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並んで歩く帰り道。
昨日よりも言葉が出やすくなっていることに、咲は自分でも驚いていた。
「……お兄ちゃん、またバイトですか?」
ぽつりと口にすると、悠真は横目で頷く。
「あいつ、サボりぐせあるくせに金欲しさだけは強いからな」
その言い方が少しおかしくて、咲は思わず吹き出してしまった。
「ふふっ……す、すみません」
「謝ることか? 笑ったほうがいい」
悠真の声は低く落ち着いていて、でもどこか優しかった。
その何気ない一言が、胸の奥をじんわり温めていく。
――昨日より、少しだけ近づけた気がした。