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「今更だけど、君たち平均的な双子と比べて凄い仲良いよね」
平日の昼休み。昼食を済ませて休憩がてら言とクイズを出し合っていると、福良さんに声をかけられた。
共依存って感じ?と首を傾げた福良さんの言葉に、僕らも首を傾げる。
「ん〜…気にしたことなかったですね」
意図せずとも揃った返事をすると、福良さんは笑いながら「今だって結構距離近いよ?」と僕らを指さした。
「いや、これ僕が捕まってるんです」
今僕は言の膝の上に座っていて、言の腕がシートベルトみたいになっているせいで立ち上がれないのだ。
「でも最初に座ったの問じゃん」
「確かに…」
それまで起こしていた上半身を後ろに預けると「重い」と苦情が聞こえてきたけれど、無視して福良さんの話を聞く。
「知らない人が見たら顔が似すぎてるカップルに見えるかも」
思わず吹き出すと、言が「そんなことあります?」と食い気味に突っ込んだ。
「でも、頑張ればカップル割は使えそうな気するな」
「やめてね、シンプルに違法」
ギリ許されるだとか、双子割ならいけるだとか、そんなくだらないことを話している間に昼休みは終わり、福良さんは仕事に戻っていった。僕もシートベルトもとい言の腕から解放されて、2人で空き部屋を後にした。
「失礼しま〜す。言ちゃん、帰ろ…あれ、」
定時を少し過ぎたあたりで荷物をまとめて言のいる部署を覗きに行くと、言は何やら福良さんと話し込んでいた。
盗み聞きは良くないと思っても、2人の距離におもしろくないと思う自分がいて、つい耳を澄ます。しかし、小声で話しているのと距離が遠いので、話題が聞き取れない。
「…珍しい、恋バナかな」
言が時々焦ったような照れたような表情をするのが引っかかり、なんとなくの予想を小さく呟く。
「……いいなあ」
何故か心に湧いてきた、何に対してなのかもわからない嫉妬を抑え込む。
何にせよ今顔を合わせたら僕が気まずいので、スマホで連絡だけ入れて一足先に帰宅することにした。