テラーノベル
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とある日の昼休憩、私はずっと考えていた。
時は少し遡って、昨日のことである。
「今日が好機と思いまして。口説かせていただきますよ」
私は一瞬耳を疑った。
「えっ?今….なんて?」
思わず私は聞き返してしまった。
「二度は言いませんよ。朱里さん」
「ぅぅ、酷い…..」
酔いが回ってるのか、それとも光輝くんに焦らされて気持ちが焦がれてるのか。
甘い声が出てしまい、さらに頬が熱くなる。
「顔赤いですよ、朱里さん」
そう言いながら私の手を握る光輝君。
私はされるがままだ。
この、燃えるような気持ちに溺れないように正気を保つだけで精一杯だから。
「ぅっ….言わないでよ….!//」
少し声が上擦る。
今私は、心を揺さぶられてるのだと感じた。
けど、光輝くんは後輩で、私は先輩だ。
私が、しっかりしなきゃ。
「んもぅ….//私帰るから…//」
そう一言置き、私は席を立つ。
しかしそれはかなわなかった。
「帰しませんよ….」
私の手を掴んで動きを制止する光輝くん。
そして耳元で囁かれた。
「今日だけは、朱里さんと夜を過ごしたいので」
そして現在、私は仕事こそできているが、身が全く入らない。
だめだ、光輝くんを意識しちゃってる。
私は、夢さんと仲良くしたいのに….!
「….だめだ、今日は早く帰ろう。」
そう呟き、さっさと仕事を終わらせた。
夕方、私は早退してあのバーに行った。
「今宵もお待ちしておりました」
いつもの透き通るような声と、人形のように美しい夢さんが私を迎えてくれる。
今日はきれいなジャズスイングが流れており、なんだか本で見た潜り酒場が連想される。
「あ、どうも…また来ました」
「またお越しくださって有難うございます、奥の席へどうぞ」
その指示をされてから、私は席に座った。
「本日は何になさいますか?」
私は数秒思考し、答えた。
「では….エンジェルス・キッスを」
「かしこまりました」
そして夢さんはエンジェルス・キッスを作り始める。
「ところで朱里様、初恋でもされたんですか?」
少し意地悪な顔で言われドキッとする。
「んぇっ….何を根拠に…?」
私が聞き返すと、夢さんは答えた。
「エンジェルス・キッスのカクテル言葉は「あなたに見惚れて」….ふふ、私に見惚れたんですか?」
そんな質問を投げられ、私は目を泳がせる。
「あぁっ…..えぇと….」
言葉が上手く口に出せない。
「んふふ、からかってしまってすみません。エンジェルス・キッスです」
そして私の目の前には、コーヒー色の液体に生クリームと銀の串に刺さって、橋のようにグラスに載せられたさくらんぼのカクテルが置かれた。
「ん…いただきます」
そして私はエンジェルス・キッスを楽しみながら、先ほどの仕返しで夢さんをからかおうとした。
けれどことごとく躱され、逆にからかわれてしまった。
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モノクロうさぎ
