつもの明に戻っていた。
「僕も博雅と一緒にいたいよ…ずっと、ずっと」
「でも…男の人が怖いのは抜けてないみたい…」
言う通り、明の手には微かに震えが残っている。その手に自分の手を……出して少し引っ込める、触る資格がないように思えるが……。
精一杯の気力を振り絞って明の手を握る。優しく、壊さないように、ゆっくりと包む。
「明……俺達は……今は別れたほうがいい……」
「…っ…そ、そっか……」
「でもな明……」
「俺は絶対……友人から…いや、初対面として…お前ともっと深く関係を築きたい…」
「それまで…」
「まずは知り合いから……付き合ってくれないか…」
「博雅」
「もちろん」
それから俺達は時間もわからないほどのハグをした。その温もりを離したくなくて、一人にして欲しくなくて…………
途中で明が俺に質問をした。
「どうして…そこまで僕を気にしてくれたの…?記憶が戻るかもわからなかったのに…」
「それはな……」
真実の代わりに優しい嘘を、
でもたまにはーー
“偽りのない真実”も必要なのかもしれない。
大切な人を守るためにも。
ーー真実の代わりに優しい嘘を END
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