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魂
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kurara
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コメント
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ああもう、これ切ないな…。主人公が自分に嘘ついて「抱かなきゃ」って必死になってるの、見てて苦しかったわ。それでも最後に「大好き」って自覚するところ、じわじわ来た。自分に正直になるって、こんなに痛くてあったかいんだな。元貴からのしょうもないLINEで涙出るの、わかる気がするよ。
他の女の子が出てきます。苦手な方はご注意ください。
もう少し2人で飲み直そう、なんて、まさか自分の口から出ると思わなかった。
うん、と、敬語の砕けた相槌でその子は答えて、ついてきた。
その子の目は明らかに”いいよ”の目をしてた。
とりあえず何も考えられない頭で俺はその子を俺の家に連れてきた。
長いふわふわの髪の毛からはサボン系の清潔感のあるいい香りがした。
俺の膝の上にその子は手を置いた。
俺より一回りも細い白い手首が目に映った。
その子はずっとミセスを追ってくれていて、知名度の低い曲もたくさん知ってくれていた。
飲み会中もずっと周りに気を回していて、優しくて。
小さな顔も、大きな目も、そりゃ可愛かった。
グラビアもしてたかどうだったか、大きな胸だって、こんなん、男なら誰だって大好きだ。
酒で濡れた唇が少し開いていた。
こんなん、キスしたくなるだろう。
そうだろ、そうだろ、そうだろう。
男ならみんなこんな女の子大好きだ。
なのになんでだろう、どうして俺は、どうして俺はそう思えないんだろう。
なんでこの後に及んでずっと元貴の話ばっかしてんだろ。
そんな俺を、うんうん、と、その子は話を聞いてくれていた。
あー、早く抱かなきゃ。
アルコールに侵された脳で考える。
どうしたってヤります、と言わんばかりのルートだ。
間接照明だけがついた部屋で、自室で、2人きりだ。
酔った男女2人が、家にいるんだ。
向こうもそれをわかってて来てくれたんだから、抱かなきゃ。
何回もそう思って、その子に目を配ると、うるうるしたおっきな黒い瞳とぶつかって、目を逸らして、誤魔化すようにグラスに手を伸ばして酒を嚥下した。
これが正しい気がする。
かわいい女の子とデキてるバンドのギタリストなんて、男の夢じゃん。
もう、この、モヤモヤした気持ちなんか塗りつぶせちゃうんじゃないかな。
上書きできちゃうんじゃないかな。
「…かわいいね、ほんと」
「えっ」
かわいいね、と言ったのに、俺は目を閉じてそう言ってしまった。
酔った頭で、目を閉じた先にいたのは、どうしても元貴だった。
忙しそうに表情を変えて、
真剣な顔でレコーディングしてる元貴。
ふざけた俺を見て大口開けて笑う元貴。
カッコつけてすました顔する元貴。
「若井、それ似合うじゃん」なんてなぜか嬉しそうな顔していう元貴。
なんだか寂しそうな顔してる元貴。
「ほんと、ほんと、かわいいね、ほんとに…」
なぜか目眩く瞼の裏の元貴はいろんな姿を見せて、ライブの瞬間も、レコーディングの瞬間も、バンの中ののんびりした瞬間も、Cocosでストローを啜っていた瞬間も、教室で見たあの日の元貴まで、遡っては巻き戻っていった。
笑った顔。
怒った顔。
悲しそうな顔。
寂しそうな顔。
嬉しそうな顔。
困った顔。
真剣な顔。
泣きそうな顔。
俺にばっか笑って話しかけるようになっちゃって、俺にばっか若井、若井、って、そばにいて笑ってくれるようになった、俺の神様。
言葉がつっかえて黙ってしまって、部屋には沈黙が落ちた。
俺は、ゆっくりその子の手を握った。
本当に、俺は最低で、情けなくて、どうしようもない人間だ。
1人になった部屋の中、天井を仰いで、ただ時計の音を聞いていた。
本当にあの子はいい子で、本当にいい子だった。
男なら誰だって好きになってしまうであろう優しさと可愛さを持ち備えたふわふわした塊。
その子はあの後、手を握り返して、俺の頭を撫でた。
そして、「大好きな人がいるんですね」と、言って、手をゆっくりと解いた。
俺は何も答えられなくてどうしようもない顔で顔を上げると、その子は、俺なんかよりずっと年下のはずなのに、ずっと大人びた顔をして見えた。
どうしようもない子どもを見守る母親のような顔をして肩をすくめて笑うと、「大丈夫ですよ」と一言いうと、身支度をしてローテーブルの上を軽く片付けた。
「ほんとに、ごめん….」
なんて言っていいのかわからないままに謝ると、玄関でパンプスを履きながらその子はふふ、と笑うと、「お水飲んでくださいね」と本当にどうしようもなく優しい顔で笑って出ていった。
もう、自分が惨めで情けなくて仕方なかった。
俺は、もう、どうしようもなく膨れ上がってしまったこの気持ちを、理解した。
ぼんやりとしていた中、スマホの通知音が鳴った。
『ねね見て、バスボム入れたら超きれー』
「….はは、」
もう、ほんと、なんてことはない。
なんてことはない、しょうもない、LINE。
元貴からのLINE。
「ふ、はは…ハッ、ははは…っ、」
何故か涙が出て来た。
こんなしょうもないLINEひとつで、おれは、嬉しくて仕方ないことが、もう、答えだった。
元貴がお家でいま1人でのんびりお風呂入ってるんだ、とか、そういうのでホッとして、
あ、そういうの教えてくれるんだ、というので嬉しくなって、
なんて返そうかな、なんて、ちょっと悩んじゃったりもする。
もうこんなん、こんなん、どうしようもないな。
「….うん、大好きだよ…大好き」
口に出してみたら、あんまりにも胸のチクチクが解けていって、また涙が意味もなく、なんでなのか理解するより先に溢れて来た。
「うん、うん、…..大好き」
そうだよな、そうだよな。
ずっとずっとずっと、元貴のことが、大好きだったんだ。
元貴のそばにいたくてここまで来たんだ。
俺は、元貴のことが好きなんだ。