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夕暮れだった。
オレンジ色の空が、ブロックでできた街をゆっくり染めていく。
僕たちはいつものロビーから少し離れた丘の上にいた。
特別な場所じゃない。
景色がいいわけでもない。
レアアイテムがあるわけでもない。
ただ、なんとなく二人で来るようになった場所。
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「ふはははは!」
僕は笑っていた。
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「だからなんで落ちるんだよ!」
シクサーも笑っていた。
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さっきまで遊んでいたレースゲーム。
僕はゴール直前で盛大に崖へ落下した。
しかも三回連続。
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「だって滑ったんだもん!」
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「滑る場所じゃねえ!」
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「滑ったんだって!」
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「嘘つけ!」
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二人で笑う。
もう何がおかしいのか分からないくらい笑う。
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しばらくして。
笑い疲れた僕は芝生の上へ寝転んだ。
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「はぁー……」
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空が綺麗だった。
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隣ではシクサーが胡坐をかいている。
赤い角付きの帽子を指でくるくる回していた。
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珍しく静かだった。
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「シクサー?」
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「ん?」
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「どうしたの?」
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シクサーは少し考える。
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そして。
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「別に」
と言いかけて。
やめた。
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「……俺さ」
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「うん」
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「お前といると調子狂う」
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僕はぱちぱちと瞬きをした。
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「そうなの?」
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「ああ」
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赤い角を指で弄る。
少し照れている時の癖だ。
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「前はもっと」
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シクサーは空を見る。
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「一人でよかった」
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「うん」
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「どう思われても別によかった」
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「うん」
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「でも最近」
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そこで言葉が止まる。
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「最近?」
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「お前が笑ってると」
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青い人だぜ★
1,621
#bl注意
ゆゆゆゆ
1,386
「うん」
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「なんか安心する」
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風が吹いた。
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僕は少しだけ笑う。
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「なにそれ」
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「知らねえ」
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「変なの」
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「うるせえ」
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耳が赤かった。
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だから僕は起き上がった。
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そして。
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ぎゅっ。
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後ろから抱きついた。
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「うおっ!?」
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シクサーが飛び上がる。
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「ヌーブ!?」
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「じゃあさ」
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「なんだよ!」
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「もっと狂わせてあげる!」
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数秒。
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沈黙。
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「は?」
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「もっと笑わせる!」
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「お前なぁ」
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呆れたような声。
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でも。
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楽しそうだった。
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本当に楽しそうだった。
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「覚悟しろー!」
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僕が抱きついたまま揺すると。
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シクサーは突然立ち上がった。
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「え?」
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次の瞬間。
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身体が浮く。
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「うわっ!?」
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シクサーが僕を抱き上げていた。
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「シクサー!?」
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「うるせえ」
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「なにするの!?」
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「こうする」
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ぐるっ。
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回った。
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「わああああ!?」
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ぐるぐる。
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ぐるぐるぐる。
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「シクサー!目回る!」
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「俺も回ってる!」
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「じゃあやめて!」
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「無理!」
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「なんで!?」
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「楽しいから!」
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完全に深夜テンションだった。
まだ夕方だけど。
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二人で笑う。
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止まらない。
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笑いすぎて苦しい。
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やがてシクサーは僕を下ろした。
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「はぁ……」
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「はぁ……」
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二人とも息切れしている。
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でも笑っている。
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ずっと。
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ずっと笑っていた。
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その時だけは。
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ハッカーだとか。
呪われた名前だとか。
噂だとか。
神話だとか。
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そんなものは何も関係なかった。
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そこにいたのは。
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ただのシクサーと。
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ただの僕。
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ゲームで遊んで。
バカなことで笑って。
コーラを飲んで。
また明日も一緒に遊ぶ約束をする。
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それだけだった。
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「なあ」
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シクサーが言う。
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「ん?」
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「明日も来るよな」
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僕は笑った。
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「当たり前じゃん」
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シクサーも笑う。
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少しだけ安心したように。
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「そっか」
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夕日が沈んでいく。
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そして二人は並んで座ったまま、
ブロキシコーラの缶を軽くぶつけた。
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カンッ。
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小さな音が響く。
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まるで秘密の約束みたいに。
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その頃の僕たちは、きっと本気で思っていた。
明日も。
明後日も。
その先も。
ずっとこんなふうに、バカみたいに笑っていられるんだって。
おわり