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ゆかボンド
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──────メテヲさん視点──────
メテヲが10歳になった時。その時、メテヲには妹ができた。小さい光から、段々と輪郭ができ始めて、形をなし、やがて”生命”としてこの世に誕生する。妹の目は薄い黄緑色で、まるで翡翠の宝石のような美しさだった。瞳の中はキラキラで、吸い込まれるかのように見続けてしまう。
「メテヲ、君は今日からお兄ちゃんになるんだよ。」
そっと、ガン兄から耳打ちをされる。───メテヲが、お兄ちゃん。自身がお兄ちゃんと呼ばれることに実感なんてなくて、けど、自分がお兄ちゃんになれるなんて嬉しくて、その言葉を何度も繰り返してしまう。心の中がポカポカするような、そんな暖かな感情がメテヲを包み込む。そうか、これが”幸せ”なんだ。言葉では知っていたけれど、どこか実感するのが難しかった感情を、今日、いちばんそれを体験し、感じた。それと同時に、メテヲには使命感が現れた。
───この子を何としてでも守ろうと。それが、お兄ちゃんなんだ、と。
そう、新たに決意し、妹の愛らしい顔を見続けた。
メテヲの妹は『ぐさお』と、命名されたらしい。なんでその名前なの?と、聞いてみた。そしたら、ぐさおが生まれた日は神様の祝福が最も近い、縁起の良い日だったから、と言われた。よく分からなかったけれど、ガン兄が、この子には神様の祝福がありますようにって意味なんだよ、と教えてくれたおかげで、メテヲはようやくその名前に納得がいった。
妹が生まれた影響でメテヲは少しずつ変わっていった。まず、お手伝いをよくするようになった。勉強も今まで以上に頑張ったし、マナーだって、普段の生活でも気をつけるようにした。まだ生えきってない翼で、いつでも飛べるように練習もしてる。こんなに頑張っているのは、ぐさおにかっこいい兄、と言われたいからだった。だから、理想の兄になるためにどんな些細なことにも必死に飛びついて、完璧を求めるようにした。お母様からは、頑張るのはいいけど、疲れすぎないようにね、と少し注意されてしまったが気にしない。だって、メテヲは体力にだけは自信があったから。勉強も、マナーも、ガン兄よりは劣っていたけれど、体力だけならガン兄よりも多かったから。それだけが自慢だった。
だから、メテヲはいっぱい、いーっぱい頑張った。
けど、周りの評価は少しおかしかった。いつもよりも積極的に話に入り、ダンスをそつなくこなし、愛想笑いも忘れなかった。こんなにも積極的になにかすることを見たことがなかった周りの天使は口々に
「これが神様の加護なのね。」「立派になったなぁ。」「神様のおかげだな!」「いいなー。俺も神様の加護欲しい〜!」「はぁ。イヴィジェル様らは努力する必要がなくて羨ましいわ。」
「「やっぱり神様の加護のおかげだな」」
と、口々にメテヲの行動を神様のおかげだ、なんて言われるようになった。───なぜだか、メテヲを評価するのではなく、神様の加護の素晴らしさを賞賛していた。
全部、メテヲが努力したおかげなのに。この、一挙手一投足全てが【完璧】であるのが【あたりまえ】である。何故ならばイヴィジェル家は神様の加護を得ているから。
たしかに、イヴィジェル家は神の使者として天界に住んでいる。それに伴うそれ相応の力も持っているんだと思う。けど、メテヲたちの自由意志すらなく、すべて、神様の操り人形だとでも思っているのだろうか。メテヲはまだまだ馬鹿みたいだ。だって、この天使たちのことを理解できない。どうして、見たこともない神という概念を信じられるのだろうか。
───神様が、メテヲたちに何をしてくれるというのか。
メテヲはそれを知らない。だから、信じられない。なんて、神の使者が思っちゃいけないようなことを思ってしまう。でも、きっとこの考えもいつか消える。きっと、メテヲはいつか神様の傀儡となってしまうのだろう。分からないものは分からない。今、メテヲにできるのは完璧なダンスを踊ること。ステップを刻んで、表情を和やかに、相手のリードも忘れないように。気遣いに気遣いを重ねて。
大丈夫。完璧にしようとするのはあくまでメテヲの意思だ。メテヲが、ぐさおのために完璧になろうとしてるだけ。神様のため、なんてことはない。
メテヲは、自分の意志を持って地を歩くただの生命体なのだ。
「メテ兄〜!」
「ちょっ!ぐさお!走ると危ないって!」
とある日の休日。97日ぶりに予定が何もない、という奇跡の日であった。そんな日はもちろん、妹と過ごすに限る。日光を飽きるほど浴びた庭には花々が咲き誇り、お茶会用の白い建物が遠くにうっすらと見える。そんな場所に、今メテヲとぐさお、ガン兄が集まっていた。
メテヲはちらりとぐさおの方を見る。まだまだ小さいぐさおには翼も角も、光輪もない。メテヲよりも小さな体でたったったと軽快に走るものだから、傍から見ると転んでしまいそうでハラハラしてしまう。けれど、ぐさおはそんなのお構いなしに走るものだから、メテヲは慌ててぐさおに駆け寄って、そのまま胴体を持って、高い高いをする。そうすると、ぐさおはきゃっ、と笑って喜んでくれるのだ。
「ほーら!高い高い!」
「あははっ!もっともっと!」
そう言われて、メテヲはもっともっと高くあげようとまだ生え途中の翼を広げてなるべく高く飛び上がる。 そうすれば、もっとぐさおが喜ぶから。まだ慣れていない飛行。無理に高く飛び上がってしまった。それが、なぜだか分からないが奇跡的に成功してしまって、メテヲの身長の数十倍とべてしまう。けれど、奇跡は連続で起きることは無く。翼は高く飛び上がることだけに力を使ってしまい、上手く降りることができない。空中でまだ知りもしない飛び方を無理にカッコつけようとしたから、結果、今ぐさおと一緒に自由落下を楽しむ羽目になってる。ぐさおは事態を飲み込んでおらず楽しそうに笑っているが、全然笑えない状況であった。どうしよう。どうしよう。この状況は完全にメテヲのせいだ。いちばん最悪なことはメテヲの失敗のつけがぐさおにも影響してしまうことだった。そんなつもり無かったのに。ぐさおを喜ばせたかっただけなのに、今、ぐさおを不幸にしてしまう事象がメテヲのせいで起きてしまっている。どうにかしなければ。せめて、ぐさおだけでも───。
必死にぐさおを助けるために、思考を働かせていると、一瞬、重力で落ちていく自身の体重を感じなくなる。ふわっとした感覚の次に、姿勢が固定化され、地面に足は付いていないのに、なぜだか安定感がある。
何が起こったのか、その疑問を解明するためにメテヲは当たりを見渡せば、真隣にガン兄の顔があることに気づく。
「あ、ぇ!?ガ、ガン兄!?」
そんな馬鹿な、と思い思わず2度見を決め込む。だって、メテヲが高い高いをしている時は割と遠い日陰で本を読んでいた。飛び上がったのはせいぜい1秒前とかで、そんな、一瞬でここまで飛んで、なおかつメテヲ達をキャッチするなんて。その事実に驚愕を示していると、ガン兄はそのままゆっくりと下降し始める。
メテヲは、初めてガン兄の本当の姿を見た。まず目に入るのは二対の翼。一対は天使の翼で純白の色をしており、もう一対は悪魔の翼を持っていた。頭部には連なるように黒いツノが2本生えており、光輪もあるものの、それは少し溶けていた。また、普段は分厚い布に覆われた瞳が今日は白日のもとに晒されており、その見たものの心すらも奪い取るほどの美しい瞳がメテヲのことを心配そうに覗き込んでいた。途端に、先程までパニックだった自分の脳が突然冷静になり始め、俯瞰的に自分を見れるようになる。
そう、この姿勢は。昔、1度だけやってもらったことがあるお姫様抱っこであった。
ここで切ります!なーんかめっちゃくちゃ書けちゃいました!メテヲさんの日常回をパシャリ…うん、癒しですね!
それでは!おつはる!