アグマドルは死に、ガイターバーグは姿を晦ました。しかし、戦場となった静岡の市内はゴジラによって血溜まりとなっている。
地球付近 宇宙 ━━━━ 宇宙空間を漂う一つの隕石。隕石は自転をしながら吸い込まれるように進んで行く。その隕石には、白い水晶が付いており真ん中に星のような模様が浮かんでいる。すると次第に星が見えて来た。そこは、青と緑の星『地球』だった。隕石は地球に向かって落ちて行く。壮大に広がる静岡沖へ隕石は墜落した。どおぉんと爆音を立て、海の底へ沈んで行く隕石。今だ、ゴジラの血が流れ込んでいる海の中で隕石の結晶部分が強く光り出した。
2091年 9月2日 ━━━ あれからまた、1年が経った。司令塔や軍では、警戒を怠らず新たな怪獣の為に軍事力を上げていた。
「今の怪獣被害は?」
「ありません。しかし、、。」
「ん?なんだ?」
「はい。3ヶ月前に堕ちて来た隕石の件で、まだ、見つかってないとの事です。」
「まだ、見つかってないのか?」
「はい、辺りを捜索しましたが、やはり、欠片すらありませんでした。」
その会話を聞いていた美津子は、ふぅーと息を吐いた。
「前に会った『X星人』も可能性はあると思います。」
「ああ、、。」
「もしくは、」
「…もしくは、何だ?」
「隕石が自我を持って動いた、とか?」
「………な、んだ?そんな事が、有り得るのか?」
困惑する司令塔。
「いえ、普通なら無理な話ですね。『普通』なら、ね?」
「………。」
一瞬で、司令塔は静まり返った。
9月3日 午後8時46分 高知の山々に巨大な足跡が発見された、我らがゴジラと同じ足跡が。しかし、足跡の主は今だ見つかっていない。その為、軍人がヘリから地面に降りて、周りを捜索していた。しかも、今は夜中で大雨が降っている。
「やはり、何も無いな、、。」
「こちらも、やはり何もありません。足跡だけです。」
「隊長。」
「何だ?」
一人の隊員が呼ぶ。
「これはゴジラではないんですか?」
「なら、可笑しいだろ。ゴジラは我々の味方だ。こんな回り諄い事はせん。」
「そうですが、、。」
隊員は銃に付いたライトを頼りに前を進んだ。大雨が降る中、ゴロゴロと雷が鳴った。ピカッと空が光った瞬間、今まで以上に辺りが暗くなる。隊員は空を見上げた。そこには、隊員たちを見下ろすゴジラの姿が。
「うおっ?!!!ゴ、ゴジラかっ?!!!ビックリした、驚かせないでくれよっ!!」
肩の力を落とした隊員たちはゴジラを見上げた。しかし、ゴジラは此方を見つめるだけで、何も返して来ない。不審に思った一人の隊員がゴジラに近付く。
「おいっ、ゴジラっ?!!!大丈夫かぁっ!!!!」
隊員の呼び掛けにゴジラはゆっくり、口を開けた。
「ほらっ。」
隊員はゴジラに手を差し出す。ゴジラはゆっくり顔を近付け、口を開いた。ゴジラの背びれと口が赤白く光る。途端にゴジラは隊員たちに向け、勢い良く熱戦を放った。軍人たちは、有り得ぬゴジラの行動に何も出来ず熱戦に呑み込まれて行く。
次の日、この事件はたちまちにニュースとなった。『ゴジラの息子は人類の敵?!』とデカデカとした題名に保護団体の社員たちは、困惑していた。
「可笑しいでしょ?ギャラクシア君が、うちらの敵だとか、、。」
「ねぇ!酷いですよ。 私たちを助けてくれてるのに、身勝手過ぎるしまだ、ギャラクシア君がやったなんて分からないのに、?!」
うんうんと周りが頷いた。しかし、三里だけは違っていた。
「……三里さん?どうしたんですか?」
社員の一人、明坂 零子が三里の顔色を伺う。
「………でも、、な、ギャラクシアはX星人が創った怪獣なんよ。もしかしたら、有り得るかもしれん、、。」
「はっ?!みーさんまで、何言いようがよっ?!!!」
「そうですよっ?!!!三里さん、どうしたんですかっ?!!本当にっ!!!!」
いつも皆を指揮っていた三里がまさかそんな事を言うとは思わず、全員が唖然とした。
「でも、さ!三里さん、らしくないよっ?!!!」
涼が三里の肩を揺らす。
「いやいや、可能性だからね?X星人は昔に怪獣らを操ったってのがあるし。赤トンボとか雨とかマグロとか。」
「『うーん、、。』」
「もしかしたら、ギャラクシアを創る際にあの薬品、埋め込んでるかも知れんしな?」
「確かに、。」
「成程、、、。アイツらの事だから、こんな事簡単に出来る訳か。」
「そそ。」
皆が悩んでいるとそこに、美津子が戻って来た。
「あら?貴方たち、何してるの?」
「あっ、社長っ!いいところにっ!!」
美津子を囲むように社員たちが群がった。
「社長!ギャラクシア君は今、何処に居るんですか?!」
「今、探してるところよ。だから、皆に手伝ってもらおうと思ってたんだけど、。」
「『行きます!』」
「全員は無理。」
「『えっ、、?!』」
ガーンとなる社員たち。と言う事で行く事になったのは美津子、三里、マイク、遥輝。そして、涼は写真撮り役で離れた所から着いてくる形。皆がゴジラ捜索の事を話していると、テレビに緊急ニュースが流れた。そこには、『ゴジラ 東京に上陸』と書かれていた。皆が急いで東京へ向かう。東京には既に軍の戦車やヘリが到着している。三里とマイクはヘリから一目散に降り、軍の基地へ向かった。
「清水さんっ!!」
清水さんとは、司令塔に居た軍の一人。
「おお、君たちか!よく来てくれた!」
「清水さん、今のゴジラの状況は?」
「はい、もう直ぐでゴジラは到着します。」
「成程、、。あの、軍を攻撃したゴジラのような生物についてはどうでしょうか?」
「それは、分かりません、。国民の半数以上がゴジラと考えているようですが、、。」
「そんなぁ、、?!!」
「そんなんだから、椿が怒るんよなぁ、、。」
「椿さん、久しぶりに聞いたなぁ。」
「空の上で見てるよ、皆。」
「そうですねぇ、、。」
「司令塔っ!!ゴジラが来ましたっ!!!!」
「なんだとっ!!」
モニターに映ったのは東京に辿り着いたゴジラの姿があった。ゴジラはヘリや戦車が自分を囲んでいるのに、不思議そうにしていた。
「ギャラクシアっ!!!大丈夫だったかぁっ!!!!!」
三里たちが駆け寄る。ゴジラも反応し、近寄った。
「…ないだろうが、、警戒は怠るな?」
『”了解。”』
三里が手を伸ばし掲げる。ゴジラはその手の平に鼻先を当て、グルグルと喉が鳴る。
「うんっ!!大丈夫そっ!!!!」
「ギャラクシア君の言葉は分からないけど、一応、聞くね?昨晩、軍を攻撃しなかった?」
ゴジラは何の事やらと、首を傾げた。
「貴方じゃないと信じたいけど。昨晩ね、3ヶ月前に堕ちた隕石を捜索してた軍の隊員が貴方に似た生物に殺されたのよ。」
ゴジラが眼を見開き、驚いているようだった。身振り手振りで自分ではないと主張する。
「…うん、そりゃそうよねぇ〜、。」
「あ、雨降って来た。」
「そういやぁ、降るって言ってたなぁ。」
空が曇りだし、ポツポツと雨が降り出した。 すると、軍のテントの中から騒がしい声が聞こえる。美津子は急いで戻り、清水に問い質す。
「どうしたんですかっ?!何があったの?!」
「ゴジラ似の生物の足跡が発見されたんだ!!!!」
「なんですってっ?!!!何処で見つかったの?!!!」
「……それが、ここから西の方向、3km離れた所から東京へ向かっている。」
「ここじゃないっ?!!!」
「しかも、足跡だけが此方に進んでいるんだっ!!足跡の本体が全く、見えないっ!!!!」
「それって、どうゆう事っ?!!!」
ゴジラは起き上がり、東京の街中を見た。三里たちの前に立ち何かに警戒する。
「ギャラクシア?どした?」
三里たちも軍人に連れられ後ろに下がる。涼が司令塔のテントに入り、美津子を呼んだ。
「社長っ?!!!なんか、やばい事になってませんかっ?!!!離れた方がいいんじゃ、、」
「西側の軍が全滅しましたっ!!!!」
「なんだとっ?!!生き残りは居ないのかっ?!!!」
「はい、、。」
涼の声は清水らの話に遮られた。すると、辺りが揺らぐ。
「まさか、もう、、?!」
美津子が絶句する。外に居た三里、マイク、遥輝は音のした方向をマジマジと見た。
人気の無い東京の路上にミシミシとヒビが入り、足跡の形になる。足跡はそのままゴジラに歩みを進める。
「姿が見えないって、マグロと同じでカモフラージュしてんの?!」
ゴジラは三里らに振り向き、下がるように吠えた。次の瞬間、ゴジラは見えない何かに喉を噛み付かれ後ろに戻された。倒されそうになったゴジラが脚を踏ん張らせ、見えない何かに熱戦を吐く。その時、さっきまで見えていなかった生物の姿が露となった。二匹が向かい合いゴジラ似の生物、いや、ゴジラと全く同じ見た目の生物はゴジラを睨んだ。
「……は?何あれ、?!」
「まんま、ギャラクシアじゃん、、。」
見た目、大きさ、体格、尻尾の長さ、形、瞳の色全てがゴジラと同じなのだ。強いて言うなら、背びれがゴジラのカクカクした感じではなく滑らかな感じである(歪な形は変わらない)。雨が轟々と降る夜の中、ゴジラ似の怪獣はゴジラに突っ込む。ゴジラも相手に突っ込んだ。お互いの衝突音が辺りに響き、地面が揺らぐ。
孤島 洞窟の中、モスラは空を見上げる。すると、双子が寄ってきた。
「『モスラ、、東京が危険な事になっています。ゴジラが危ないです。』」
言い終えた双子は消え、モスラが夜空へ飛び立つ。
「ちょっと?!これじゃぁ、どっちがギャラクシアか、分からんやんっ?!!!!」
「くそっ!上手く、攻撃出来んっ!!!!」
絡み合う二匹をどうする事も出来ず、見守る事しか出来なかった。
「『皆さん。』」
三里の後ろに双子が現れた。三里と、マイクが笑顔で振り向き過去と未来に向き直った。
「過去さん、未来さん!」
「それじゃあ、モスラも!」
「『はい。』」
「過去さん、未来さん、ちょっと来てくれる?」
美津子が二人を手招きし、テントに入れた。
「あのギャラクシア君似の怪獣は何か分かるかしら?」
「私たちも驚きました。あの怪獣はゴジラと遺伝子構造が全て一緒なんです!」
「えっ?と言う事はギャラクシアの、『クローン』って事なの?!」
「はい、そうですね。」
そこに清水が話しかける
「お二人共、宜しいか?あの怪獣は3ヶ月前に堕ちた隕石と関係はあるだろうか?」
「…やはり、。」
「姉様、、。」
双子が顔を見合わせた。三里がどうしたのかと問う。
「『はい、あの怪獣は隕石とゴジラの血が混ざり合った事によって産まれた怪獣なのだと思います。私たちも、隕石が堕ちた時、強い力を感じました。』」
「ぶっ飛んでんな、、?」
「うん、怪獣が居る時点でもう、ぶっ飛んでるんだよなぁ、、。」
「確かに。」
「……見た目は私たちの味方であるゴジラ。でも敵、、。」
「……ゴジラVSゴジラって、、悪夢じゃん、、。」
「……『ナイトメア』?」
「やっぱ、名前は付けるんだ。」
「あった方が良いでしょ?」
「あ、はい、。」
その時、
どおおぉぉおぉおぉぉおおぉぉんっ!!!!!!!!!!
辺りが光り、ゴジラとナイトメアがお互いの熱線をぶつけ合う。ゴジラは青白い熱線、ナイトメアは赤白い熱線を吐いた。
「対称的な色ね、、。」
「ギャラクシア、、、。」
互いの熱線が爆発し、ゴジラがナイトメアへ咆哮した。ナイトメアもゴジラに負けじと咆哮する。
「『皆さん、モスラが参ります。』」
ピカッと空が光り、光り輝くモスラが舞い降りて来る。しかし、それよりも目に入ったのがナイトメアの姿だった。晴れていく空の逆光と共にナイトメアの容姿が露となる。そして、全員が唖然とした。
「…………白、い、、?」
そう、白いのだ。ゴジラとは対称的な白色、モスラが近くのビルに止まり、二匹を見比べた。空は直ぐに黒雲に囲まれ、豪雨となる。
「エンジェル、困ってんじゃん!似過ぎて!!」
「大丈夫かな、、。」
モスラはナイトメアに話し掛けるがナイトメアはモスラを無視しゴジラに熱線を吐いた。ゴジラは素早く避け、背びれを赤く光らせる。モスラがビルから飛び立ちナイトメアから離れた瞬間、ゴジラはナイトメアに向け勢い良く火炎放射を放った。直撃した火炎放射が辺りにも飛び散り、ナイトメアが顔を歪ませる。そして、ゴジラはナイトメアにかなり強烈なパンチを入れた。
「うわっ、痛そう、、。」
しかし、ナイトメアも負けてばかりではない。ナイトメアは自身の背びれを紫色に染める。ゴジラがパンチして来た方の腕を掴み寄せ、一瞬で溜めた熱線をゴジラの顔面へ撃った。紫色の熱線に包まれたゴジラは自身の尻尾を使ってナイトメアの横腹にブスリと刺した。
ごお”ぉお”ぉぉおぉおぉぉっ?!!!!!!!
ナイトメアは悲鳴を上げ、ゴジラを突き放す。しかし、ゴジラの様子がおかしかった。ゲホゲホと咳をするゴジラは苦しそうに首を自分の爪で引っ掻いている。
「ギャラクシアっ?!!どうしたのっ?!!!!!」
「…あれの色からして、、、。あれって、もしかして『毒』?!!」
「それって、不味いんじゃっ、、?!!!」
三里らは心配そうにゴジラを見詰める。ゴジラがナイトメアから距離を置く。
「全軍に告ぐ!直ちにゴジラの援護を行えっ!!」
『”了解。”』
軍のヘリからミサイルが放たれ、ナイトメアを狙う。ナイトメアは軍の攻撃を素早く躱し熱線を吐こうとした時、後ろからモスラがナイトメアの頭を掴みかかり引っ張った。後ろに引き摺られたナイトメアは尻尾を使ってモスラをシバいた。そこに軍の戦闘機がミサイルを撃ち、ナイトメアに直撃する。ゴジラも背びれに力を溜め、ナイトメアに熱線を放った。次々とナイトメアに攻撃が直撃して行く。ナイトメアはゴジラに向け、火炎放射を放った。そして、ゴジラに掴みかかり投げ飛ばす。また、熱線を吐いた。モスラが止めようとナイトメアの尻尾を引っ張るがナイトメアが振り向き、モスラに熱線を撃つ。熱線に撃たれ吹き飛ぶモスラ。
「エンジェルつ!!!!」
三里はゴジラたちの戦いを見守り不安そうな顔をしていた。すると、テントの中にカプセルを持った隊員が現れるり
「司令塔!!これを!」
「何だ、これはっ?!!!」
「もしもの為に作って置いた薬品です!ゴジラに効けばいいのですが、、。」
その言葉に三里は強く反応し、隊員に詰め寄る。
「構わない!!急ごうっ!!!!」
「しかし、?!」
「私が行きたいのっ!!お願いっ!!!!」
「僕も、行きますっ!!」
「えぇっ?!」
隊員からカプセルを奪い取る形で二人は外へ出た。三里とマイクが急いでヘリに運ぶ。
「二人共、気を付けて、、。」
外へ出ると美津子が不安そうな顔で三里とマイクに言う。二人は強く頷き、三里らが乗るヘリが空へ飛び立つ。
「これをっ!ギャラクシアの口に入れればいいんだよねっ!!!!」
「そうだねっ!気を付けながら行こうっ!!!!」
ナイトメアはゴジラの首根っこをを片手で掴み、ビルなどに叩き付けた。ゴジラも何とか応戦しようとナイトメアの肩に噛み付く。そして、思い切り蹴飛ばした。ナイトメアと距離を置いたゴジラはゼェゼェと息を荒くする。するとそこへ、三里らの乗ったヘリが到着した。ヘリから身を乗り出し、三里が叫ぶ。
「ギャラクシアァァァァっ!!!!!!こっちィィっ!!!!口、開けてえぇえぇぇっ!!!!!!!!」
その声に反応しゴジラは大きく、口を上に向け開いた。三里とマイクはせーのでカプセルに入った薬品を落とす。
「よしっ!行けぇっ!!!!」
ゴジラはカプセルを飲み込み、再び咳き込んだ。
「ちょっと?!ギャラクシア君、大丈夫っ?!!!!!」
ナイトメアが三里らの乗るヘリを睨んだ。
「先輩っ?!!!早く離れてっ?!!!!!」
違うヘリから涼が叫ぶ。と次の瞬間、ナイトメアがビルに脚を掛け、空へ跳ぶ(壁キックみたいな感じ)。三里とマイクはゴジラを見た。ゴジラは咳き込みながらナイトメアを止めようとしている。そんなギャラクシアへ三里は微笑み口を開いた。
「頑張れ。」
その瞬間、ナイトメアが三里らの乗ったヘリを勢い良く叩き落とし、
「先輩っ?!!!!!!」
羽根をボロボロにしながら戻って来たモスラは墜落し爆発するヘリを見て小さく鳴いた。悲しみの念が篭った声で。
「”きゅあぁ、、、”」
ゴジラは炎が立ち上るヘリに顔を近付け、三里とマイクを呼ぶ。
「”ごおぉぉおぉ、、、”」
しかし、もう三里たちは居ない。戻っては来ない。涼と遥輝は現状を受け止めきれず、口を両手で抑え泣きじゃくった。
「………ぅ”ぅ、三里、さんっ、、!マイクさんっ、、!」
「……そん、なっ、、。」
「………………。」
美津子は涙を流しながらただただ、ゴジラを見詰め、後悔の念に心が押し潰されそうだった。
ゴジラがナイトメアと眼を合わせる。その瞳には怒り、憎しみ、悲しみが混ざっていた。ゴジラは怒り任せにナイトメアへ熱線を浴びせる。ナイトメアは物凄い速さで飛んで来る熱線をスレスレで躱すがその間にゴジラに間合いを積められ先程よりも、強烈なパンチがナイトメアの頬に入る。
ごお”ぉお”おぉぉおぉおぉぉぉんっ!!!!!!!!!!!
ナイトメアは、背びれを赤白く光らせゴジラに口を開けるが1歩のところで、モスラがナイトメアの背びれを引っ張り、ゴジラに熱線が当たる事は無かった。ゴジラもまだ、毒が効いているのか足元が覚束ない。ナイトメアは殴られた顔を振りながら立ち上がる。そこへ軍のミサイルが飛んで来てナイトメアの顔を着弾する。
「撃てっ、撃てぇー!!!!」
ドドドドドドドドドドォっ!!!!!!!!!!
ミサイルに撃たれながらもナイトメアは軍の戦車に向け熱線を吐き、薙ぎ払って行った。
「もっと撃ち込むんだっ!!!!!!」
「ゴジラの為に、出来るだけ時間を稼げっ!!!!!」
司令塔は軍に、ナイトメアへの攻撃を緩めないよう指示する。軍の攻撃を忌まわしげに、ゴジラを睨んだ。その背びれには赤白い光が見え、ナイトメアは大きく口を開く。ゴジラは防御態勢に入ろうとしたその時、ナイトメアの熱線とゴジラの間にモスラが飛び込んで来た。そのまま熱線はモスラに被弾し、ゴジラに寄り掛かるように倒れた。
「”グルルルル、、!”」
「”キュルルルルル、、、。”」
ゴジラはモスラを両手で抱え、テントの近くへ置く。そして、ナイトメアに向き直った。ナイトメアが首を鳴らし、ゴジラを睨み付ける。ゴジラも怒りの募った瞳を向け、低く唸った。
二匹だけの戦いが始まる。ゴジラが息を吸い込み、勢い良く吐き出した。途端、辺りに金属音が響き渡った。いつもより迫力のある音にナイトメアは耳を塞ぎ後退る。ゴジラは口を閉じ、一気に間合いを積めた。そこでナイトメアの喉を掴み強烈な熱線を吐く、がナイトメアがゴジラを突き飛ばし離れた。しかし、ナイトメアの様子がおかしくなり始める。それはゴジラも同じだった。ナイトメアはゴジラと距離を保ち、苦しそうに咳込んだ。ゴジラも苦しそうに息を荒くする。
「……どうしたの、、?!」
涙を拭い、涼が問う。だが、ナイトメアは背びれに赤白い光を溜め、ゴジラに熱線を浴びせた。ゴジラの顔が苦痛に歪む。ゴジラも負けじとナイトメアの顔を引っ掻いた。そして、蹴りを入れる。ナイトメアもゴジラの顔目掛け、強烈なパンチを食らわした。あまりの痛さにゴジラは後退り、首を振るう。
「ギャラクシア君っ、、?!!」
ナイトメアとゴジラは互いを睨み、背びれを発光させる。そして、二匹がかなりの至近距離で熱線を吐き付けた。辺りに爆発音と衝撃音が鳴り響く。涼は額に腕を当てながら煙の上がる東京の中央を見る。
「ゲホッゲホッ、、?!!大丈夫かっ?!!ゴジラは!ゴジラは、大丈夫かっ?!!!」
テントから出て来た清水と美津子は咳き込みながらゴジラとナイトメアを探す。モスラが悲しそうに「きゅぅ、、。」と鳴いた。すると、東京の中の煙が晴れ始めるが、真夜中な為、状況が全く分からない。
ゆらりと立ち上がったゴジラは白い月をバックに青く光り、強く咆哮した。そのゴジラに向かい合うようにナイトメアが赤く光り、咆哮する。周りには赤色の炎、青色の炎が燃え盛っていた。そして、二匹が動き出す。
「ギャラクシア君っ?!!」
「ゴジラっ!!!!」
ゴジラとナイトメアの衝撃音が辺りに広がる。それと共に赤と青の炎が混ざり合い紫色の炎と化した。紫色の炎に囲まれたステージで二匹の壮絶な戦いが繰り広げられる。
ゴジラはナイトメアの肩にかぶり付き熱線を吐き付けた。小さく唸った後、ナイトメアがゴジラの肩に肘を振り下ろす。勢い良く肘を打ち付け、ゴジラを剥がしたナイトメアは背びれを光らせ、ゴジラに熱線を吐いた。ゴジラは辺りに血の結晶を吹き付け、ナイトメアの攻撃を防ぐ。ゴジラの血も今や、赤黒くはなく青みを帯びた、どす黒い色と化していた。ナイトメアがその結晶をぶち破り突っ込んで来る。ゴジラの首に噛み付いた。ゴジラは倒れそうになるのを脚を地面に食い込ませる事で耐える。そして、自身の尻尾をナイトメアに向け叩き付ける。ナイトメアはゴジラを睨み、勢い良く火炎放射を吹き付けた。そのままゴジラに回し蹴りを入れる。ゴジラは衝撃に二三歩後退った。
離れた場所から二匹の戦いを見ていたモスラは、過去と未来を呼ぶ。すると、直ぐに二人がやって来た。
「…どうしたのですか、モスラ?」
「”キュルルル、、、。”」
「…………そうですか。分かりました、、、。」
「……過去さん、未来さん?」
モスラももう、限界が来ている。羽根もボロボロで、あと少しすれば飛べなくなるだろう。そう考えたモスラは自身の羽根を最後の力を振り絞り持ち上げる。
ゴジラがゼェゼェと息を荒くし、ナイトメアに噛み付く。ナイトメアもゴジラの身体を尻尾で何度も刺し、引き剥がした。しかし、ゴジラの身体は直ぐに治り、またナイトメアと取っ組み合いになる。それ涼と遥輝は声が出なくなりそうなほど心を締め付けられながら見ていた。
「…………………………っ、、!!」
「………………もお、、やめようよ、、!」
やっとの思いで口が開いた遥輝は、泣きながら今にも消えそうな声でゴジラたちに問い掛ける。今もゴジラとナイトメアは殴り合っている。その光景は誰もが心苦しくなるような悲しい戦いだった。すると、二匹が離れる。ゴジラもナイトメアも互いに距離を保ちながら相手を睨んだ。そして、今まで以上にゴジラは青白く、ナイトメアは赤白く、背びれを発光させた。二匹は大きく口を開け、勢い良く放った。しかし、二匹の熱線がぶつかる寸前で熱線と熱線の間に羽根をボロボロにしながらモスラが割り込む。ゴジラは眼を見開いた。もう、熱線を引っ込める事は出来ない。モスラがゴジラとナイトメアの熱線に包まれた瞬間、モスラは光り輝き辺りに大爆発と衝撃波を与えた。ゴジラとナイトメアは一瞬で光に包み込まれ消えて行く。ゴジラはモスラに手を伸ばし、ナイトメアは立ち竦んだまま固まって行った。辺りに煙が立ち込め、ゲホゲホと涼たちが手を振る。
「…ゲホッ、ゲホッ、?!…エンジェルさんっ?!ギャラクシア君っ?!」
そこへ明るい光の柱が差した。辺りはもう朝になっており、太陽が東京市内を照らす。
「…っ?!………これはっ、、、。」
「…………ギャラクシア君、、。」
美津子はそう呟いて顔を背ける。司令塔に映されたモニターには今では銀色の結晶に身を包んだゴジラとナイトメアが居た。その中央には今にも消えそうなモスラと双子の姿。涼たちは急いで駆け寄る。
「エンジェルさんっ?!! …そんなっ、、?!!」
「……エンジェルさん、、、。」
「”きゅうぅぅ、、、。”」
「『…モスラは最後にゴジラと二匹だけの時間を欲しいと言っています、、。』」
「…ごめんなさい、、少しだけでいいんです、、。」
過去と未来が頭を下げる。
「………顔を上げて下さい、、。また、、泣いちゃうじゃないですか、、、。」
ゆっくりと進むモスラを涼たちは見送った。モスラは地面に這いつくばりながら、手を伸ばしたまま固まるゴジラに近寄る。ゴジラの鼻先に自身の手で触れ、モスラはそっとゴジラに寄り添って静かに消えて行った。光の粒となって空へ登る。
生放送にはゴジラとモスラへの悲しみコメントで溢れ返っている。すると涼と遥輝の肩に手を置き美津子が話し掛けた。
「………二人共、、戻りましょう、、。」
「………。」
二人は静かに頷いた。
三人が保護団体に戻ると社員らが暖かく迎えた。しのぶが涼に抱き着いて二人一緒に泣く。他の社員たちも涼や遥輝に寄り添い、乙津が遥輝の頭を撫でた。
「………よう頑張った、、お疲れ様、、。」
「……………はぃっ、、、。」
遥輝は涙を堪えるように手を握り締めた。
「……皆、、本当に、お疲れ様、、。」
美津子は涼の頭を撫で、社員たちを見渡す。
「……でも、だからって、気を抜いちゃダメよ、。まだ、怪獣たちは沢山居る。」
「……そうですよね、。気を取り直せとは言わないけど、多分、あの二人なら『気を取り直せ』って絶対、言うよな。」
「……そうですね、。」
涼の顔に少しばかり笑顔が戻った。他の社員たちも頷く。
「…三里さんなら、言うな、、。」
「マイクも絶対、気にすんなって言うよ、。」
皆が口々に言う。そして、その口々に皆が深く頷いた。
後日、三里とマイクのデスクに花と二人の写真が置かれた。二人共、満面の笑みで写真に写っている。
END
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