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瀬名 紫陽花
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☆第三話☆
「…あ」
意識がはっとする。目を開けようとする。
「…っう」
だが眩しい。朝になっているようだ。
人間に戻っていることを期待したが、どうやら夢ではないらしい。
眠ってしまっていたらしい。
ふいに、サイレン音が聞こえる。
「…!」
音の聞こえてきた方向的に、逃げてきた方向だ。
昨夜殺した老夫婦の遺体が見つかってしまったのかもしれない。
彼は焦り始めた。
動向を探られたら駆除される。
今の俺は人間からしたら駆除対象だ。
彼はふと思う。
俺の遺体は見つかっただろうか。
由喜は元気だろうか。
なんだか急に心配になってきて、彼はそわそわし始める。
でもその心配は長続きすることはなかった。
30分もすれば、
(…クソ、腹が減った)
やっぱり熊の身体では空腹が勝つ。
彼はまた腹を満たす方法を考え始めた。
昨夜のように簡単に家が見つかるとは思えない。しかもそこに人がいる可能性はもっと低い。
大地は世の中の熊の気持ちがわかったような気がした。
(やっぱり、下か…)
山に食べ物がないのだから、下山するしかない。食べ物が欲しかっただけなのに、人間に害と見なされ殺される。
自分の昨日までは人間として生きていたのに、人間は恐ろしいと、彼は思う。
大地はゆっくりと人目を避けて、山を下りる。
近くにゴミ箱が見えた。ちょうど近くの民家からも離れている。
残飯だろうがなんでもいい。とりあえず今は食べれるものが欲しい。
彼は一心不乱に走り出し、中身を確認しようとする。
だがゴミ箱の蓋はガチャ、と音を立てて開く気配がない。
南京錠がかかっている。鎖も太い。
これはとても噛み切れる代物ではなさそうだ。
仕方なく彼は諦め、別のゴミ箱を探すことにした。
それから3つほど回ったが、どれも強固な鍵がかかっていた。
これじゃ飢え死にする。でもこのままもっと街の中心部に入っていくわけにもいかない。殺される。
彼は空腹の中、少し考える。
やむを得ない。もっと漁りに行こう。
少しの悲壮感を含んだ1月の空を、彼は見上げて歩き出した。
コメント
1件
ああ、第三話…読んだ直後です。 熊になってしまった大地くん、まだ人間の意識が残ってるからこそ余計に苦しいですね。「由喜は元気だろうか」ってふと考えるところ、すごく切なかったです😢 あと、ゴミ箱全部に鍵がかかってて食べ物にありつけない展開…人間社会の対策が、元人間の彼を追いめてる皮肉が辛い。 下山するしかないけど、下りれば駆除される。この板挟み、読んでて胸がぎゅっとなりました。続き、気になります。