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『ジョンのいない、お隣さんハウスで』
原作の「The End」から数ヶ月が経った。
ロボットの爆発によって半壊した僕たちの家は、エドゥアルドの怒号とマークの皮肉、そして何より――ジョンの能天気な声が消えて、ひどく静まり返っていた。
「おい、トッド。飯だ。さっさと来い」
リビングからエドゥアルドの声がする。かつての覇気はなく、どこか擦り切れたような声だ。
ジョンが死んでから、エドゥアルドはひどく落ち込み、マークはそんなエドゥアルドの八つ当たりを静かに受け流す日々が続いている。
「うん、今行くよ、エドゥアルド」
僕は自分の部屋の鏡を見て、いつものように「優しい笑顔」を作った。
僕まで暗い顔をしていたら、この家は本当にバラバラになってしまうから。
リビングへ向かう途中、いつもは閉まっているはずのジョンの部屋のドアが、少しだけ開いているのが見えた。
「……あ」
吸い寄せられるように、僕はその部屋に足を踏み入れる。
主を失った部屋は、あの日から時間が止まったままだ。ベッドの脇には、彼が大切にしていたおもちゃや、なんてことのないガラクタが転がっている。
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられるように痛む。
――『ねえ、トッド! エドゥアルドがまた僕のコーラを飲んじゃったんだ!』
――『よしよし、ジョン。僕の分をあげるから、泣かないで?』
つい最近まで、ここでそんな他愛のない会話をしていたはずなのに。
一番の親友だった。誰よりも気弱で、誰よりも純粋だった、僕のジョン。
「……ずるいよ、ジョン」
僕はジョンのベッドに腰掛け、ポツリと呟いた。
いつもはみんなの前で絶対に崩さない「優しいお隣さん」の仮面が、この部屋の静寂のせいで、ぽろぽろと剥がれ落ちていく。
「君がいなくなって、みんなボロボブルだ。エドゥアルドも、マークも……僕だって、本当は」
膝の上で、自分の両手が不自然なほど強く震えていることに気がついた。
その瞬間、頭の奥で何かがパチンと弾けるような感覚がした。
優しいトッドの裏側に隠された、どす黒くて、歪んだ感情が、静かに鎌首をもたげる。
(全部、あの赤パーカーの男のせいだ)
(あいつが、僕たちの日常を、僕のジョンを奪ったんだ)
(許さない。絶対に、絶対に、絶対に――)
「トッド? 何してる、飯が冷めるぞ」
背後からマークの静かな声がして、僕はハッと我に返った。
一瞬で頭を冷やし、いつもの「優しい笑み」を顔に貼り付けて振り返る。
「ごめん、マーク。ちょっと落とし物を探しちゃって。今行くよ」
「……そうか。ならいいが。エド」
マークは僕の表情をじっと見つめ、それ以上は何も追及しなかった。
きっと、僕の笑顔の裏にある「狂気」に、薄々気づいているのかもしれない。でも、今のこの家には、それを指摘する余裕なんて誰も持ち合わせていなかった。
部屋を出るとき、僕はジョンの形見の小さなバッジをそっとポケットに忍ばせた。
(大丈夫だよ、ジョン。僕はこれからも、みんなの優しいトッドでいるからね)
(……でもね、君を奪った世界を、僕は絶対に許さないよ)
夕暮れの光が差し込む廊下を、僕は一歩ずつ、静かに歩き出した。
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コメント
3件
うわあ……読み終えて、しばらく動けませんでした。トッドの“優しい笑顔”の裏にある静かな狂気、すごく怖くて、でも切なくて。ジョンの部屋で仮面が剥がれ落ちる瞬間、手が震える描写が生々しくて、胸がぎゅっとなりました。「ずるいよ、ジョン」って言葉に、どれだけ彼が大好きだったかが滲んでて……。マークが気づいても指摘できない、壊れかけの家族の空気も絶妙でした。この続き、どうなってしまうんだろう……本当に気になります。素敵な作品をありがとうございます。