「おいすー、元貴。」
「おっすー。」
会社の制作用スタジオにいると涼ちゃんがやってきた。
「元貴泊まり?」
「帰るの面倒だったから。涼ちゃん今日はソロでバラエティ収録じゃなかったっけ?」
「うん。その前に一本打ち合わせがあって。」
なんか涼ちゃんの肌艶がいいような・・・?
(は、はーん☆)
俺はにやりと笑った。
「昨日はお楽しみだったようで。」
「ぅえぇ?!」
変な声を漏らした涼ちゃんはみるみる真っ赤になる。うん、こりゃ面白い。
つか若井って今日から一週間韓国で仕事だったよな?前日ヤるとか体力すげぇなあいつ。
「で、ちゃんと話し合えた?」
「いや・・・話してはないんだけど・・・。」
「は?」
まさかその前にベッドになだれ込んだ?
「僕が若井に聞きたかったことってめっちゃしょーもなくて・・・。」
「でもそれがもやもやの原因でしょ。」
「そうなんだけど・・・。」
「何聞きたかったの?」
「笑わない?」
「爆笑するかも。」
「・・・・。」
「ごめん、笑わない。」
「彼女のこと本気で好きだったか聞いてみたかったんだよ。」
「そんなこと聞いてどうすんの?」
「わかんない・・・。」
「わかんないってなに。」
「だって、本気で好きだったって言われたらそれなりに凹むし、好きじゃなかったって言われたら僕に気を使って嘘ついてるのかなって思うし、嘘つかれたって思うし、好きじゃない人とでも付き合うんだって思ったり、もしかしたら僕のこと好きじゃなくても・・・。」
「ストップ!ステイ!涼ちゃん!ステイ!」
これあかん奴や。そう思って慌てて止めた。
「元貴・・・?」
「そんなにぐるぐる考えてたらまた倒れるよ?」
「・・・。」
「二人が付き合う報告を俺にした時、「何かあったら話し合うって二人で決めた」って言ってたよね?」
「そうだけど・・・。」
「とにかく無い頭で考えるのはやめて?無駄だから。」
「ひどっ(笑)」
「その不安を若井に言いな?あいつならちゃんと受け止めると思うから。」
「・・・帰ってきたら言う。今言って仕事の邪魔したくない・・・。」
「一週間あるけど・・・。」
「僕もそこまで馬鹿じゃないよ。ちゃんと倒れないように気を付ける。」
って涼ちゃんは言ってたけど、3日目で変化は現れ始めた。
事務所での打ち合わせ開始まで時間があるからと休憩スペースに行くと、先に涼ちゃんがいて置かれているTVを見ていた。
『ギタリストっていうのは昔から巨乳が好きって相場が決まってんの。』
『DMで知り合ったとか今なら10倍になるだろうね。』
『夢あるね。』
若井の例の件を取り扱ったワイドショーが流れており、コメンテーターが好き放題言っていた。
「お似合いなのはやっぱり女の子なんだろうな・・・。」
ぽつりと呟いた涼ちゃん。今ここに誰もいなくてよかったよ、まったく。
「涼ちゃん。」
声をかけると、ゆっくりと振り返った。
「あ、元貴。はよー。」
「独り言気を付けなって前言ったよね。」
「え?!なんか言ってた?」
「”お似合いなのはやっぱり女の子なんだろうな”って。」
「・・・・。」
「つか事務所のTVでこのネタ見るとかすごいね。」
「たまたま流れてたんだよ。でも、炎上しなくてよかったね。」
そうなのだ。多少ファンが動揺したようだが、不倫でも略奪でもない過去の恋愛だし、相手の乳がいい仕事したようで、”おっぱ井”として世間的にはむしろ友好的な視線が若井に向けられている。相手がブリブリのアイドルやただのそういうA〇女優だったらまた違っただろうけど。
「涼ちゃん。」
「んー?」
「顔色悪いよ。寝てないでしょ?」
「ちょっとだけね・・・・。」
「若井とは?」
「毎日ビデオ通話してる。」
「若井は気づいてないの?」
「気づかれないようにしてる。部屋暗めにして、明るめのベースメイクして。」
俺はため息をついた。
気付いてないんだろうな
今にも泣きそうな顔で笑っていることを
「若井が、僕の笑顔が好きって言ってくれたの。だから、若井の前では笑顔でいようって決めたんだ。」
変なところで頑固だからなぁ、涼ちゃん。これ以上俺が何か言ったところで馬に蹴られそうだ。
「涼ちゃん。納得することと受け入れられることは別だからね。無理に受け入れようとせずに、若井が帰ってきたらちゃんと自分の気持ちを話すんだよ?」
「ふふ、なんかお母さんみたいだね。」
「誰がお母さんや。」
コメント
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あらぁー涼ちゃん大丈夫かしら