一週間韓国でのソロの仕事が終わり、明日日本へ帰る。韓国にいる間、時間が合えば涼架とビデオ通話してるし元貴とも何度もとりとめのないラインをした。だから正直久しぶりの感覚はない。
あのタイミングで涼架と離れ離れになったのはなんか落ち着かなかったけど。
「お仕事頑張ってね!」
涼架が笑顔で見送ってくれたので、俺は仕事に打ち込むことができた。
明日帰る報告しようと涼架にビデオ通話をすると
『涼ちゃんです♡(裏声)」
出たのは何故か元貴だった。
『やっほー若井。元気―?』
「やっほーじゃないのよ。え?涼ちゃんは?」
『隣で寝てる。』
「はぁ?!」
『ちょ、大きな声出すなよ。』
元貴は慌てて涼架のスマホを持って移動する。背後の感じからして元貴の家っぽい。
「え?ちょっと待って。どういう状況?」
『お前ら何かあったら話し合って乗り越えるって言ってなかった?全然乗り越えられてねぇじゃん。』
「いや、いきなりなに?涼架は?!」
思わず”涼架”と二人だけの時の呼び方が出てしまった。しかし、元貴は気にすることもなく
『だから寝てるってば。お前が韓国に行ってから例の件がネットやワイドショーで流れて、涼ちゃん頭では分かっててもやっぱり気になって眠れてなかったみたい。』
「眠れてない・・・。」
気付かなかった。毎日ビデオ通話していたけどいつもニコニコと笑っていたし、事前にちゃんと話してたから大丈夫だと思っていた。
『若井の仕事の邪魔したくないから、バレないように工夫してたらしよ。』
思い返せば違和感はあった。帰りの車の中で涼架が恋人繋ぎしてきたことや、帰ってから”しよ”と言ってきたり。今までなら恥ずかしがって自分からということはなかったが、あれはもしかしたら不安の裏返しだったのだろうか・・・。
『言ってたよ、ワイドショー見ながら「お似合い」って。」
「!?」
『泣きそうな顔して笑ってた。』
「・・・・。」
『お前、涼ちゃんの笑顔が好きって言ったんでしょ?だから、お前の前では笑顔でいようって決めたんだって。健気だねぇ。そう思わない?若井くん。』
「・・・何が言いたいの?」
嫌な予感がする
違ってくれと願う
じゃないと
『悲しませるくらいなら俺が涼ちゃん奪っちゃおうかな。』
勝ち目なんてないから
通話が切れた後、俺はただボー然とスマホを見つめていた。
俺の気持ちは涼架に届いてなかった?
(いや、分かってたはずだ。涼架が人一倍自己肯定感が低いってこと。)
大切にしたい、守ってあげたい、それだけじゃ駄目だと分かってたはずなのに・・・。
もし元貴に本気を出されたらきっと敵わない
ざわざわ・・・と、
心の中で感じたことない負の感情が蠢いている気がする
誰に対して?
大切なものを奪おうとする元貴?
何でも話し合おうと決めたのに気持ちを隠す涼架?
確信はないけど情報を流出させた元カノ?
(違う・・・。)
全ての原因は俺だ
起きてしまったことはどうしようもない
悲しくても笑顔でいようとした涼架の為にも
これ以上間違ってはいけない
だって
君を笑顔にするのは俺がいいから
右手の薬指に付けていた指輪を見る。
涼架とお揃いで付けている指輪で、内側に青と黄色の石が埋め込まれており、ラテン語で「Audeamus」と彫っている。”一緒に挑んでいこう”という意味で、色んなことを二人で乗り越えられたらと思って入れた。
「よし・・・。」
乗り越えられる
二人ならきっと
コメント
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前のお話から同じ世界線で、今回の試練、めちゃ好きです🤭💙💛 いつも更新、ありがとうございます✨